2010年11月10日

●LNGの安定供給は確保できるのか(EJ第2322号)

 サハリン・エナジー社の筆頭株主がロイヤル・ダッチ・シェル
からガスプロムになる――このことは何を意味しているのかわれ
われはよく考える必要があります。
 これについて、三井物産の檜田松榮社長は、プーチン大統領に
招かれたパーティーで次のように述べているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ホスト国「ロシア」が関与することになり、意思疎通の面でも
 状況ははるかに良くなった。ガスプロムがこのプロジェクトに
 参加するとの合意は、サハリン2の一里塚である。それはプロ
 ジェクトをいちじるしく強化すると、三井「物産」は考える。
                 ――檜田松榮三井物産社長
   木村汎著、『プーチンのエネルギー戦略』より/北星堂刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 この発言を聞いていると、ロシアに対する外交辞令もあるが、
三井物産としてはガスプロムがこのプロジェクトに参加し、主導
権を握ることによって、かえって事態は良くなると本気で考えて
いるようです。
 しかし、本当にそういえるのでしょうか。三井物産、三菱商事
の日本勢としては、今まで世界第2位のメジャーとしてのシェル
の圧倒的な発言権によって、おそらく思うような事業運営ができ
なかったと思うのです。したがって、ガスプロムの参加をむしろ
歓迎したのではないかと思われます。もし、そうであるとしたら
日本はあまりにも甘いといわざるを得ないと考えます。
 ガスプロムがサハリン・エナジー社の筆頭株主になったことに
よって、欧州復興開発銀行(EBRD)は、直ちにサハリン2の
プロジェクトに対する資金供与を中止しています。国際ビジネス
はこのくらいの危機感を持ってもいいのです。おそらくEBRD
はロシアという国は外国資本が参加するには政治的リスクの多い
国との判断をして資金供与から手を引いたと思われるからです。
 もちろんサハリン2の結末だけによる判断ではないのです。そ
の前にロシアのウクライナに対する仕打ちを見ているからです。
2006年1月にロシアはウクライナに対し、ガスの供給を停止
しています。そして、同じ年の12月にロシアによるサハリン2
の乗っ取りの顛末があったのです。
 それに加えて「サハリン1」に対するロシアの外資追い出しの
動きが2006年に起こっているのです。サハリン1は、サハリ
ン2と同様に、サハリン州北部東岸の大陸棚の原油・天然ガスの
開発プロジェクトなのですが、サハリン2よりも先に着手したの
で、サハリン1と呼ばれているのです。
 サハリン1は、やはりエリツィン大統領の時代の1995年に
PSA(生産分与協定)を締結しているのですが、サハリン2と
違ってこちらには「ロスネフチ」というロシアの石油企業が入っ
ているのです。株主構成は次の通りです。
―――――――――――――――――――――――――――――
  エクソンモービル ・・・・・・・・・・・ 30%
  サハリン石油ガス開発(SODECO) ・ 30%
  ロスネフチ ・・・・・・・・・・・・・・ 20%
  インド国営石油企業(ONGC) ・・・・ 20%
―――――――――――――――――――――――――――――
 サハリン石油ガス開発(SODECO)というのは、日本石油
公団、伊藤忠商事、丸紅が共同出資する企業です。このサハリン
1の特色は、エクソンにガスを好きなところに売る権利を与えて
いることです。
 プーチンは大統領になると、このサハリン1に関してもPSA
を見直す必要があると考えて行動を起こしているのです。プーチ
ン政権のサハリン1に対する行動は、サハリン2とは違う方法を
とっています。
 繰り返しますが、サハリン1は筆頭株主のエクソンにガスを自
由に売る権利を与えています。そこで、エクソンは2006年に
中国にガスを売る契約を結んだのです。販売先は中国石油天然ガ
ス集団公司(CNPC)――当然の権利です。
 ロシア側の出資比率はロスネフチの20%しかなく、反対のし
ようがなかったのです。しかし、プーチン政権はこれを潰しにか
かったのです。中国は日本や欧州諸国と違ってガスを安く買おう
とするので、中国には売りたくないのです。
 そこでロシア側が主張したのは、「ロシア産のエネルギーはロ
シア国内の消費者の需要を満たす必要がある」という理屈なので
す。ここでいう「ロシア国内」というのは、ハバロフスク州、沿
海州、サハリン州を指しているのです。これらの州の実態はどう
かというと、エネルギーは地元の石炭や水力発電所で対応する方
がサハリンから輸入するよりもずっと安くつくのにです。
 要するに、サハリン1で産出するガスはロシア国内の需要を満
たすため、ロシアで買い取るという意思表明です。これに関して
当時ガスプロムの副社長をしていたアレクサンドル・メドベージ
ェフ(現ロシア大統領)は次のようにいっているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 君(エクソン)はパイプラインをもたない。それにもかかわら
 ず、中国にガスを売りたいという。それはいったいどういう意
 味なのか。では果たしてどのようなやり方で輸出するつもりな
 のか。
   木村汎著、『プーチンのエネルギー戦略』より/北星堂刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 ロシア側のいう理屈は西側諸国では絶対に通用しない屁理屈な
のです。契約ではどこにでも売れるようになっているかもしれな
いが、君が売ろうとしているガスはわれわれロシアのガスなのだ
ということを忘れてもらっては困るというわけです。
 それでいて、このときガスプロムは、中国との間でガス・パイ
プライン建設の交渉をやっているのです。こういう手ごわい相手
と腰が引けている日本の外務省――北方領土はそう簡単には帰っ
てはこないと感じます。    ―― [石油危機を読む/33]


≪画像および関連情報≫
 ●プーチン前大統領の発言
  ―――――――――――――――――――――――――――
  「アサヒ・コム」によると、ロシアのプーチン大統領は20
  06年9月25日、サハリンで開発が進んでいる進んでいる
  石油・天然ガス採掘プロジェクトのうち、パイプラインでロ
  シア本土に運ばれる天然ガス「サハリン1」について「ロシ
  ア国内消費向けであり、国外には輸出しない」と発言した。
  今プロジェクトの筆頭出資者エクソンモービルではこのルー
  トで中国に天然ガスを輸出する交渉を進めているが、今回の
  プーチン大統領の発言はこれを認めない方針を明らかにした
  もので、今後の動向に注目が集まっている。
   http://www.gamenews.ne.jp/archives/2006/09/1_15.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

メドベージェフロシア大統領.jpg
メドベージェフロシア大統領
posted by 管理者 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 石油危機を読む | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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