は、2008年3月24日から2008年6月6日までの52回
にわたって掲載したものであることをお断りしておきます。
株安、円高、原油高――日本の経済状況が大きく変調をきたし
ています。今までも株安、円高はありましたが、そのときの原油
価格は「1バレル=17ドル」程度、現在の原油価格は「1ドル
=100ドル」をはるかに超えています。
3月22日付の日本経済新聞は、「2つの『100』企業に重
荷」と題して次のように述べています。
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(2つの『100』の一つは)1ドル100円を突破した円相
場。このまま推移すると円高による営業利益の減少額は来期、
トヨタだけで5000億円。ホンダ、日産自動車も含めた大手
3社では計1兆円強に達する。もう一つの「100」は1バレ
ル100ドルを突破した原油先物市場。こうした資源価格の上
昇は鋼材や部品のコスト上昇要因になる。
――3月22日付の日本経済新聞より
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ところで、原油はなぜこのように高騰しているのでしょうか。
そもそもどのようにして原油価格は決まるのでしょうか。そして
この原油高はいつまで続くのでしょうか。
石油の問題は分からないことが多いものです。そこで、EJで
は、『石油危機を読む』と題して、石油の問題にメスを入れ、そ
れを中心に日本経済の問題を考えていきたいと思います。しばら
くはその周辺問題について書きます。
3月16日のテレビ朝日の『サンデープロジェクト』で、民主
党の鳩山幹事長が非常に印象的な発言をしたのです。それはキャ
スターの田原総一郎氏が、鳩山幹事長に対して次のように聞いた
ときのことです。
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民主党党首の小沢一郎氏は、自民党が日銀の総裁候補として提
示しようとしていた武藤敏郎氏をなんとなく容認するような姿
勢を見せていたのになぜ一転して拒否する姿勢に転じたのか。
――田原総一郎氏
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この問いに対して鳩山幹事長は、次のような趣旨のことを答え
たのです。これはまさしく民主党の本音であったと思います。
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民主党は今度衆院選があると、政権が取れる可能性がある。そ
の場合、もし今回武藤氏を拒否すると民主党は財務省を完全に
敵に回すことになる。それでスムースな政権運営ができるのか
ということまで考えたからである。 ――鳩山民主党幹事長
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これは、実に驚くべき発言であると思います。なぜなら、それ
は財務省という存在が、いかに強力で抗し難い組織であるかを如
実に表しているからです。そういうことになると、日本という国
を動かしているのは、政府でも自民党でもなく、財務省というこ
とになります。
それに、「武藤日銀総裁案」に民主党をはじめとする野党が参
議院で不同意にしたことに対して、与党にどちらかというと批判
的な朝日新聞まで含めて、日本のほとんどの新聞が一斉に非難を
したことです。これも極めて異常な現象です。ここにも財務省の
力が働いていると考えられます。
野党の武藤氏不同意には、いくつかの情報が飛び交っているの
です。そのひとつに武藤氏の英語力に問題があるという説があり
ます。これは複数の情報源から情報で、民主党も把握しているは
ずですが、個人の能力に関することなので、正面きっていえない
ので、「財政と金融の分離」の原則に反する人物として反対を打
ち出したと考えられます。
それならば、民主党は自民党が最後に提案してきた田波耕治氏
をなぜ拒否したのでしょうか。
田波氏を強く推したのは、元大蔵次官の保田博・資本市場振興
財団理事長と財務省の意向を受けた額賀福志郎財務相であるとい
われています。ちなみに保田博氏は、福田首相の父、赳夫元首相
の秘書官を務めた人物です。実は、財務省が田波耕治氏を推した
のには深い読みがあるのです。これに関しては、須田慎一郎氏が
自らのコラムで財務省有力0Bの言葉として、次のように述べて
います。
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田波氏はその入省年次において武藤前副総裁よりも2つ上、と
いうのが今回の“提案”の最大のポイントだ。霞ヶ関的発想で
言うならば、年次が上の田波氏が日銀総裁に就任するというこ
とは、武藤氏が日銀総裁に就任する目が残ることを意味する。
つまり、田波氏の役割は、晴れて武藤氏が日銀総裁に就任する
までの“つなぎ役”というところにあったのだろう。
――3月19日『夕刊「フジ」/金融コンフィデンシャル』
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驚くべき深謀遠慮です。何が何でも武藤日銀総裁実現のための
あの手この手です。成功すれば、かつて慣例となっていた日銀総
裁の財務省と日銀とのたすきがけ人事の復元になるのです。どう
しても日銀総裁を財務省の天下りポストにしたいわけです。
国益よりも省益優先――これは実に困った問題です。米国のサ
ブプライムローン問題で米国経済に赤ランプが点り、日本経済に
影響が出てきているこの大事なときに、すべての省庁に隠然たる
勢力を持つ財務省が省益優先ですから、せっかく回復しかけてい
る日本経済を失速させかねないからです。
株安、円高、原油高の現在の状況において、政府は何一つ有効
な手が打てていないのです。それどころか、財務省はこの経済状
況において、本来行うべきは減税政策なのに、逆に増税すら画策
しているのです。いや、事実上の増税路線を敷いているのです。
それは恒久減税と称した定率減税を廃止し、暫定税率を維持させ
ようとしているからです。これは、増税以外の何ものでもないと
いえます。 ―― [石油危機を読む/01]
≪画像および関連情報≫
●日銀総裁「迷走」は官僚の利権への執念が原因
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福田政権の動きがおかしい。おかしいとは、滑稽という意味
ではなく、「変」ということだ。3月18日、日銀総裁人事
で、参議院で蹴られた武藤氏を再度提出したかと思えば、今
度はすぐに、やはりたすきがけ人事のセオリーで元大蔵政務
次官の田波耕治氏(68)を総裁候補にするとの意向を示し
た。またもう一人の副総裁には日銀審議委員の西村清彦氏と
のことだ。これについて、民主党は、西村氏については同意
したが、田波氏の総裁就任は「不同意」とした。またもや福
田政権の意向は、肩すかしを食らった格好だ。
http://www.news.janjan.jp/government/0803/0803183068/1.php
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鳩山民主党幹事長