2010年11月02日

●ガスプロムとはどういう企業か(EJ第2317号)

 2008年4月26日のことです。福田首相はロシアを訪問し
モスクワ郊外の大統領公邸において、プーチン大統領と会談して
います。プーチン・ロシア大統領最後の日ロ首脳会談となったわ
けです。
 問題は、福田首相がこの忙しい時期になぜロシアにだけは行っ
たかということです。道路特定財源の一般財源化や暫定税率の再
議決問題、後期高齢者医療問題など難問が山積しているにもかか
わらずです。おそらくそれは外交で少しでも得点を稼ぎ、支持率
低下に歯止めをかけたいという思いがあったものと思われます。
 日本サイドから考えると、ロシアとの間には北方領土という領
土問題はあるものの、それ以外に大きな懸案事項はとくにないと
いえます。しかも、ロシアは領土問題を交渉する窓口を閉じてい
るわけではないのです。したがって、日本としてはこれからもロ
シアと粘り強く交渉を重ねる必要があります。
 一方ロシア側としては、現在展開中のエネルギー戦略や環境の
問題において、日本の技術や資金などの協力を引き出したいと考
えています。したがって、北方領土問題という交渉材料を巧みに
使いながら、少しでもロシアに有利に目的を達したいと考えてい
るのです。つまり、両者が交渉のテーブルに着く十分な目的はあ
るといえます。
 4月27日の日本経済新聞は、今回の日ロ首脳会談について次
のように書いています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 プーチン政権は資源外交の一環としてアジア太平洋地域での影
 響力の拡大を図っており、日本との経済・技術協力への期待が
 高い。中国と日本で競り合っていた東シベリアのパイプライン
 建設を巡り、今回、日本向けのパイプライン建設に有利になる
 と見られる日ロの共同探鉱が実現したのもそのためだ。
      ――2008.4.27付、日本経済新聞朝刊より
―――――――――――――――――――――――――――――
 ロシアのエネルギー戦略について語るとき、知っておくべきこ
とがあります。それは「ガスプロム」についてです。
 ガスプロムというのは、ロシア政府系の天然ガス独占体のこと
です。設立は1989年で、旧ソ連邦のガス工業省が改組され、
ガスプロムが設立されたのです。初代社長は、旧ガス工業大臣の
ビクトル・チェルノムイルジンです。
 チェルノムイルジンは、1992年12月にエリツィン大統領
によって首相に任命され、レム・ヴャヒレフが二代目首相に任命
されたのです。
 しかし、チェルノムイルジンにしてもヴャヒレフにしても絵に
描いたようなソ連時代の典型的な官僚であり、腐敗や汚職にまみ
れる閨閥人事を行い、10億ドルを超える私的財産を築いたとい
うどうしようもない社長だったのです。
 プーチン大統領の時代になった2002年6月にレム・ヴャヒ
レフ社長は更迭され、アレクセイ・ミレルが三代目の社長になっ
たのです。アレクセイ・ミレルは、プーチンがサンクトペテルブ
ルグ市役所時代の部下であり、凡庸な人物ではあったものの、プ
ーチンとしては使いやすかったものと思われます。
 プーチン大統領は、ガスプロムに全面的なバックアップ体制を
取り、ガスプロムをして彼のエネルギー戦略の中核的存在を担わ
せたのです。その結果、ミレルが社長になってから2005年ま
での間にガスプロムの資本金は約10倍になったのです。これに
よって、ミレルは難なく社長に再選されたのです。
 現在、ガスプロムは、世界企業番付で、次のように第4位を占
める大企業になっています。エネルギー分野に絞ると、エクソン
モービルに次いで第2位であり、ガス分野では、世界一の存在に
なっています。
―――――――――――――――――――――――――――――
        1.エクソンモービル
        2.ゼネラル・エレクトリック
        3.マイクロソフト
        4.ガスプロム
―――――――――――――――――――――――――――――
 ガスプロムは、現在ロシア政府がその株式の51%を保有して
おり、事実上の国営企業となっています。それだけではないので
す。その役員構成を見ると大臣がそのまま役員を兼務するという
驚くべきことがわかります。
―――――――――――――――――――――――――――――
 会 長 ドミトリー・メドベージェフ第一副首相
 社 長 アレクセイ・ミレル
 取締役 ゲルマン・グレフ経済発展相(当時)
 取締役 ビクトル・フリスチェンコ産業エネルギー相
 取締役 イーゴリ・ユスコフ国際エネルギー担当大統領特使
―――――――――――――――――――――――――――――
 彼らはプーチン派の中心的メンバーであり、プーチンの意のま
まに動く人物ばかりです。したがって、今年プーチン大統領が辞
任すると、首相に就任したうえガスプロムの会長職を兼務するの
ではないかと見られているのです。既出の木村汎氏は、ガスプロ
ムについて次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ロシアの政治学者リリア・シェフツオーバはガスプロムを「国
 家核心」であり、「クレムリンの意思の体現者」であるとさえ
 名づけた。別の研究者はガスプロを「クレムリンの旗艦」と呼
 ぶ。(中略) 日本のエネルギー研究家、渥美正洋によれば、
 プーチン大統領の「資源外交の実働部隊」の役割をはたしてい
 る。   ――木村汎著、『プーチンのエネルギー戦略』より
                         北星堂刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 あのウクライナとの紛争でも指令を出していたのは、ガスプロ
ムであったのです。       ―― [石油危機を読む/28]


≪画像および関連情報≫
 ●ガスプロムについて言及しているサイト
  ―――――――――――――――――――――――――――
  ガスプロム社は、天然ガス生産量世界最大を誇る、ロシアを
  代表する超巨大企業です。1989年設立で、前身はソビエ
  ト連邦ガス工業省。その天然ガスの生産量は、全世界の4分
  の1を占めるほどです。ロシア最大規模の財閥企業ですが、
  株式の過半数をロシア政府が握っており、準国営企業なので
  す。ロシアは「国内のエネルギー産業は国が統制する」と明
  言しており、ガスプロムはその典型といえます。
      http://www.brics-jp.com/russian/gas_purom.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

日ロ首脳会談/2008.4.26.jpg
日ロ首脳会談/2008.4.26
posted by 管理者 at 03:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 石油危機を読む | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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