2009年02月04日

●オプス・デイとヴァチカンとの関係(EJ第1888号)

 このあたりでシラスの属するオプス・デイという宗教組織につ
いて説明しておく必要があります。シラスはこれまでに5人を殺
しており、組織の指令による殺人であるとすると、凶悪で邪悪な
組織のように見えます。
 実はこのオプス・デイ――実在の宗教組織なのです。しかも、
カルト的色彩は濃いものの、れっきとしたカトリック教会の一員
なのです。1995年現在、オプス・デイは世界80ヶ国に公称
7万7000人の信徒を有しているといわれます。
 どうしてオプス・デイの会員がこのように伸びたかというと、
皇王ヨハネ・パウロ2世から特別のお墨付きをもらったからなの
です。特別のお墨付きとは、1982年にオプス・デイは「属人
区」として承認されたことをいいます。
 「属人区」とは何でしょうか。
 現在のカトリック教会の組織は、大部分は地域によって分けら
れ、信者は居住する区域の教会に属することになります。しかし
カトリック教会は地域的な習慣の違いなどから、種々の典礼を認
めているのです。すべての地域の教会が同じ典礼をやっているわ
けではないのです。
 例えば、あるカトリック信者が、自分が洗礼を受けた時とは異
なる典礼区域に移住した場合、その地域の教会に属さずに地理的
には別の場所にあっても、自分の典礼の教会に属すことが認めら
れています。これを「属人区」というのです。
 オプス・デイは「属人区」が認められていますが、これは独特
の典礼を行うオプス・デイの場合、どこに居住していようとも地
域の教会に属さず、あくまでオプス・デイの会員として行動でき
ることを意味しています。それでいて、れっきとしたカトリック
教会の一組織なのです。明らかに特別扱いといえます。
 「ダ・ヴィンチ・コード」の原作のなかで、オプス・デイの司
教アリンガローサが次のようにいうところがあります。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 これはまったく合法的な取引です。オプス・デイはヴァチカン
 市国の属人区であり、教皇聖下はあらゆる形で資金の用立てを
 なさることができます。いかなる法も犯していません。
                    ――アリンガローサ
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 要するに、オプス・デイは聖職者の地位と同様で、地理的な制
約を一切受けないのです。これは大変な厚遇であり、ヴァチカン
はなぜオプス・デイをこれほどまで厚遇するのかが話題になるほ
どの贔屓ぶりといえます。
 オプス・デイには現在賛否両論があるのです。オプス・デイと
は「神の御業」という意味なのですが、会員にとっては、創始者
であるホセマリア・エスクリパーの説く日常生活の聖化を実践す
る場であるのに対して、批判者は会員の勧誘が強引であり、おの
れの意思を貫くのに手段を選ばない――隠蔽でも裏工作でも何で
もやる、強力で危険な狂信的組織であるというのです。つまり、
批判者にとってオプス・デイは、かつてのオーム真理教と同じで
あるといえます。
 ダン・ブラウンは、「ダ・ヴィンチ・コード」においてオプス
・デイを邪悪な宗教組織として描いていますが、それはそうする
ことによって、背後にいるカトリック教会に批判の目を向けてい
るとも解釈されるのです。
 原作や映画で、オプス・デイの司教アリンガローサとヴァチカ
ンの長官を含む幹部が接触するシーンがあります。シナリオで再
現してみましょう。司教はアリンガローサを指します。アリンガ
ローサと受け応えするのは若い幹部です。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 長官:ようこそ、司教。会議を始めるとしよう。
 ――長官以外の4人はいっせいに答える。
 4人:父と子と聖霊の名において。
 長官:どんな話かね。
 司教:既にお伝えしましたが、金額は―――
 幹部:ヴァチカンの無記名債権で2000万ユーロ。高い手数
    料ですね、司教
 司教:いろいろ手を尽くさなければなりませんから。それに自
    由には大きな代償が伴うものです。
 幹部:あなたがそれを与えてくれるというわけですか。
 司教:私は人々の信仰を取り戻す手段を提供するだけです。
 幹部:何とも謙虚な―――
 長官:君の依頼に応ずるとして、この計画はいつから始めるの
    かね。
 司教:実は今夜です。すでに始まっています。わたしは口だけ
    の人間ではありません。行動で表します。ヴァチカンが
    教会法を緩めようとするのは、神を敬わない卑怯な行為
    です。キリスト教の神髄が踏みじみられているために、
    毎日どれだけの血が流されるのでしょうか。
 ――アリンガローサはグラスのワインを古い木製のテーブルに
 ぶちまける。
 司教:それも終わります。今夜、聖杯がもたらされます。今夜
    キリスト教の王座が聖化されるのです。
 ――アリンガローサは熱のこもった目で全員を見直す
 司教:「導師」とのみ名のる人物から接触を受けました。この
   議会のことをよく知っている男です。シオン修道会のこと
   も―――。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 映画にこういう会話のシーンがあるのですが、流して聞いてし
まうと、何のことかさっぱりわからないと思うのです。ちなみに
会談が行なわれている場所はカステル・ガンドルフォ――ローマ
教皇の避暑用の山荘のあるイタリア共和国ラツィオ州ローマ県の
地名。ヴァチカンの長官とオプス・デイの司教が何やら取引して
いる感じです。    ・・・[ダ・ヴィンチ・コード/06]


≪画像および関連情報≫
 ・アリンガロ−サの名前に隠された意味
  ―――――――――――――――――――――――――――
  アリンガロ−サを「アリンガ・ローサ」と区切って読むと、
  イタリア語で「赤いニシン」、英語の「レッド・ヘリング」
  という意味になる。「レッド・ヘリング」とは、ミステリー
  小説において「読者の注意をほかにそらす仕掛け」のことで
  あるが、確かにアリンガローサやシラスの存在がこの小説を
  複雑なものにしているのは確かである。
  http://shizuoka.cool.ne.jp/littlewonder/consideration5.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

オプス・デイとヴァチカンとの会談.jpg
posted by 管理者 at 03:48| Comment(0) | TrackBack(0) | ダ・ヴィンチ・コード | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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