2010年12月08日

●日本版石油メジャーを目指せ(EJ第2341号)

 日本は2度の石油危機を経験しているので、それに懲りて石油
の備蓄は万全だといわれています。しかし、それがそうでもない
らしいのです。というのは、石油備蓄がお役所仕事になっており
いざというときすぐには役に立たないからです。
 日本の石油備蓄は、次の2つの方法で行われているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
           1.民間備蓄
           2.国家備蓄
―――――――――――――――――――――――――――――
 民間備蓄は、民間企業が石油流通の施設に在庫を多めに持つ方
法であり、原油と石油製品を石油タンクなどに備蓄し、随時入れ
替えを行っています。国は石油業者に販売量の70日分を原油、
もしくは石油製品で備蓄する義務を負わせているのです。
 国家備蓄というのは、備蓄基地を建設し、原油の形で封印保管
するものであり、経済産業大臣の指示のあるときのみ出し入れを
行うことになっています。ここで重要なのは「原油で備蓄」して
いる点です。
 原油で備蓄されていると、いざというときすぐには役に立たな
いのです。原油を製品にはするにはどんなに急いでも2〜3週間
はかかるからです。
 それに国は原油を貯蔵するタンクは持っていますが、原油の精
製設備も原油タンカーも持っておらず、そのすべてを民間に依存
しているのです。過去の対応を調べてみましょう。
 第1次石油危機でパニックになった日本は原油備蓄をはじめた
のですが、第2次石油危機のときは民間備蓄の積み上げを一時停
止させて対応したのです。国家備蓄は役に立たなかったのです。
 続いて湾岸危機のときの対応です。このときも民間備蓄を4日
分取り崩しています。やはり民間備蓄依存なのです。米ハリケー
ン被害のときも、民間備蓄のうちの製品備蓄を2日分取り崩した
のです。つまり、緊急時は民間備蓄で対応し、それが尽きると国
家備蓄を使うというスタイルです。このように、国の備蓄原油は
過去に一度も使われたことはないのです。
 民間石油会社にいわせると、販売量の70日分を持つには、か
なりのコストがかかりますが、そのコストは石油価格に上乗せさ
れており、結局消費者の負担になるのです。
 萩田穣氏は、この石油備蓄を原油や製品ではなく、半製品で持
つことを提案していまいす。そうすると、次の3つのメリットが
あるというのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
      1.原油備蓄よりも備蓄量が増える
      2.民間備蓄をする必要がなくなる
      3.どんな緊急事態に即時対応可能
―――――――――――――――――――――――――――――
 半製品の改質ガソリンは、原油から20%ぐらいしか生産され
ないのです。したがって、同じ大きさのタンクであれば、実質的
な備蓄量が増えることになります。これが第1のメリットです。
 それから、原油を半製品にして備蓄しておけば、素早く出荷で
きるので、緊急時に対応できます。したがって、民間備蓄をやめ
ることができるのです。そうすれば実質的に製品価格は安くなり
ます。これが第2のメリットです。
 即座に製品にできる半製品を多く備蓄しておくと、石油製品の
高騰時にそれを放出し、いわゆる「冷やし玉」として役立てるこ
とができます。もし、日本だけでなく、アジア諸国が協力して半
製品備蓄基地を持つと、それがあるだけで投機筋にとっては大き
な脅威になり、価格の安定化が維持できるのです。これが第3の
メリットです。
 ちなみに石油半製品の品質ですが、備蓄中に空気や日光にふれ
ることがないので、変質することはないのです。もし、何らかの
原因で備蓄半製品が変質してしまったとしても、十分再生可能で
あって、長くストックしておくことができます。
 石油半製品の備蓄は、優先度の高いものから備蓄しておくべき
です。萩田氏の6種類を優先度で並べると次のようになります。
―――――――――――――――――――――――――――――
 優先度1.改質ガソリン
      自動車ガソリンの主成分であり、代替できるものが
      ないので、最優先で備蓄すべきもの
 優先度2.脱硫灯油
      暖房用石油ストーブの燃料であり、また、ジェット
      燃料の混合基油として不可欠なもの
 優先度3.脱硫軽油
      ディーゼルエンジンの燃料として、また、ビルや工
      場の暖房用燃料として生活に不可欠
 優先度4.脱硫ナフサ
      もっぱら石油化学用原料として用いられますが、天
      然ガスなどでも代替は可能な半製品
 優先度5.脱硫減圧軽油
      製油所の分解用原料であり、重油の混合材源。生活
      に直接結びついているものではない
 優先度6.重油/原油
      発電所などの大型ボイラーの燃料であるが、原子力
      発電や水力発電などでも代替できる
―――――――――――――――――――――――――――――
 萩田穣氏は、官民一体となって、日本にふさわしい日本版石油
メジャーを実現し、石油半製品貿易で主導権を取るべきであると
訴えています。
 日本版石油メジャー――実に壮大な提案であると思います。萩
田氏の提案は、とてもEJ3回では書ききれません。詳細はぜひ
萩田氏の著書を読んでいただきたいと思います。
 52回にわたって書いてきた原油問題は今回をもって終了しま
す。明日からは新テーマ「カラヤンの謎」です。   
          ―― [石油危機を読む(最終回)/52]


≪画像および関連情報≫
 ●萩田 穣(はぎた ゆたか)氏紹介
  ―――――――――――――――――――――――――――
  1938年樺太生まれ。1961年北海道大学工学部卒業後
  三菱石油株式会社に入社。新製油所建設プロジェクト担当と
  して東北石油への出向等を経て、1973年三菱石油本社の
  技術部課長。1994年沖縄石油基地株式会社常務取締役所
  長。1998年(株)沖縄石油総研設立。2001年同社廃止
  後、無職。趣味は囲碁。著書に、『石油の経済学』(アート
  デイズ)、『原油高騰は回避できる!』『このままでいいの
  か! 日本の石油備蓄』(樂書舘)がある。
  ―――――――――――――――――――――――――――

萩田氏の著作.jpg
萩田氏の著作
posted by 管理者 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 石油危機を読む | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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