たってEJのテーマとして取り上げたものです。コンパクトにま
とめられたショパン論です。
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ショパンとモーツァルトというと、その名前を聞いただけで、
ある特定のイメージが浮かんでくる音楽家です。とくにショパン
といえばピアノであり、ピアノ好きな人であれば、ショパンは避
けて通れないでしょう。ショパンの名曲はたくさんあり、1曲も
知らないという人はいないのではないかと思います。
しかし、ショパンの演奏に関わる人は、ショパンを弾くとき、
単に音符をひろっただけではショパンにならないというのです。
つまり、ショパンの音楽は、テクニックだけの問題ではなく“深
い音楽性”がそこに要求されるのです。
ショパンの音楽が発するメッセージは、なぜか現代に通じるも
のがあります。けっして古めかしい過去の音楽ではないのです。
音楽家ラフマニノフは「ショパンはつねに新しい」という名言を
残していますが、それはショパンの音楽が現代に通じる精神とい
うか、エネルギーを持っていることを意味しています。
小説家のアンドレ・ジイドは、「ショパンの作品を弾くときは
それがすでに出来上がっているように弾いてはならない。ひとつ
ひとつの音を新しく発見していくように弾くべきである」といっ
ており、それが新しさを感じさせる秘密だと思います。ジイドは
小説家なのですが、ピアノについては相当のうでを持っており、
終生ショパンの音楽を愛好したといわれています。
今朝はショパンをあまり聴かない人にショパンの素晴らしさを
知っていただくためのガイダンスをやりたいと思っています。い
ささか乱暴ですが、ショパンの作品を4つに分けて、その魅力を
整理すると次のようになります。
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ノクターン ・・・・ 彼のロマンティックな感性
マズルカ ・・・・・ 彼の嘆きやメランコリー
ポロネーズ ・・・・ 彼の愛国心の表現
ワルツ ・・・・・・ サロン風な彼の貴族趣味
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誰でも知っているショパンの人気ベスト10を選んでみたいと
思います。
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1.『子犬のワルツ』作品64−1
2.『ノクターン』作品9−2
3.『雨だれ』作品28−24
4.『マズルカ』作品7−1
5.『別れの曲』作品10−3
6.『幻想即興曲』作品66
7.『英雄ポロネーズ』作品53
8.『バラード』第1番作品23
9.『ピアノソナタ第2番』作品35
10.『ピアノ協奏曲第1番』作品11
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ショパンの「ワルツ」といえば有名な曲がたくさんあるのです
が、どういうわけか、ショパンの作品の中ではマイナーな扱いに
なっています。ワルツは生前には8曲出版されているのですが、
その作曲年代を見るとポツンポツンと作曲され、晩年の作品が多
いのです。『子犬のワルツ』などは最晩年の曲です。なお、ショ
パンの死後遺作として発表されたものが11曲あります。
ノクターンは全部で21曲。その言葉には「夜の感覚」「静か
な夢想」「詩的な香り」が含まれます。とくに、「ノクターン」
作品9−2は、映画「愛情物語」のテーマ音楽となっており、最
もポピュラーな作品です。
プレリュードは全部で24曲。一曲、一曲が巧みに磨き上げら
れたショパン音楽の真髄というべき傑作です。「雨だれ」は15
番目に置かれた名曲です。
マズルカは全部で60曲。生涯を通じて書かれており、その点
ワルツとは対照的です。このマズルカの人気作品は作品7−1で
す。ショパン20歳のときの作品です。とても有名な曲です。
続いてエチュード24曲。エチュードとは「練習曲」のことで
19歳のときから着手して6年かけて完成されています。この作
品10−3はあの有名な『別れの曲』なのです。
この24の練習曲に、ショパンは、彼がピアノ奏法の秘密と信
ずるものに何かのかたちを与えようとしています。短い一曲一曲
にバラードの大曲を書く以上の時間をかけてそれこそ真剣に取り
組んだのです。
即興曲は4曲の作品があります。中でも有名なのは『幻想即興
曲』です。この曲の人気の秘密は中間部のノクターン風の旋律に
あると思います。この中間部をはさむ前後は、嬰ハ短調のエチュ
ード的な音の奔流のように書かれております。
ポロネーズは全17曲。『英雄ポロネーズ』作品53は、ショ
パンのポロネーズの手法がしだいに成熟度を増してきた頃の作品
です。輝かしい雄壮な、しかも直裁な音楽は「英雄」というタイ
トルにピッタリです。
ソナタは全4曲ですが、1曲はチェロ・ソナタです。有名なの
は『ピアノソナタ第2番』作品35――とくに第3楽章の「葬送
行進曲」があまりにも有名です。付点の動きに詫された悲痛な響
きが全編を印象づけています。
最後はピアノ協奏曲全2曲。とくに『ピアノ協奏曲第1番』作
品11に人気が集中しています。この作品は1830年8月に完
成された若きショパンの意欲作です。
ベスト10の10曲が、各ジャンルの代表になるように選曲し
てあります。ですから、この10曲を聴くと、ショパンの作品の
おおまかな全貌は分かります。好きな曲のみ偏って聴かないで、
ぜひ全般的に聴いていただきたいと思います。
・・・[ショパンはお好きですか/01]