2008年07月08日

●火星に行くのに必要な時間を知る(EJ第1523号)

 あなたは火星のことをどのぐらいご存知ですか。
 よくご存知の方もそうでない方もおられると思いますが、これ
からの話を進めやすくするため火星に関して最小限度の知識を整
理しておくことにします。
 火星は地球軌道のすぐ外側をまわる惑星です。つまり、地球の
隣りの惑星なのです。そして火星は、ほぼ2年2ヶ月ごとに地球
に接近してくる身近な惑星といえます。
 なぜ、2年2ヶ月なのでしょうか。それは、地球、火星それぞ
れの軌道を何日かけてひとまわりするかによって決まってくるの
です。ちなみに軌道を一周するとは、太陽の周りをまわる時間で
あり、これを公転周期と呼んでいます。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
       地球 ・・・・・ 365.26日
       火星 ・・・・・ 686.98日
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 この、地球と火星の公転周期の違いが地球と火星の間の距離の
変化を引き起こす原因となるのです。
 地球と火星の公転周期について知っておくと便利なことがあり
ます。それは「衝」(しょう)と「合」(ごう)の2つです。
 地球と火星の軌道は、ともに楕円軌道です。しかし、楕円の度
合いは違いがあり、地球の方が真円に近いのです。しかし、この
ことはあとでもう少し詳しく述べるとして、説明の便宜上、地球
も火星もともに真円であると仮定します。
 太陽が中心にいて、その下の軌道を地球、さらにその下の軌道
を火星が回っているのですが、太陽・地球・火星が一直線に並ぶ
ときがあります。地球と火星が接近するのは、このときです。つ
まり、地球から見て火星が太陽の反対側にあるときです。この位
置に火星があるときを「衝」というのです。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
   ・・・・・・太陽・・・・・・地球・・・・・・火星
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 これに対して、地球・太陽・火星の一直線に並ぶときがありま
す。地球から見て太陽と同じ方向にあるときです。この位置に火
星があるときは「合」と呼ばれるのです。「合」のときは、火星
は地球から一番離れていることになります。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
   地球・・・・・・太陽・・・・・・・・・・・・火星
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 「衝」のときは、地球から見て火星は太陽と反対側にあるので
火星は日没とともに東から昇り、日の出とともに西に沈むことに
なります。つまり、一晩中見えているわけで、「衝」のときは観
測にはきわめて都合がよいことになります。
 これに対して「合」のときは、火星は太陽と同じ方向にあるの
で、地球から見ると、太陽の光に邪魔されて火星はまったく見え
なくなってしまいます。しかも、「合」のときは、火星は地球か
ら一番離れているときであり、観測には最も適していない時期で
あるといえます。
 ここで話を少し前に戻します。地球と火星の軌道の話です。地
球と火星の軌道は真円ではなく、楕円なのです。もっとも地球に
ついては真円に近いので、小さい図を見ると真円に見えてしまい
ます。火星の軌道は地球よりもいびつですが、それほどひどくは
ないのです。(添付ファイル参照)
 地球と火星の軌道が楕円ということになると、2つの軌道の間
隔には、狭いところと広いところが生ずることになります。した
がって、「衝」の起きる場所によって接近の度合いを次のように
いうのです。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
    軌道の間隔のせまいところの衝 ・・・ 大接近
    軌道の間隔の中度のところの衝 ・・・ 中接近
    軌道の間隔のひろいところの衝 ・・・ 小接近
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 このように火星の接近にはいろいろあるのですが、記憶に新し
い2003年8月27日の大接近では、地球との距離が5575
万8000キロにまで近づいたのです。
 「衝」を前提として地球と火星との距離を考えると、次のよう
なります。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
    平均距離 ・・・・・ 8000万キロ
    大接近時 ・・・・・ 5500万キロ
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 人間が歩くスピードを時速5.5キロとすると、大接近時では
1000万時間――1000年以上かかる計算です。しかし、ま
さか歩いて行くことはあり得ないので、車を時速200キロで走
らせると30年弱で火星に到着します。これが音速のマッハ1の
飛行機だと5年――いずれも現実的ではありませんね。
 そこで、ロケットで考えてみます。ロケットが地球の重力圏を
脱出するのに必要な速度は毎秒11.2キロ――これよりも少し
早い速度で宇宙に飛び出すことができれば、火星には約6ヶ月で
到着するのです。まとめておきます。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
     ≪火星に行くのにかかる時間≫
      徒 歩 ・・・・・ 1000年
      車   ・・・・・   30年
      戦闘機 ・・・・・    5年
      宇宙船 ・・・・・   6ヶ月
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 これで思い出すのは、「2001年宇宙の旅」を意識して火星
に向かった2001マーズ・オデッセイです。2001年4月に
打ち上げられ、7ヵ月後には無事に火星の周回軌道に入っている
のです。火星までの距離は約6ヶ月になっているのです。
                ・・・[火星の研究/02]


≪画像および関連情報≫
・公転周期の違いから、約780日の周期で火星は地球に接近す
 るが、接近時の地球との距離は一定ではない。2003年8月
 27日の大接近は、ALPO(月惑星研究会)のシェフリー・
 ビーシュ博士によると、5万7000年ぶりの大接近であると
 いうことである。

火星の地球への接近.jpg
posted by 管理者 at 03:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 火星の研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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