2010年11月29日

●日本は技術という資源を活用せよ(EJ第2334号)

 2006年5月に策定された「新・国家エネルギー戦略」――
自主開発原油の割合を2030年までに40%にすることを目指
しています。現在の自主開発原油の割合は約15%です。
 2006年時点において日本が権益を有する石油・ガス事業は
117件であり、そのうち68件が原油・ガスを生産しているの
ですが、それらの原油と天然ガスの生産量は、「日量74万バレ
ル」に過ぎないのです。
 40%を達成しようとすると、「日量160万バレル」は必要
なのです。しかし、現在は「日量74万バレル」しかないので、
さらに「日量86万バレル」の原油生産を確保することが必要に
なりますが、それは果たして可能なのでしょうか。
 これに対して政府は、カスピ海、サハリン、オーストラリアな
どの権益確保によって40%は十分可能であると考えていますが
ここまで見てきたように資源ナショナリズムが高まるなかで、と
うてい計画通りにことは運ばないと考えられます。少なくともこ
れまでは失敗の連続といってよいからです。資源はもはやお金を
出せばいつでも買えるコモディティ(市況商品)ではなくなって
いるのです。
 このように、エネルギー供給の不安定化が進むなかで、日本の
エネルギー安全保障政策の基本は、日本の持つ高度な「技術」と
いう資源に頼るしかないということになります。
 エネルギー問題に詳しい東洋大学経済学部の小川芳樹教授は、
これについて次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 これまでは石油なら石油、石炭なら石炭を外国からいかに確保
 するかという政策に力を注いできた。しかし、供給サイドにば
 かりに目を向けていると、いつまでたっても相手国の事情に左
 右されることになる。それよりも、自国のエネルギー消費構造
 を工夫していかにひとつの資源だけに頼らないようにするかが
 重要です。               ――小川芳樹教授
            ――「SAPIO」/4月9日号より
―――――――――――――――――――――――――――――
 要するに、石油・天然ガス以外の代替エネルギーをいかに確保
するかにかかっているというのです。日本で一番進んでいるのは
原子力です。現在、日本のエネルギー消費量の12〜14%は原
子力が担っているのですが、日本はこれをさらに飛躍させる高度
な技術を持っているのです。
 現在世界で一番注目されているのは、現在の原子炉を進化させ
た「スーパー軽水炉(超極臨界圧軽水冷却炉)」です。「スーパ
ー軽水炉」とは一体何でしょうか。
 「スーパー軽水炉」を研究している東京大学の岡芳明教授は、
次のように説明しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 2030年の実用化を目標にしているスーパー軽水炉は、蒸気
 の力を限界まで引き出す新しい発想の原子炉で、米国原子力エ
 ネルギー省から第4世代原子炉に認定されました。このスーパ
 ー軽水炉ならば、建築費用は従来の約3分の2まで圧縮できま
 す。設置面積も小さくて済みますから、新たな原子炉を建設す
 る追い風になってくれるはずです。     ――岡芳明教授
            ――「SAPIO」/4月9日号より
―――――――――――――――――――――――――――――
 既にあるスーパー軽水炉型発電所の改良や新たな炉の増設が順
調に進めば、日本全体のエネルギーの50%を担うことも可能に
なるといわれています。
 もともと日本人は原子力にはアレルギーが強く、反対の声が多
いのですが、日本の場合は原子力を核として進めざるを得ないの
です。世界で唯一原子爆弾を落とされた国が世界で一番その原子
力を平和的に利用する――こういうかたちになることが、一番望
ましいのです。
 しかし、世界を見ると、化石燃料に代わるエネルギー確保に邁
進している国は多いのです。この面で日本は大きく遅れていると
いえるのです。
 アイスランドでは、エネルギーの55%を「地熱発電」、16
%を水力発電で確保しています。自動車などの燃料に関しては、
水素エネルギーを活用して、できる限り化石燃料を抑えよう努力
しているのです。
 水素は化石燃料やバイオマス、水など様々な原料から製造でき
燃料電池自動車や家庭用、業務用のエネルギーとして利用が期待
されているのです。水素は燃やしてもほとんど有害ガスが出ない
クリーンなエネルギーです。
 燃料電池自動車では、水素を燃料として化学反応を利用して電
気を作り、その電気によるモータで走るクリーンな自動車です。
燃料電池自動車が水素エネルギー社会の牽引役を担うものとして
大いに期待されているのです。
 アイスランドの国内では、既に公共バスの一部には水素ガスが
取り入れられており、レイキャビク市内では、水素ガス・スタン
ドまで設置されています。アイスランド政府は、今後もこうした
取り組みを強化し、2050年までに再生可能エネルギー100
%を達成する方針であるというのです。
 アイスランドだけではないのです。ドイツでは2000年に再
生可能エネルギー法が施行され、太陽電池の普及が一段と拡大し
ているのです。
 なぜかというと、この法律は民間が太陽光などで発電した自然
エネルギーを電力会社が割高な固定価格で買い取るよう義務づけ
ているのです。その価格は、化石燃料で供給される電力の3〜4
倍に当たるため、太陽光発電が家庭や企業に拡大したのです。
 もともと日本は太陽光発電は導入量世界一を誇っていたはずで
すが、なぜドイツに負けてしまったのでしょうか。国家がサポー
トしなかったからなのです。明らかに国策の失敗であるといえる
のです。           ―― [石油危機を読む/45]


≪画像および関連情報≫
 ●東京大学の岡芳明教授のウェブサイトより
  ―――――――――――――――――――――――――――
  1989年に私たちの研究室で生まれた新しい原子炉の概念
  は、現在では米国・欧州・韓国・カナダをはじめ、私たちを
  中心に世界中で研究されています。また、2001年7月に
  は、米国を中心とする世界10カ国で、第4世代国際フォー
  ラム(GIF)が結成され、2030年までの実用化を目指
  し、他の5つの概念と並び、特に有望とされる第4世代原子
  炉に選ばれました。私たちは国内だけでなく、世界を相手に
  研究しているのです。          ――岡芳明教授
  ―――――――――――――――――――――――――――

岡芳明東京大学教授.jpg
岡 芳明東京大学教授
posted by 管理者 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 石油危機を読む | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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