2008年08月07日

●JPLにあってNASAにないもの(EJ第1544号)

 これから火星のテーマは、その地表にあるとされる人面岩につ
いて述べていくことになりますが、そこにはNASAやJPLの
虚々実々の駆け引きがあり、話がかなり複雑になっています。そ
こで、もう少し前提条件について述べておくことにします。
 そもそもマーズ・オブザーバーからはじまる米国の火星探査の
目的は、表面上は気象学的、地誌学的調査などのもっともらしい
目的がついているものの、実はシドニア地区の人面岩などの調査
に絞られているのです。
 それも尋常の力の入れ方ではなく、巨費を投入して数多くの探
査機を火星に送り出しているのです。1992年9月打ち上げの
マーズ・オブザーバーから数えて、実に8機を火星に送っている
のです。
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                   打上年     成否
 マーズ・オブザーバー       1992     失敗
 マーズ・グローバル・サーベイヤー 1996     成功
 マーズ・パスファインダー     1996     成功
 マーズ・クライメートオービター  1998     失敗
 マーズ・ポーラーランダー     1999     失敗
 マーズ・オデッセイ        2001     成功
 スピリット            2003     成功
 オポチュニティ          2003     成功
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 しかし、世間では「火星の人面岩」などというと、何かいかが
わしいもの、妄説としてとらえられています。UFOと同じ扱い
で、まともな新聞・雑誌では一切取り上げられていないのです。
 これは、NASAの徹底的な情報操作がもたらしたもので、当
のNASAはシドニア地区の異常構造物について、巨費を投じて
調査を続けているのです。
 現在、火星の情報の99%は米国に握られています。しかし、
唯一、2003年6月2日に打ち上げられたヨーロッパ宇宙機関
(ESA)の火星探査機「マーズ・エクスプレス」が火星の周回
軌道に乗ることに成功しているのみで、過去の探査船はすべて失
敗しているのです。
 このESAのマーズ・エクスプレスは、軌道周回機と着陸機で
ある「ビーグル2」によって構成されているのですが、ビーグル
2は、2003年12月12日に火星への着陸に失敗しているの
です。ロシアにいたっては、ソ連時代に15回、ロシアになって
1回、計16回火星に探査機を出しているのですが、ことごとく
失敗しているのです。どこか、異常だと思いませんか。
 NASAとJPLの関係については、2月28日のEJ第15
41号で述べましたが、もう少し詳しく述べることにします。
 JPLにあってNASAにないもの――それは「DSNシステ
ム」というものです。DSNというのは、ディープ・スペース・
,ネットワーク/深宇宙電信網の略です。
 ここで宇宙開発におけるNASAとJPLの役割分担について
知っておく必要があります。スペースシャトルを例にとって説明
しましょう。
 スペースシャトルの場合、打ち上げおよび着陸は、「ケープカ
ナベラル宇宙センター」で行われます。しかし、打ち上げ直後か
ら着陸直前までは、「ゴダード宇宙センター」が直接管理するこ
とになっています。
 ゴダード宇宙センターには、STDN――スペースフライト・
トラッキング・アンド・データ・ネットワークと呼ばれるシステ
ムがあります。ここはNASAのNASCOM――コミュニケー
ション・システムの中枢であり、パイロットの健康状態からエン
ジンの調子まで、すべての情報はSTDNを通してヒューストン
の本部に送られるのです。
 ここまではNASAの担当ですが、ロケットが地球の衛星軌道
を離れ、惑星間航行に入るとNASAからJPLに管理が移され
るのです。そこからは、JPLのDSNシステムがデータを収集
し、分析をするのです。ボイジャーやパイオニア、それにガリレ
オといった探査機の映像は、すべてがJPLのDSNシステムに
よって解析されているわけです。つまり、このDSNシステムが
ある以上、NASAはJPLに依存せざるを得ないわけです。
 DSNシステムはNASAの歴史よりも古いのです。1950
年代において、JPLは米国陸軍と契約を結んだのですが、その
さいにミサイルの飛行情報管理システムとして開発したものが、
DSNシステムの基礎となったのです。
 それ以来、50年以上かけて改良が加えられ、数億キロかなた
にある複数の探査機を同時に遠隔操作でき、送信されてきた莫大
なデータをきわめて短時間で処理するという驚くべきシステムに
変貌を遂げているのです。
 なお、DSNシステムを支えるパラボラアンテナは、直径63
メートルもある巨大なもので、次の地域に設置されています。
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      カルフォルニア州ゴールド・ストーン
      スペイン/マドリッド
      オーストラリア/キャンベラ
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 NASAは軍事機関であることを理由にJPLに対して圧力を
かけ、データの隠匿や改ざんを要求するのですが、JPLはこれ
に反発し、表面上は従うフリをして、重要データを無修正でイン
ターネットで流したりするのです。シドニア地区の情報もこのよ
うにして外に流出したのです。既出のリチャード・ホーグランド
も、JPLから情報をもらっていたといわれています。
 NASAは、JPLがこのように深く介在するシステムでは、
情報の流出は防げないとして、非常手段に打って出たのです。そ
れは、JPLとは別のDSNシステムを構築し、秘密のコントロ
ール・センターを設置することだったのです。
                ・・・[火星の研究/23]


≪画像および関連情報≫
 ・ソ連の火星探査計画失敗の軌跡(年号は打上日)
  名前なし ・・・・・・ 1960.10.10
  名前なし ・・・・・・ 1960.10.14
  名前なし ・・・・・・ 1962.10.24
  マルス1 ・・・・・・ 1962.11. 1
  名前なし ・・・・・・ 1962.11. 4
  ゾンド2 ・・・・・・ 1964.11.30
  コスモス419 ・・・ 1971. 5.10
  マルス2 ・・・・・・ 1971. 5.19
  マルス3 ・・・・・・ 1971. 5.28
  マルス4 ・・・・・・ 1973. 7.21
  マルス5 ・・・・・・ 1973. 7.25
  マルス6 ・・・・・・ 1973. 8. 5
  マルス7 ・・・・・・ 1973. 8. 9
  フォボス1 ・・・・・ 1988. 7. 7
  フォボス2 ・・・・・ 1988. 7.12
  マルス96 ・・・・・ 1996.11.16/ロシア

DSNパラボラアンテナ.jpg
posted by 管理者 at 03:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 火星の研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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