2008年11月11日

●クリントンの裏切りとシオニストの反発(EJ第1832号)

 1993年1月9日付の「インターナショナル・ヘラルド・ト
首席リビューン」には、次の見出しが出ています。
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  ユダヤ人団体、クリントンの対イスラエル政策に懸念!
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 1993年1月といえばクリントン政権発足と同時です。クリ
ントン大統領が政権の人事について、必ずしもシオニスト系の人
物を要職に指名しないことが明らかになってきたので、ユダヤ/
シオニスト組織から猛烈な反発が出ており、こういう記事が出た
ものと思われます。はっきりいって、シオニスト派にとって、そ
れほどクリントンの裏切りはひどいものだったのです。
 EJ第1830号でご紹介した藤井昇氏の本を精読すると、政
権外部からはとうてい窺い知ることはできない人事の詳細が記述
されています。ロックフェラー財閥によって代表される米財界保
守本流によるクリントン政権の換骨奪胎の様子が、政権発足当初
からはじまっていたことがわかります。
 1993年5月に、次の人事が発表されています。
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   ステファノポロス首席報道官の解任・降格
   デヴィット・ガーゲン、ホワイトハウス補佐官に就任
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 ステファノポロス首席報道官はギリシャ系のシオニスト色の強
い人物だったのです。当時、米財界保守本流はトルコを経由して
中央アジアのイスラム教圏の経済開発に力を入れていて、親トル
コだったのですが、トルコとギリシャは伝統的に敵対関係にあり
ギリシャはシオニスト派と結びついていたのです。
 ホワイトハウス入りしたデヴィット・ガーゲン補佐官は、ニク
ソン、フォード、レーガンの3代の共和党大統領に仕えた経験が
あり、筋金入りの保守本流の人物です。このガーゲンのホワイト
ハウス入りを契機に彼は実務上の権力の中枢を握り、ホワイトハ
ウスを仕切るようになっていったのです。このようにして、大統
領を支えるスタッフまでが、ロックフェラー財閥系のスタッフに
よって入れ替えられていったのです。
 このようにして、シオニスト派によって本丸を固めたはずのク
リントン政権は保守本流の勢力によって換骨奪胎され、変質を遂
げていったのです。その変質ぶりが一番よくわかるのは、NAF
TA/北米自由貿易協定の取り扱いなのです。
 もともと民主党の経済政策は一国繁栄主義――経済ナショナリ
ズムの管理貿易主義のはずです。したがって、NAFTAに関し
ては、ほとんどの議員が反対を表明していたのです。
 北米自由貿易協定/NAFTAは、アメリカ、カナダ、メキシ
コの3国間で自由に貿易をしようという協定です。ブッシュ政権
の末期の交替期の1922年12月に署名され、1994年1月
1日から発効しています。NAFTA成立以降、域内の貿易は拡
大し、特にメキシコの発展に伴いアメリカとメキシコの貿易が大
幅に拡大しています。
 それでは、民主党はどうして反対したのでしょうか。
 それは、民主党が経済政策に関しては保護主義/管理貿易派で
あったことと、メキシコというカトリックとスペイン語の国をど
う見るかという根本的な問題がそこにあったからです。とくに反
対の先頭に立ったのは、民主党のロス・ペローだったのです。
 NAFTAに関しては、政府間の調印は終わっていたのですが
議会の批准が済んでいなかったのです。クリントンは大統領選に
おいては、もちろん「NAFTA反対」を掲げて選挙戦に臨んで
いたのです。
 そういう状況のなかで、当のロス・ペローと副大統領のゴアと
の間でテレビ討論が行われたのです。そのとき、米国民はクリン
トン政権の変質ぶりに驚いたのです。というのは、選挙のときは
ロス・ペローよりもシオニスト寄りで保護主義者だったゴアが
NAFTAを堂々と援護したからです。
 1993年11月20日、NAFTAは批准されます。このと
きクリントン大統領は自ら一人ひとりの議員の説得に当たるなど
して、法案可決に全力を上げたのですが、クリントン政権の民主
党は、上院でも下院でも反対票が賛成票を上回ったのです。
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  ≪民主党≫        ≪共和党≫
      賛成   反対       賛成   反対
  上院  27   28   上院  34   10
  下院 102  156   下院 132   43
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 こうしたクリントン大統領の変質ぶりを見せつけられたシオニ
スト派は、1993年後半には反撃に転じます。1993年12
月20日を境にして、クリントン夫妻が不動産投資にからんで選
挙資金を不正融資したのではないかという、いわゆる「ホワイト
ウォーター・スキャンダル」が、ニューヨーク・タイムズ紙上に
登場してくるのです。
 このスキャンダルによる「クリントン・バッシング」は、19
94年に入って一層激しくなるのです。クリントンはシオニスト
の支援を受けて大統領に当選したにもかかわらず、当選後は、米
財界保守本流派に鞍替えした裏切り者であり、シオニスト派のメ
ディアは一斉にクリントンを攻撃したのです。
 このように、クリントンは大統領ではあるけれども、実際に国
を動かしているのは、ロックフェラーを中心とする米財界保守本
流のスタッフなのです。藤井昇氏は、米国の大統領職について次
のようにいっています。
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 アメリカ大統領職とは、しょせん、アメリカ財界政治部の一要
 職にすぎないということである。――藤井昇著、「ロックフェ
          ラー対ロスチャイルド」より。徳間書店刊
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
            ・・・[秘密結社の謎を解く/06]


≪画像および関連情報≫
 ・NAFTA/北米自由貿易協定
  加盟国間の関税を10年から15年の間に撤廃すること、金
  融や投資を自由化すること、知的所有権の保護を図ることな
  どを目指し、1992年12月に調印され、1994年1月
  に発効。NAFTAは約4億人の消費者を持ち、ヨーロッパ
  経済地域に次ぐ世界第二位の自由貿易地域を形成している。
  しかし、当初から、カナダやメキシコにおける環境、労働、
  人権などが、米国企業によって犠牲になることが懸念され、
  環境保護団体や労働組織など多方面から反対の声が挙がって
  いる。1994年1月1日の協定発効日には、先住民の多い
  メキシコ南部チアパス州で、NAFTAに反対してサパティ
  スタ民族解放軍が武装蜂起している。

ロス・ペロー/アルバート・ゴア.jpg
posted by 管理者 at 03:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 秘密結社の謎を探る | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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