はフォボス2号が通信を絶つ直前に写した写真なのです。確かに
巨大な楕円の影が見えます。これを未確認飛行物体と見るか、単
なる影とみるかは微妙なところです。
未確認飛行物体(UFO)があるかどうかの議論は、幽霊がい
るかどうかのそれと同じであり、それを信ずる人はいるといい、
信じない人はアタマから否定する――どっちもどっちなのです。
しかし、フォボス2号喪失事件ではソビエトを中心に世界中の科
学者がマジでこの問題を議論したのです。
スペインの新聞「ラ・エポカ」紙が伝えるように、ソビエト常
任宇宙委員会の科学者は、「この影は火星の地表近くを飛行する
何らかの巨大な物体の影が地表に映ったもの」といっています。
しかも、その影の長さは20キロ程度と推定しているのです。も
し、宇宙船であるとしたら、途方もなく巨大な宇宙船ということ
になります。
無人の宇宙探査船が何らかのアクシデントで故障することは珍
しくないことであり、未確認飛行物体から攻撃を受けたとは限ら
ないではないかという意見があります。確かに未確認飛行物体か
ら攻撃を受けたという証拠はないのですが、フォボス2号に関し
てはそれまでの飛行は非常に順調であり、突如として通信が途絶
するようなことは考えられないのです。
多くの情報を収集すると、フォボス2号は通信途絶に陥る直前
に機体の安定を失っていたことがわかっているのです。しかし、
フォボス2号には、その優秀性には定評のある「三軸式安定化装
置」が組み込まれており、よほどのことがない限り、突如として
安定を失うなど考えられないことなのです。
フランスの情報筋は、そのときのフォボス2号の状態を次のよ
うに伝えているのです。
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カリーニングラード・コントロール・センターでフォボス2
号の機体制御を担当していた技師によると、撮影終了時に同機
は信号を送信してきたが、それはまるで、くるくる回るコマか
ら発せられた信号のようだったのである。
――フランスの情報筋
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つまり、フォボス2号はきりもみ状態に陥っていたと考えられ
るのです。安定化装置が故障したのか、それとも何かにぶつかっ
たのか――事故直前までに安定化装置には何も異常はなかったの
で、何らかの外部的な力が加わったのではないかと考えざるを得
ないのです。
この問題を調査するソ連の科学チームは1989年10月19
日号の「ネイチャー誌」において、同計画を技術的側面から報告
しています。その中でフォボス2号がきりもみ状態になったこと
を認め、その原因を制御コンピュータの故障か、あるいは何らか
の物体との衝突と推定しているのです。
しかし、同チームはその時点でのコンピュータの故障は考えら
れず、また、その何らかの物体が宇宙空間に漂う塵である可能性
も否定しています。しかし、宇宙探査船をきりもみ状態にさせる
ことができる物体とは何かという点については「わからない」と
記述しているのです。
もうひとつ、その巨大な楕円形の影は衛星フォボスの影ではな
いかという説があります。単に衛星フォボスの影が火星に投影さ
れただけというわけです。衛星フォボスの大きさは約27キロあ
り、大きさも合致するというわけです。添付ファイルの写真Bが
衛星フォボスの影ですが、確かに楕円形ではあるものの、全体が
ぼやけた感じであるのに対し、写真Aの楕円形は火星表面の照り
返しの中に鮮明に浮き上がっており、明らかに違うのです。だい
いち、そうであるとしたら、フォボス2号はなぜ事故を起こした
のか、ますます謎につつまれることになります。
これらのフォボス2号が撮影した写真をソ連当局は一度に公開
したわけではなく、小出しにしています。関係各国の圧力に負け
てしぶしぶ公開したのです。しかし、一枚だけは今もって公開し
ていないのです。それはなぜでしょうか。何か公開できない事情
が存在するのでしょうか。
この公開しない最後の写真の存在が、逆にフォボス2号の事故
の真相を握っているといえます。フォボス2号は、「あるはずの
ない何か」に衝突し、永遠に失われたということを雄弁に物語っ
ているといえます。
既出のシクロフスキーに代表されるように、ソ連の科学者は衛
星フォボスには何らかのかたちで人為的な力が加わっていると考
えているのです。それには、次の2つの理由によります。
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1.地表に多数の直線的な溝がある
2.巨大な真円のクレーターの存在
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第1は、フォボスの地表を走る多数の溝の存在です。これらの
溝は直線的に、しかもお互いに平行を保ちながら走っている――
このことから少なくとも自然にできたものではないと考えられて
いるのです。溝の幅は、約230〜330メートル、深さは25
〜33メートルと計算されています。もうひとつ奇怪なことにこ
れらの地表に走る溝が増えていることがわかっているのです。大
気も水もないフォボスに溝ができるはずがないのにです。
第2は、衛星の一端に開いた真円のクレーターの存在です。こ
のクレーターの直径はフォボス自身の直径の3分の1におよんで
おり、大きさにしても、真円というかたちからしても、とても自
然に形成されたものとは思えないのです。
加えて、地表のすべての溝がこのクレーターから流れ出たよう
に、もしくは流れ込むようなかたちで走っているのを見ても自然
とはいえないのです。このクレーターは天体の内部に通じる間口
部なのでしょうか。 ・・・[火星の研究/14]
≪画像および関連情報≫
・火星の第一衛星(内側の軌道を回る衛星)で、長軸の直径は
27キロメートルと非常に小さい。1877年にA・ホール
(1829〜1907)によって、もう一つの衛星デイモス
(ダイモスとも言う)とともに発見された。いずれもじゃが
芋に似た形をしており、火星の引力にとらえられた小惑星と
考えられている。1977年、火星探査機ヴァイキング1号
が500キロメートルまで接近して撮影した画像によると、
クレーターの多い岩石の表面をしていることがわかった。ス
ティックニーは最大のクレーターで、火星の直径の1/3を
占める。