上げているなか、2月6日、イスラエル首相公選が行われ、最大野党であるリクードの
シャロン党首が、労働党のバラク首相に大差をつけて新首相になることが決まったこと
はご承知の通りです。
古代史を調べてみて、中東情勢を理解するには、「ユダヤ人とは何か」ということを
整理して臨まないと何もわからないということがわかりました。今朝はこの問題を整理
してみます。
ところで「ユダヤ人」というと、皆さんはどんな人を思い出すでしょうか。カール・
マルクス、アルベルト・アインシュタインジークムント・フロイト、アンネ・フランク
、ヘンリー・キッシンジャー、ジョージ・ソロス・・・。まだまだ出てきます。
全世界におけるユダヤ人の比率が極めて低いことを考えると、これだけの人を思い出
すことができるのがいかに驚くべきことかわかると思います。歴史に残る偉人ばかりだ
からです。
しかし、厳密にいうと、これらの人々はユダヤ人ではないのです。彼らはすべて「コ
ーカソイド」と呼ばれる白人なのです。それに、現在のイスラエルのバラク首相、これ
から首相になるシャロン党首、いずれも「コーカソイド」の子孫と考えられます。
ところで、アーサー・ケストラーという人をご存知ですか。この人はハンガリー生ま
れのジャーナリストにして科学者、それに偉大なる思想家なのです。それにこの人もユ
ダヤ人です。複雑系のことを研究している人であれば、この人が「ホロン」という概念
の提唱者であることを知っておられるかも知れません。
実はこのケストラー、1983年に妻と一緒に服毒自殺しています。自殺の原因は不
明ですが、どうやらケストラーが出した書籍のひとつ『ユダヤ人とは何か/原題:第1
3支族』と関係があるのではないかといわれています。というのは、この本の内容があ
まりにも衝撃的であるからです。ケストラーの主張を参考にしながら、ユダヤ人とは何
かに迫ってみます。
一般的な印象としては「ユダヤ人は白人である」と考えている人は多いと思います。
しかし『旧約聖書』に登場する人は、いずれも白人ではありません。モーセやダビデ、
ソロモン、イエス、いずれも白人ではなく、肌の浅黒い人たちです。彼らは人種的には
「セム系」と呼んでいます。
しかし、ヨーロッパの宗教画を見ると、イエスもマリアも瞳が青く、金髪で肌が白い
白人として描かれていることが多いのですが、これは完全に間違っています。クリスト
ファ・コロンブスやミッシェル・ド・ノストラダムスも非白人系ユダヤ人です。
一般的にユダヤ社会では、白人系と非白人系を次のように区別しているのです。
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1.白 人系ユダヤ人 ・・・ アシュケナジー系
2.非白人系ユダヤ人 ・・・ スファラディー系
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アシュケナジーとはドイツの地名であり、アシュケナジー系は、元はアーリア系の民
族の名前です。スファラディーとは、もともとは「スペイン」という意味です。ユダヤ
人は地中海沿岸に住みそのほとんどはスペインにいたからです。
アーサー・ケストラーは、なぜこんなに白人系ユダヤ人が多くいるのか、その謎解き
に取り組みます。ケストラー自身もアシュケナジー系ユダヤ人であったからです。結果
としてこれはあるタブーを冒すことにつながるのです。
8世紀以前の世界をみると、アシュケナジー系ユダヤ人はほとんどいなかったことが
わかっています。それがなぜか8〜9世紀になると、一挙にアシュケナジー系ユダヤ人
が増えている!――この事実をケストラーは発見し、そして、「コーカソイド」にたど
りつくのです。
紀元8世紀頃のことですが、コーカサスからカスピ海の北岸に「カザール汗国(はん
こく)」という国があったのです。この国の住民はトルコ系白人で、コーカソイドと呼
ばれたのです。
EJ553号で私は読者の質問に答えて、「イスラエル人は長い歴史の中で、ユダヤ
教を信奉する白人(カザール人)との間で徐々に混血が繰り返されて白人化した」と述
べましたが、実はそうではなく、もっと別な事情があったのです。
カザール汗国は、南方において「ビザンチン帝国」と「ウマイヤ朝」(のちにファテ
ィマ朝となる)と接していたのですが、ビザンチン帝国はキリスト教、ウマイヤ朝はイ
スラム教を国教としてしていたので、ビザンチン帝国とウマイヤ教は政治的にも宗教的
にも対立関係にあったのです。
ところがカザール汗国は国教というものがなかったのです。そのため両国から宗教的
に強い干渉を受けるようになります。キリスト教をとるか、イスラム教をとるか――究
極の選択をカザールは迫られたのです。どちらを選択しても戦争になる!――国の浮沈
にかかわる重要な選択です。
しかし、この国の支配階級は知恵者が多く、誰もが想像もしなかった決断を行うので
す。なんとカザール汗国はユダヤ教に改宗してしまったのです。実はキリスト教もイス
ラム教もユダヤ教を母体としているので、両国も文句をつけられないという判断に基づ
く決断です。国全部がユダヤ教の信者となったわけです。
しかし、カザール汗国は、モンゴル帝国の攻撃を受けて11世紀に滅亡してしまいま
す。このとき大量の難民が出るのですが、ユダヤ教徒となったカザール人の多くは西に
移動し、東欧に住み着きます。これがアシュケナジー系ユダヤ人となるのです。
彼らはユダヤ人としてイスラエルという国家を建国しますが、彼らは血縁的には『旧
約聖書』のユダヤ人とは何の関係もない人たちなのです。ケストラーの到達した結論は
これだったのです。この事実と現在のイスラエルとパレスチナの紛争とは、無関係では
いのです。ことばは悪いですが、彼らは偽のユダヤ人だからです。このことはフリーメ
イソンとも深く関連してきます。謎の一端が少しほどけてきたようです。
・・・ [日本人とユダヤ人/08]