2010年12月03日

●国際石油市場はインサイダー的取引の舞台(EJ第2338号)

 今回の異常な原油高騰――どうも何かウラがありそうです。原
油高騰のウラで巨額の利益を手にしている人がいるのです。ある
本で読んだのですが、今から10年以上前のことですが、原油の
値上げに失敗したOPECの首脳と石油メジャーの重鎮が地中海
をのぞむ豪邸に集まって密談をしたというのです。
 それから十数年が経過してた2004年の春、突如として原油
の暴騰が始まったのです。しかし、それはこれから始まる空前の
原油高騰の序奏でしかなかったのです。
 2004年春の原油の暴騰は、米国のガソリン不足と中国の原
油の輸入増加がきっかけになったといわれていますが、その結果
大儲けをしたのは、産油国の王族と欧米の石油メジャーだったの
です。ですから、産油国側と石油メジャーとの間に何らかの密約
があったのではないかといわれているのです。
 次のデータは、世界で最も稼ぐ企業のトップ10です。10社
中9社が石油メジャー並びに国営系の石油企業です。石油企業が
いかに儲けているかがよくわかります。
―――――――――――――――――――――――――――――
  順位             企業名    営業利益
   1.エクソンモービル(米) ・・・・・ 56939
   2.ゼネラル・エレクトリック(米) ・ 42277
   3.ロイヤル・ダッチ・シェル(蘭) ・ 37678
   4.トタル(仏) ・・・・・・・・・・ 29771
   5.シェブロン(米) ・・・・・・・・ 27571
   6.BP(英) ・・・・・・・・・・・ 26689
   7.CNPC(中国) ・・・・・・・・ 24739
   8.ENI(伊) ・・・・・・・・・・ 24656
   9.コノコフィリップス(米) ・・・・ 24599
  10.ガスプロム(露) ・・・・・・・・ 24275
              単位/営業利益/100万ドル
―――――――――――――――――――――――――――――
 原油価格の吊り上げは、石油メジャーと産油国のOPECが組
めばできることなのです。今回の原油の高騰でもそうですが、O
PECは何度要請されても「世界への原油の供給は十分」として
原油の増産には応じていません。それどころか「減産」を口にす
ることさえあるのです。
 一方石油メジャーは、製油所の能力がいかに落ちていてもそれ
を修復して稼働率を上げることに消極的です。稼働率は90%以
上必要なのに80%台しかないのです。しかし、環境問題がある
などの理屈をつけて、一向に修復しようとしないのです。
 OPECが増産を拒否し、石油メジャーが製油所の能力増強に
消極的になれば何が起きるでしょうか。原油の価格は上がり、ガ
ソリン価格は厭でも高騰することになるのです。
 石油問題に詳しい萩田穣氏は「国際石油市場にはインサイダー
的取引の舞台が出来上がっている」として、次のように自著で述
べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 国際石油市場に、インサイダー的取引の舞台ができあがってい
 ます。ニューヨーク・マーカンタイル取引所に原油と石油製品
 の先物が上場され、OPEC情報を誰よりも先んじて知り得る
 立場にある投機筋が参加し、金余りで膨らんだ巨大マネーが利
 益を求めて動く。そこに国際インサイダー的取引があったとし
 ても不思議ではありません。しかも、そこで決まった原油価格
 は世界の原油価格を左右します。そこは原油高を望む産油国な
 どにとって、価格操作を行う格好の場所になっているのです。
    ――萩田穣著、『変貌する石油市場』より/中経出版刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 原油価格にはもっと不可解なことがあります。国際ジャーナリ
ストの田中宇氏によると、国際石油市場は二重価格制になってい
るというのです。
 アラブの産油国は昔からイスラム諸国や非同盟の開発途上国に
対し、安値で石油を売っているらしいのです。実はOPECの設
立の目的のひとつは、発展途上国に対して特別に安く石油を売る
ことがあったそうです。
 先般米上院で問題にされたことなのですが、サウジアラビアが
イランに1バレル20ドルという国際価格の6分の1の価格で原
油を売っていたことが発覚したのです。国際政治の常識から考え
ると、スンニ派で親米のサウジと、シーア派で反米のイランとは
犬猿の仲であり、サウジがイランに超安値で石油を売ることなど
考えられない話ですが、実際はそういうことが起こっているので
す。同じことはロシアでも行われているのです。
 いうまでもないことですが、石油はドル建てになっています。
したがって、原油高は「ドル安」を意味しています。仮にドルで
はなく、金で原油を買ったらどうでしょうか。
 ニクソンショックの年から現在まで、金の地金で石油を買った
とすると、次のように原油価格は対して上昇していないのです。
要するに金を基準に考えた場合、石油価格の高騰は「ドル下落」
のことなのです。
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 1971年/1バレルの原油 ・・・ 0.08オンスの金
  → 1オンス 35ドル/1バレル  3ドル
 1980年/1バレルの原油 ・・・ 0.05オンスの金
  → 1オンス800ドル/1バレル 40ドル
 1990年/1バレルの原油 ・・・ 0.05オンスの金
  → 1オンス400ドル/1バトル 40ドル
 2000年/1バレルの原油 ・・・ 0.10オンスの金
  → 1オンス300ドル/1バレル 30ドル
 2008年/1バレルの原油 ・・・ 0.13オンスの金
  → 1オンス900ドル/1バレル120ドル
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               ―― [石油危機を読む/49]


≪画像および関連情報≫
 ●揺らぐ価格決定力/OPEC
  ―――――――――――――――――――――――――――
  世界の原油価格に影響力を及ぼしてきた石油輸出国機構(O
  PEC)の地位が揺らいでいる。最近の原油価格はOPEC
  に代わって投機マネーが決定権を握り、年明け早々に1バレ
  ル=100ドルを突破するなど高止まりの状態が続く。OP
  ECは2月1日、ウィーンで臨時総会を開いて今後の生産量
  などを協議する。相場の安定にどれだけ力を発揮できるかが
  試されそうだ。         (ロンドン 中村宏之)
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/special/47/naruhodo285.htm
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OPEC結成時からの原油価格.jpg
OPEC結成時からの原油価格
posted by 管理者 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 石油危機を読む | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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