多忙な歌手に懸命に出演交渉して出演してもらう大晦日の歌番組に過ぎなかった紅白
歌合戦は、回数を重ねるにつれてしだいに歌手にとって無視できない重要な番組になっ
ていったのです。とくにテレビが一般家庭に普及してからは全国放送の紅白歌合戦は、
歌手にとって出場を目指す大きな目標となったのです。
そうなってくると、毎年紅白歌合戦にどの歌手が選ばれるかは大きな関心事となり、
それを決める側のNHKは大きな権限を持つようになります。このあたりにNHKのこ
のたびの不祥事を生む温床が出来上っていったといえます。
しかし、どの歌手を紅白に出場させるかについては、その決定プロセスが必ずしも明
確ではなく、それがレコード会社や芸能プロダクションとのトラブルの原因になること
が多かったのです。
そのひとつに「三浦洸一事件」というのがあります。三浦洸一は、当時のビクターの
看板スターであり、初期の紅白の常連歌手だっのです。
三浦は第6回紅白に「落葉しぐれ」で初出場し、第7回は選ばれなかったものの、第
8回から第14回まで連続出場を果たしているのです。しかし、1984年の第15回
紅白歌合戦の出場リストには三浦洸一の名前はなかったのです。表向きの理由は、三浦
はその年に目立つヒット曲がなかったというものです。
これに対してビクター側は反発します。確かにヒット曲はないが、三浦のこれまでの
実績はどうなるのかというわけです。そしてビクター側は「三浦を出場させないなら、
ビクター所属歌手全員を引き上げる」とNHKに迫ったのです。
ビクターには、雪村いづみを筆頭にフランク永井、橋幸夫、吉永小百合、田辺靖雄、
三田明、和田弘とマヒナ・スターズなどのスター歌手を抱えており、これらの全員がす
べて抜ければ、紅白なんか成り立たないぞという圧力です。
そもそもなぜ第15回で三浦が外されたかというと、本当はヒット曲がないというこ
とではなかったのです。それは、NHKが記念すべき第15回の紅白であるため、ベテ
ラン歌手4人を出すことを決めたことにあるのです。そのため、それまで暗に認めてい
たレコード会社の枠を縮小せざるを得なくなったのです。ベテラン歌手というのは、藤
山一郎、渡辺はま子、伊藤久男、淡谷のり子の4人です。
ビクターの強硬な抗議に対し、NHKの態度は毅然たるものであったのです。「分か
りました。そういうことなら(ビクター所属歌手全員が引き上げても)仕方がありませ
ん」だったのです。結局、このときはビクター側が折れるかたちで、ビクター所属歌手
の三浦抜きの紅白出場が決まり、この騒ぎはビクターの完敗に終わったのです。
しかし、その後紅白の視聴率が80%を超えるにいたって、もはやレコード会社がN
HKにビクターのような抗議をすることはなくなったのです。これは、NHKの権限が
それだけ強力になってきたことを意味しています。
これに伴い、逆に歌手からの辞退という現象が生じてきたのです。つまり、NHKか
ら推薦されても歌手がそれを辞退するという現象です。辞退の理由はいろいろあるので
すが、NHKが紅白出場の条件として、その歌手がNHKの他の番組に対する貢献度を
カウントしているという噂が広がり、それが大方の歌手の反感を買っていたことは事実
なのです。
皮肉な見方をすれば、番組への辞退があるということ自体が、紅白歌合戦という番組
の価値を物語っているといえます。辞退する歌手自身が紅白を特別の番組として認めて
いるからです。歌手になった以上、一度は出てみたいという番組であるからこそ、推薦
されてもあえて辞退するという行為が生きてくるのです。
しかし、NHKの不正が発覚し、世間の批判が高まっている現在、紅白歌合戦はまさ
に正念場を迎えているといえます。視聴率も40%を割っているのです。
とくに長年批判の対象になってきた歌手選定のプロセスの明確化は、NHKとして早
急に行う必要があります。一番良いのは、広く視聴者からの世論調査を行い、その順位
通りに出場させる方法です。もし、辞退者が出れば順番を繰り上げれば良いのです。
実はNHKは紅白に関する世論調査を今までもやっているのですが、結果を公表して
こなかったのです。しかし、2004年は不祥事の発覚がきっかけで調査結果を公表し
ています。2004年10月29日の公表結果を示しておきます。
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≪白組≫ ≪紅組≫
1.氷川きよし 1.天童よしみ
2.SMAP 2.宇多田ヒカル
3.北島三郎 3.柴咲コウ
4.五木ひろし 4.坂本冬美
5.平井 堅 5.浜崎あゆみ
6.サザンオールスターズ 6.石川さゆり
7.森 進一 7.小林幸子
8.細川たかし 8.森山良子
9.ポルノグラフィティ 9.夏川りみ
1O.ゆず 10.大塚愛
11.ORANGE RANGE 11.和田あき子
12.Mr.Children 12.松田聖子
13.鳥羽一郎 13.aiko
14.美川憲一 14.島倉千代子
15.さだまさし 15.BoA
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これを見ると、出場歌手がいろいろな世代にわたっており、それなりにバランスがと
れていると思います。2004年の出場者もこれに準拠しているといえます。しかし、
55回という回数は異常であり、紅白歌合戦は60回までに抜本的な改革をする必要が
あることは確かであるといえます。
≪画像および関連情報≫
・今回のテーマは、次の文献を主として参照している。
合田道人著『紅白/歌合戦の真実』幻冬社刊
・2部制(1989)になるまでの紅白歌合戦の視聴率
第13回 80.4% 第22回 78.1% 第31回 71.1%
第14回 81.4% 第23回 80.6% 第32回 74.9%
第15回 72.0% 第24回 75.8% 第33回 69.9%
第16回 78.1% 第25回 74.8% 第34回 74.2%
第17回 74.0% 第26回 72.0% 第35回 78.1%
第18回 76.7% 第27回 74.6% 第36回 66.0%
第19回 76.9% 第28回 77.0% 第37回 59.4%
第20回 69.7% 第29回 72.2% 第38回 55.2%
第21回 77.0% 第30回 77.0% 第39回 53.9%
・・・[紅白の歴史/04]
2008年01月10日
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