2009年06月30日

●『洞窟』という名の幻の支部づくり(EJ第1986号)

 高名なモーツァルト研究学者だったアルフレート・アインシュ
タインはモーツァルトの作品について次のようにいっています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 自分がフリーメーソンの会員の一人であるという自覚が彼の全
 作品に浸透している。『魔笛』だけでなく、その他の多くの作
 品がフリーメーソン的なものである。この結社に未加盟の人間
 にとっては、これからの作品のメーソン的特徴がいっこうに明
 らかでないとしても、やはりそうである。
      ――キャサリン・トムソン著/湯川新/田口孝吉訳
   『モーツァルトとフリーメーソン』より。法政大学出版局
―――――――――――――――――――――――――――――
 アインシュタインのいう「フリーメーソン的特徴」とは、何で
しょうか。これについては、上記のキャサリン・トムソンの本を
ゆっくり読むことをお勧めしたいと思います。モーツァルトの音
楽の中の「フリーメーソン的特徴」を楽譜入りでわかりやすく解
説をしています。
 それはさておき、モーツァルトは現在私たちが知る以上に非常
に真面目に、そして情熱的にフリーメーソン活動に取り組んでい
たのです。そのため、それがあらゆるモーツァルトの作品に影響
を与えていたのです。
 それだけに、1785年12月にヨーゼフ2世の出した宮廷勅
令はこれから本格的にフリーメーソン活動に取り組みたいと思っ
ていたモーツァルトにとって衝撃的なものだったのです。なぜな
らこれによって、今まで8つあった支部は2つ――「新・授冠の
希望」と「真理」の2つに集約されてしまったからです。
 それに加えて、モーツァルトが加入していた支部の「恩恵」は
啓明結社系の支部であったのに、薔薇十字団系の支部である「授
冠の希望」に吸収され、「新・授冠の希望」(後に「新」が取れ
て元の「授冠の希望」となる)になったのです。
 モーツァルトは、「恩恵」と同系統の「真の調和」支部の支部
長――イグナーツ・フォン・ボルンに惹かれていたのです。とこ
ろがこのフォン・ボルンは新たに「真理」と名前を変えた支部の
支部長にはなったものの、モーツァルトの属することになる支部
「新・授冠の希望」とはまったく考え方が異なるのです。
 こういうフリーメーソン支部の統廃合によって、1785年に
は950名いたウィーンのフリーメーソンの会員は、半分以下の
350名に激減してしまったのです。そして、ウィーンの2つの
支部も18世紀中に消滅してしまったのです。
 そのひとつの重要な原因は、アロイース・ホフマンという男の
裏切りにあったのです。ホフマンは、もともとモーツァルトの属
していた「恩恵」の支部に属していたのですが、宮廷勅令を機に
フリメーソンをやめ、一転してフリーメーソンの誹謗中傷をはじ
めたのです。そして、ウィーンの秘密警察の手先となって、とく
に啓明結社潰しをやったのです。
 しかし、モーツァルトはフリーメーソンの活動を密かに継続さ
せていたのです。それも自ら新しい支部を作ろうとしていたので
す。しかし、それは宮廷勅令に反する行為であり、地下活動的に
ならざるを得なかったのです。そのモーツァルトが作ろうと目指
していた支部の名前は「洞窟」という名前であるといわれます。
 なぜ、「洞窟」という名前を付けたのでしょうか。
 それは、ザルツブルグのアイゲンに実在する美しい洞窟を意味
するのではないかといわれているのです。というのは、その洞窟
は、「啓明団の洞窟」といわれ、啓明団の会合がしばしば行われ
ており、モーツァルトはフリーメーソンに入る前にその会合に参
加したことがあるのではないかといわれているのです。
 キャサリン・トムソンは、このアイゲンの洞窟に関連して次の
ように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 地質学者ローレンツ・ヒューブナーの1792年執筆の報告に
 よれば、啓明団の会合が、ザルツブルグ近郊のアイゲンにある
 人里離れた美しい洞窟(今日「啓明団の洞窟」として知られる
 場所)で夜に開催されたさい、啓明団の指導者の一人、ギロウ
 スキー伯が「知人のフォン・アマン、モーツァルト、バリザー
 ニを連れて」列席した。
      ――キャサリン・トムソン著/湯川新/田口孝吉訳
   『モーツァルトとフリーメーソン』より。法政大学出版局
―――――――――――――――――――――――――――――
 モーツァルトにとっては、このアイゲンの洞窟で行われた啓明
団の会合が印象に残っていて、後にフリーメーソンに入ろうとす
る動機のひとつになったと考えられます。また、自分が新たな支
部を作ろうとするときにそれを使ったのではないかと考えられま
す。洞窟の周辺には急流の滝があり、高い木々がそびえ立ち、険
しく切り立った岩山があるのです。添付ファイルにアイゲンの滝
の写真を示しておきますが、この風景は『魔笛』の鎧を着た男た
ちが登場する場面そのものです。
 歌劇『魔笛』の第2幕――鎧を着た男たちが登場する場面のト
書きには、次のように書いてあります。
―――――――――――――――――――――――――――――
 2つの大きな峰、一方の峰には急流の滝があり、他の峰からは
 火が吹いている。   ――『魔笛』/鎧を着た男たちの場面
―――――――――――――――――――――――――――――
 これを見ると、モーツァルトがいかにアイゲンの洞窟のことを
印象深く覚えていたかがわかります。だからこそ、自分の最後の
年の作品である『魔笛』の場面に使ったり、自分が密かに作ろう
としていたフリーメーソンの支部の名前に「洞窟」を使おうとし
たものと思われます。
 その「洞窟」支部――結局は実現しなかったものの、それは大
変な企てであり、膨大な資金を必要としたのです。モーツァルト
の理解に苦しむ莫大な借金とは、この「洞窟」作りのために使わ
れたのではないでしょうか。  ・・・[モーツァルト/64]


≪画像および関連情報≫
 ・啓明結社について
  ―――――――――――――――――――――――――――
  啓明結社は、陰謀論においては、非常に人気があり、現在で
  も密に世界へ手を伸ばし影響を与えている影の権力であると
  される。ただし、日本ではそれほど有名ではなく「ユダヤの
  陰謀」や「フリーメーソンの陰謀」で置き換えられているこ
  とが多い。また、単にイルミナティと言った場合、後述のア
  ダム・ヴァイスハウプト主宰のものを指す場合が多いが、そ
  の後に復興運動があったとは言えその本体の活動期間は実質
  8年間であり、陰謀論の主体としてはユダヤやフリーメイソ
  ンと比較して説得力に欠けるという側面もある。
                    ――ウィキペディア
  ―――――――――――――――――――――――――――

アイゲンの洞窟周辺.jpg
アイゲンの洞窟周辺
posted by 管理者 at 03:00| Comment(1) | TrackBack(0) | モーツァルト | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして。福井市在住の大嶋昌治(おおしままさはる)と言います。聖書預言を伝える活動をしています。

間もなく、エゼキエル書38章に書かれている通り、ロシア・トルコ・イラン・スーダン・リビアが、イスラエルを攻撃します。そして、マタイの福音書24章に書かれている通り、世界中からクリスチャンが消えます。その前に、キリストに悔い改めて下さい。2020年を悔い改めの年にしてください。携挙に取り残された後のセカンドチャンスは、黙示録14章に書かれています。
Posted by 大嶋昌治 at 2020年07月27日 22:36
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