2010年01月15日

●ロックンロールの誕生(EJ第2191号)

 1954年1月のことです。サン・レコードから何もいってこ
ないので、エルヴィスはサン・レコードを訪ねて再び録音をやっ
たのです。本当はサム・フィリップスに会うためです。
 そのときは首尾よくフィリップスには会えたのですが、そのと
きとくに何の話もなかったのです。
 それから、さらに6ヵ月が経過したのですが、サン・レコード
からは何の連絡もなかったのです。これはもう駄目かなとあきら
めかけたとき、フィリップスの秘書マリオン・カイスカーから連
絡が入ったのです。「サン・レコードに来て欲しい」と。
1954年6月26日のことです。
 後にフィリップスの言によると、電話をかけて電話を置いたら
エルヴィスがサン・レコードの入り口に立っていたというほど、
エルヴィスはサン・レコードに息せきって駆け付けたのです。し
かし、この焦りが裏目に出るのです。
 エルヴィスはフィリップスの前で自分の歌える曲を全部聴いて
もらったのですが、フィリップスのOKは出なかったのです。エ
ルヴィスも焦っていて自分のベストを出せなかったといいます。
しかし、エルヴィス自身はこのセッションは失敗だったものの何
となく自分には何らかの才能があることを確信したのです。きっ
とチャンスはくる、と。
 フィリップスも迷っていたのです。そこで、友人のスコティ・
ムーアに「エルヴィスを試してくれないか」と頼んでいます。ス
コティは、カントリーバンド「スターライト・ラングラード」の
オーナーであり、フィリップスの音楽仲間なのです。そのバンド
のベーシストをやっていたのは、エルヴィスの年上の音楽仲間で
あるビル・ブラックだったのです。
 スコティは、早速エルヴィスの家に電話を入れて、その翌日に
スコティの家で会うことにしたのです。1954年7月4日のこ
とです。当日、エルヴィスはスコティの前で自分の歌を披露した
のですが、その席にはビル・ブラックも参加したのです。
 エルヴィスを帰すと、スコティはフィリップスに電話を入れて
その日のセッションの様子を次のように報告しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 リズム感はいいし、声も素晴らしい。しかし、歌った曲には問
 題があるけどね。しかし、オーディションをする価値はある。
―――――――――――――――――――――――――――――
 1954年7月5日、サン・レコードで、エルヴィスの正式な
オーディションが行われたのです。スコティとビルも楽器を持っ
て参加したのです。
 しかし、一日かけて歌いまくったのに対し、前2回のセッショ
ンと同じで、良い結果が得られなかったのです。曲は主としてバ
ラード調のものが多かったようです。夜中の12時近くになって
今日はもうお開きにしようかということになったときです。
 いきなり、エルヴィスはギターをかき鳴らし、テンポの早い曲
を歌い出したのです。曲は「ザッツ・オール・ライト」という曲
です。この曲はある黒人のブルース・シンガーが1946年に書
いた曲ですが、結局ヒットしなかったのです。
 エルヴィスが歌い出すと、スコティとビルも演奏に参加して演
奏をはじめたので、スタジオは大変な騒ぎになったのです。コン
トロール・ルームで休んでいたフィリップスはこれを聞いて突然
起き上がり、大声で叫んだのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 これはいい。その調子で続けてくれ。この音がどこかにいって
 しまわないうちに、もう一度最初からやり直しだ。
             ――前田絢子著/角川選書/413
      『エルヴィス、最後のアメリカン・ヒーロー』より
―――――――――――――――――――――――――――――
 フィリップスはマイクの位置などを正しくセットして、テープ
を回し始めたのです。そして、何回も何回も形が整うまで演奏は
繰り返され、やっと収録が終わったのです。そして、出来上がり
を全員で聴いたのです。
 このサウンドこそ、後に「ロックンロール」といわれる新しい
音楽の誕生だったのですが、これについて、前田絢子氏は次のよ
うに書いています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 黒人のリズム&ブルースとゴスペル、白人のカントリー・ミュ
 ージックとが、エルヴィスの若々しく躍動する身体の中で一つ
 となり、まったく独創的なサウンドを作り上げていた。ビルは
 圧倒されて、茫然としながら、「こんな危険な音をどうすれば
 いいんだ。きっと俺たち、町から追い出されるぜ」と呟いた。
 これが、伝説的なロックンロール誕生の瞬間であった。みんな
 疲れ切っていたが、何かを達成した後の奇妙な開放感と興奮を
 覚えていた。ようやく互いに「お休み」と言ってスタジオを出
 たのは、夜中の二時を回っていた。
             ――前田絢子著/角川選書/413
      『エルヴィス、最後のアメリカン・ヒーロー』より
―――――――――――――――――――――――――――――
 サム・フィリップスはそのままスタジオで考え込んでしまった
のです。この曲はビル・ブラックのいうように「危険な音」に違
いなかったからです。当時の白人の若者は、黒人の音楽には興味
を持ってはいましたが、黒人のレコードを買う者はさすがに少な
かったのです。
 しかし、この曲は確かに黒人の強烈なビートはあるが、黒人特
有の粘っこさはなく、もっと軽やかで若々しい声が躍動している
のです。これは白人のカントリーソングのセンチメンタルな声と
も異なっていたのです。まさに、これは黒人の音楽と白人の音楽
が融合した新しい音楽であったのです。
 当面フィリップスのやるべきことは、レコードのB面に何を入
れるかであったのです。フィリップスは、そのためにエルヴィス
とビル、スコティを召集します。  ―― [エルヴィス/03]


≪画像および関連情報≫
 ・「ロックンロール」と「ロック」の関係
  ―――――――――――――――――――――――――――
  「ロックンロール」の略語が「ロック」である。「ロック」
  という略語はロックンロール黎明期からしばしば用いられて
  いたが、1960年代には「ロック」という呼び方が一般化
  し、「ロックンロール」と呼ぶことは少なくなった。ただし
  アメリカはでは現在もバンドサウンドであるロックのことを
  指して、総じて「ロックンロール」という言葉を用いること
  がある。              ――ウィキペディア
  ―――――――――――――――――――――――――――

前田絢子氏の本.jpg
前田絢子氏の本


posted by 管理者 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | エルヴィス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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