されたものです。現在、日銀の総裁が空席になっており、話題を集めているので、再現
します。途中に小泉政権下の参院選のことなども出てきますが、文章は変更しないでそ
のまま掲載します。
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「構造改革なくして景気回復なし」――いわずと知れた小泉内閣のスローガンです。
これが参議院選挙用のスローガンであるなら問題はないのです。しかし、小泉首相が本
気でこれを考えているとしたら困ったことになります。
このスローガンの意味は、ちょっと考えると、「構造改革をすれば景気が回復する」
というように解釈できますが、そういう意味でないと思います。「構造改革をしなけれ
ば日本経済がだめになる」ことは確かですが、そうしたからといって別に景気が回復す
るわけではないのです。
「ニュースステーション」のコメンテータとして著名な森永卓郎氏はこういっていま
す。
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『「構造改革なくして景気回復なし」という議論には致命的な
論理矛盾がある。構造改革というのは、生産性を上げて供給力
を増やす政策だ。しかしいまの不況は、供給力が少ないから成
長できないのではなく、需要が少ないから成長できないのであ
る。だから、構造改革をいくら進めても、景気回復はできない
のだ』。(森永卓郎著、『日銀不況』より)
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小泉首相とブッシュ大統領による日米首脳会談でブッシュ大統領は、「日本の不良債
権問題を憂慮している。小泉首相の積極的な取り組みを期待したい。米国としてもこの
問題を解決するためにあらゆるサポートをしていきたい」と表明しましたが、それは米
国にとって当然のことといえます。
というのは、日本の金融機関がバタバタ潰れると、それらの金融機関がかかえている
膨大な米国債が投げ売りされることになります。そうすると、米国債は暴落し、米国の
金融機関は深刻な影響を受けることになるのです。そのため、米国としては不良債権の
早期処理を強く日本に求めるわけです。
日本経済の問題を考えるとき、このあたりの理解がとても大切なのです。「失われた
10年」といわれる1990年代の日本経済の低成長の原因は、構造改革ではなく需要
の不足が引き起こしたものなのです。したがって、この問題を解決しないで景気が回復
するはずがないのです。
日本の現在直面している課題はデフレ、それも資産デフレであり、倒産であり、失業
なのです。これは、景気の悪化によって引き起こされる現象です。それは、基本的には
日本経済に大きなデフレ・ギャップが存在していることを意味しているのです。どうい
うことかというと、経済全体の総需要が総供給より小さいことを意味しているのです。
ですから、とにもかくにも総需要を増やす政策を実行することが急務なのです。とこ
ろが日本は構造改革をやろうとし、米国もそれを求めているのですが、先に述べたよう
に、構造改革は経済のムダをなくし、総供給を拡大する政策なのです。
総需要の拡大が求められているのに、総供給を拡大する政策を実施したら、一体どう
なるでしょうか。デフレギャップがさらに広がってしまうことは明らかではありません
か。それでは、なぜ総需要が増えないのでしょうか。
その原因はデフレにあります。それでは、なぜ、デフレになってしまったのでしょう
か。それは、金融政策に原因があります。金融当局が政策に失敗してデフレになってし
まったのか、それとも誰かが意識してそういう政策をとったのかです。
「意識してデフレ政策をとるはずがない」という反論もあると思いますが、あながち
否定はできないのです。どのように考えても日本の金融当局はあまりにも愚かな金融政
策を長い間にわたって取り続けているからです。
リチャード・A・ウェルナーという人が書いて、このほど邦訳の出た『円の支配者/
誰が日本経済を崩壊させたのか』(吉田利子訳、草思社刊)という382ページにおよ
ぶ大著があります。これによると、日銀はあえて明確な意図をもってそういう政策をと
り続けたと書かれています。
そういうわけで、これらの資料を駆使してEJでは、断続的にその真相に迫ってみた
いと思います。
2000年4月、森前政権が発足した当時、株価は2万円を超えていました。それか
らというもの株価は下落する一方で、2001年3月には一時1万143円まで売り込
まれたのです。1万円割れ寸前まで行ったのです。
そして、3月19日、日銀の量的緩和策の発表、小泉政権の誕生などで一時小康状態
を保っていましたが、ここにきて再び株価は下げています。
12チャンルのWBSに登場するエコノミストの一人であるモルガン・スタンレー・
ディーン・ウィッター証券のロバート・フェルドマン氏は、かなり早い時期から200
0年8月が景気の山であることを指摘していました。
フェルドマン氏は、例のエコノミストベスト10の第7位にランクされる優秀なエコ
ノミストです。そうであるとすると、日本経済は去年の8月から景気後退局面に入り、
それから1年近くになろうとしていることになります。
問題は日銀の発表です。日銀の発表はその間次のようになっているのです。
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2001年2月 「景気は緩やかな回復を続けている」
2001年3月 「景気は足踏み状態」
2001年4月 「景気は調整局面」
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現在、日本経済は企業部門を中心に調整局面に入っていますが、なぜ日銀は8ヶ月も
不況を認めようとしなかったのでしょうか。 ・・・[円の支配者日銀/01]