いて述べていくことになりますが、そこにはNASAやJPLの
虚々実々の駆け引きがあり、話がかなり複雑になっています。そ
こで、もう少し前提条件について述べておくことにします。
そもそもマーズ・オブザーバーからはじまる米国の火星探査の
目的は、表面上は気象学的、地誌学的調査などのもっともらしい
目的がついているものの、実はシドニア地区の人面岩などの調査
に絞られているのです。
それも尋常の力の入れ方ではなく、巨費を投入して数多くの探
査機を火星に送り出しているのです。1992年9月打ち上げの
マーズ・オブザーバーから数えて、実に8機を火星に送っている
のです。
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打上年 成否
マーズ・オブザーバー 1992 失敗
マーズ・グローバル・サーベイヤー 1996 成功
マーズ・パスファインダー 1996 成功
マーズ・クライメートオービター 1998 失敗
マーズ・ポーラーランダー 1999 失敗
マーズ・オデッセイ 2001 成功
スピリット 2003 成功
オポチュニティ 2003 成功
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しかし、世間では「火星の人面岩」などというと、何かいかが
わしいもの、妄説としてとらえられています。UFOと同じ扱い
で、まともな新聞・雑誌では一切取り上げられていないのです。
これは、NASAの徹底的な情報操作がもたらしたもので、当
のNASAはシドニア地区の異常構造物について、巨費を投じて
調査を続けているのです。
現在、火星の情報の99%は米国に握られています。しかし、
唯一、2003年6月2日に打ち上げられたヨーロッパ宇宙機関
(ESA)の火星探査機「マーズ・エクスプレス」が火星の周回
軌道に乗ることに成功しているのみで、過去の探査船はすべて失
敗しているのです。
このESAのマーズ・エクスプレスは、軌道周回機と着陸機で
ある「ビーグル2」によって構成されているのですが、ビーグル
2は、2003年12月12日に火星への着陸に失敗しているの
です。ロシアにいたっては、ソ連時代に15回、ロシアになって
1回、計16回火星に探査機を出しているのですが、ことごとく
失敗しているのです。どこか、異常だと思いませんか。
NASAとJPLの関係については、2月28日のEJ第15
41号で述べましたが、もう少し詳しく述べることにします。
JPLにあってNASAにないもの――それは「DSNシステ
ム」というものです。DSNというのは、ディープ・スペース・
,ネットワーク/深宇宙電信網の略です。
ここで宇宙開発におけるNASAとJPLの役割分担について
知っておく必要があります。スペースシャトルを例にとって説明
しましょう。
スペースシャトルの場合、打ち上げおよび着陸は、「ケープカ
ナベラル宇宙センター」で行われます。しかし、打ち上げ直後か
ら着陸直前までは、「ゴダード宇宙センター」が直接管理するこ
とになっています。
ゴダード宇宙センターには、STDN――スペースフライト・
トラッキング・アンド・データ・ネットワークと呼ばれるシステ
ムがあります。ここはNASAのNASCOM――コミュニケー
ション・システムの中枢であり、パイロットの健康状態からエン
ジンの調子まで、すべての情報はSTDNを通してヒューストン
の本部に送られるのです。
ここまではNASAの担当ですが、ロケットが地球の衛星軌道
を離れ、惑星間航行に入るとNASAからJPLに管理が移され
るのです。そこからは、JPLのDSNシステムがデータを収集
し、分析をするのです。ボイジャーやパイオニア、それにガリレ
オといった探査機の映像は、すべてがJPLのDSNシステムに
よって解析されているわけです。つまり、このDSNシステムが
ある以上、NASAはJPLに依存せざるを得ないわけです。
DSNシステムはNASAの歴史よりも古いのです。1950
年代において、JPLは米国陸軍と契約を結んだのですが、その
さいにミサイルの飛行情報管理システムとして開発したものが、
DSNシステムの基礎となったのです。
それ以来、50年以上かけて改良が加えられ、数億キロかなた
にある複数の探査機を同時に遠隔操作でき、送信されてきた莫大
なデータをきわめて短時間で処理するという驚くべきシステムに
変貌を遂げているのです。
なお、DSNシステムを支えるパラボラアンテナは、直径63
メートルもある巨大なもので、次の地域に設置されています。
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カルフォルニア州ゴールド・ストーン
スペイン/マドリッド
オーストラリア/キャンベラ
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NASAは軍事機関であることを理由にJPLに対して圧力を
かけ、データの隠匿や改ざんを要求するのですが、JPLはこれ
に反発し、表面上は従うフリをして、重要データを無修正でイン
ターネットで流したりするのです。シドニア地区の情報もこのよ
うにして外に流出したのです。既出のリチャード・ホーグランド
も、JPLから情報をもらっていたといわれています。
NASAは、JPLがこのように深く介在するシステムでは、
情報の流出は防げないとして、非常手段に打って出たのです。そ
れは、JPLとは別のDSNシステムを構築し、秘密のコントロ
ール・センターを設置することだったのです。
・・・[火星の研究/23]
≪画像および関連情報≫
・ソ連の火星探査計画失敗の軌跡(年号は打上日)
名前なし ・・・・・・ 1960.10.10
名前なし ・・・・・・ 1960.10.14
名前なし ・・・・・・ 1962.10.24
マルス1 ・・・・・・ 1962.11. 1
名前なし ・・・・・・ 1962.11. 4
ゾンド2 ・・・・・・ 1964.11.30
コスモス419 ・・・ 1971. 5.10
マルス2 ・・・・・・ 1971. 5.19
マルス3 ・・・・・・ 1971. 5.28
マルス4 ・・・・・・ 1973. 7.21
マルス5 ・・・・・・ 1973. 7.25
マルス6 ・・・・・・ 1973. 8. 5
マルス7 ・・・・・・ 1973. 8. 9
フォボス1 ・・・・・ 1988. 7. 7
フォボス2 ・・・・・ 1988. 7.12
マルス96 ・・・・・ 1996.11.16/ロシア