2010年11月30日

●バイオガソリンと日本の対応(EJ第2335号)

 「バイオマス・エネルギー」という言葉があります。バイオ燃
料を総称していう言葉であり、次のような幅広い概念を有してい
るのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 バイオマス・エネルギーとは、エネルギーに変換できる生物の
 量、主として植物体、農産廃棄物、畜産廃棄物、さらには産業
 廃棄物、都市廃棄物を含む概念である。
―――――――――――――――――――――――――――――
 バイオマス・エネルギーがなぜ注目されるのかというと、次の
4つの意義があることです。
―――――――――――――――――――――――――――――
      1.再生可能なエネルギーである
      2.世界中どこにも存在している
      3.その資源量が膨大であること
      4.CO2など環境適合性が高い
―――――――――――――――――――――――――――――
 しかし、良いことばかりではないのです。エネルギーとしての
利用技術が確立されていないことや、製造コストが高いという問
題点があります。日本でバイオエタノールを製造すると、ガソリ
ン製造コストよりも2倍〜3倍もコストがかかるからです。
 しかし、日本の石油業界は、2007年4月27日から、首都
圏一都三県――東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県で、「バイオ
ガソリン」の試験販売をスタートさせているのです。この試験販
売は、経済産業省の補助金を得て実施する流通実証事業(バイオ
マス由来燃料導入実証事業)となっています。
 ところで、「バイオガソリン」とは一体何でしょうか。
 日本でいう「バイオガソリン」とは、ガソリンに7%の「ET
BE」――バイオエタノールと石油系ガスのガス・イソブテンの
合成物質です。
 ちなみに、バイオエタノールとは、サトウキビやトウモロコシ
などのバイオマスを発酵させ、蒸留して生産されるエタノールの
ことです。エタノールという物質は、石油や天然ガスからも合成
することができ、そうして生産されるエタノールを合成エタノー
ルと呼ぶのです。
 2007年は、50ヵ所の給油所において、一斉にバイオET
BEを配合したレギュラーガソリン(バイオガソリン)を販売し
2008年春からはその数を順次100ヵ所に増やし、本格導入
に向けた取組みを進めているのです。
 しかし、日本の石油会社はバイオガソリンに関してはなかなか
慎重なのです。2007年1月に、新日本石油をはじめとする製
油元売り10社は「バイオマス燃料供給有限事業責任事業組合」
――JBSLを設立し、その事業組合を通してバイオガソリンを
売るという体制なのです。
 日本における試験販売では、フランスからETBEを7800
キロリットル輸入し、新日本石油の根岸製油所において、バイオ
ガソリンを製造しています。JBSLの計画では、ETBEの原
料になるバイオエタノールの国内製造に関しては対応する計画は
なく、あくまでも海外からの調達を基本とするとのことです。
 ガソリン以外の物質からエネルギーを製造するということは別
に新しいことではないのです。第2次世界大戦において米国から
石油の輸出を止められ、戦車や軍艦、戦闘機のための燃料調達に
困った日本は、松の切り株を乾燥させて作った「松根油」をゼロ
戦の燃料として使ったという話は有名です。
 しかし、これはあくまで窮余の一策なのであって、あくまでメ
インにするものではないのです。というのは、バイオガソリンに
は3つの問題点があるからです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 1.バイオエタノールが製造から消費される過程で、必ずしも
   CO2を排出していないとはいい切れないこと
 2.バイオエタノールの原料であるサトウキビやトウモロコシ
   の資源量は有限で、あくまで人間の食糧である
 3.バイオエタノールの製造コストはガソリンの精製よりも割
   高であり、その経済合理性には疑問があること
―――――――――――――――――――――――――――――
 何よりも本来人間の食糧であるサトウキビやトウモロコシを燃
料にするという考え方は、これから深刻化する人類の食糧問題を
考えると大きな問題であるといえます。
 既出の岩間剛一氏は、この問題に関して自著において次のよう
に述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 米国やブラジルでは、バイオエタノールを生産するために、サ
 トウキビ畑やトウモロコシ畑の作付面積が拡大している。その
 一方で、オレンジ畑が次々とつぶされている。その結果、オレ
 ンジの不作とともにオレンジジュースの値段が上がるという思
 わぬ余波も発生しており、安易なバイオエタノール依存に警鐘
 を鳴らす食糧専門家も多い。
           ――岩間剛一著/アスキー新書/025
『「ガソリン」本当の値段/石油高騰から始まる「食の危機」』
―――――――――――――――――――――――――――――
 ブラジルにおいて、バイオエタノールの利用開始時点では、地
球温暖化防止という視点よりも、農家保護という面が強かったと
いわれます。つまり、農家に新しいビジネスチャンスを与えると
いう面が強かったのです。
 バイオエタノールが地球温暖化に寄与するというのは、後から
付けた理屈であるといえます。なぜなら、バイオエタノールを製
造するプロセスでも石油や天然ガスによるエネルギーが大量に消
費され、CO2を排出するからです。したがって、バイオエタノ
−ルが環境にやさしいということは、一概には言い切れないので
す。             ―― [石油危機を読む/46]


≪画像および関連情報≫
 ●ETBEとは何か
  ―――――――――――――――――――――――――――
  ETBE――エチルターシャリーブチルエーテルとは、エタ
  ノールとイソブテンから合成される化学物質である。自動車
  燃料に混合してに混合して使用されている。ETBE混合ガ
  ソリンは、水分が混入しても、ETBEが水と混和して分離
  することがなく、水分を除去することも可能であり、ガソリ
  ンの性状は変化しない。このため、金属の腐食やゴムの劣化
  などが生じず、自動車の安全性や走行性能に問題を生じるこ
  とはない。             ――ウィキペディア
  ―――――――――――――――――――――――――――

バイオETBE.jpg
バイオETBE
posted by 管理者 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 石油危機を読む | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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