2007年05月09日

●財政出動しても財政破綻しない(EJ第1240号)

 現在の日本の経済状況で積極財政をやったら大変なことになる――小泉首相をはじめ
その配下の経済閣僚、エコノミストたちは口を揃えてそういいます。
 確かに、政府の債務残高は既にGDPの150%を超えているのですから、それにさ
らに借金を重ねることは、個人だったら、とっくに破産している――こういう論法でい
われると、多くの人は「そうかな」と考えてしまいます。
 しかし、本当にそうなのでしょうか。テレビの政治番組などで日本の経済をどうする
という話になると、議員やエコノミストたちは、構造改革派と積極財政派にわかれて議
論をはじめるのがつねです。そして、必ずといってよいほど結論が出ないで番組は終る
――こういうことの繰り返しです。
 ところで、財政赤字に上限というのはあるのでしょうか。過去に日本以上の財政赤字
を抱えて、それを克服した国は、ないのでしょうか。
 クー氏によると、財政赤字の上限を決めるのは市場であり、学者や法律家が決めるも
のではない――つまり、市場さえ納得してそれを受け入れるのなら、赤字財政を長期に
わたって継続することも可能であるというのです。
 日本以上の財政赤字を抱えた国といえば、第2次大戦後の英国が上げられます。当時
英国は、GDPの250%以上に相当する政府の債務残高があったのですが、英国は破
綻せずに現在でも先進国の立場を維持しています。
 もし、当時の英国政府が、財政赤字の大きさに怯えて、ヒットラーとの戦いに対して
十分な軍事支出をためらっていたら、1940年代に英国という国はなくなり、ナチス
ドイツの一部になっていたと思われます。あの時点でたとえ巨額の財政赤字を出しても
国を守ることは正解であり、それを市場が納得していたからこそ英国という国家は破綻
しなかったのです。
 日本の場合は、英国の状況とは違いますが、どちらにも共通していることは、いずれ
にしても巨額の政府の債務残高がある状況において巨額の財政を出動させることは、国
家の存亡をかけることになるということです。
 しかし、今の小泉政権のやり方を見てもわかるように、財政出動をしなければデフレ
は一層深刻化して、税収が激減してしまいますから、結果として財政出動することにな
るのです。
 日本の場合、クー氏によれば、多くの企業がバランスシートの健全化に取り組んでい
るため、その分の需要が失われているのでそれを財政で埋める必要があるのです。
 しかし、企業がバランスシートの健全化――つまり、借金の返済に取り込むことは、
国の経済にとっては大問題でも企業にとっては本来大変よいことです。
 企業のバランスシートの修復によって、確かに企業の有利子負債残高は1995年の
ピーク時から2001年までの間に113兆円も減少しているのです。企業がこれだけ
のバランスシートの健全化に成功したのは、やはり政府の財政出動が支えていたと考え
るべきなのです。そして、企業がバランスシートの健全化に成功すれば、改めて前向き
の投資をするようになることが期待されます。そうすれば、経済は好転するのです。
 要するに現在の日本は、企業がバランスシートを修復して健全化するのが早いか、国
家財政が破綻するのが先かの問題なのです。要するに国家存亡をかけているわけです。
 財政出動をするのは、大量の国債を発行することを意味しますが、重要なのはその国
債が消化されるかどうかです。国債を消化できなくなる要因としては次の2つを上げる
ことができます。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
           1.国の財政赤字が限界にきたとき
           2.民間の資金需要が回復したとき
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 現在の日本の場合、国の財政赤字は何ら限界に達していないと考えます。この理由に
ついては明日のEJで述べますが、日本の水準は、英国のGDPの250%以上に比べ
れば、まだ十分な余力を残していると考えられます。しかも、金利は人類史上最低であ
るので、心配する必要はないのです。
 しかし、現在の小泉政権のようなやり方は問題です。30兆円の枠をはめたり、国民
に負担を押し付けたりして、最終的には、かなりの国債を発行している――どうせ、国
債発行に頼らざるを得ないのなら、それをもっと積極的に、計画的に、効果的に使うべ
きなのです。
 2番目の要因「民間の資金需要が回復したとき」とはどういう意味でしょうか。
 それは、民間の資金需要が回復し、金利が上昇することによって、国債が消化できな
くなることをいいます。民間の資金需要が回復し、金利が上昇するということは、バラ
ンスシート不況が終了し、景気が自律回復に戻ったことを意味するのです。おそらくこ
ういう状況になったら、日本政府はまたまた財政再建をはじめるでしょうが、ここが肝
心なのです。状況をよく見極めて少しずつ引いていく慎重さが欲しいのです。
 しかし、日本の現状は、国債の消化が問題になる状況とはほど遠いのです。4〜5年
前の水準と比べても35兆円も民間資金需要が減少しており、その結果、金利は下がる
ばかりです。この間国債の利回りが1%台に下がり、国債の価格は急騰しています。こ
れは、国債の需要が供給をはるかに上回っていることを意味しています。政府はなぜ、
この状況を、この低金利を積極的に活用しないのでしょうか。
 先般の自民党の総裁選とき、高村元彦氏は現在の経済状況では財政出動が必要なこと
を認めたうえで、「この低金利を利用していつかは取り組まなければならない社会イン
フラの整備をすべきである」と述べていましたが、この主張は正しいのです。しかし、
小泉首相はその高村意見を「支離滅裂な主張」といって、まさに聞く耳を持たないとい
う様子だったのです。           ・・・ [バランスシート不況/08]
             
posted by 管理者 at 06:23| Comment(1) | TrackBack(0) | バランスシート不況 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
昔のイギリスと現在の日本を比べるなんであんたも支離滅裂だやね。
昔のイギリスは優秀な工業製品を世界に輸出する国であったがその点は現在の日本と共通性があるが世界ー植民地を持っていて資源大国だったよ。しかし日本は震源がほとんどない。
Posted by 743 at 2007年06月16日 14:15
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