2010年12月01日

●原油高騰とサブプライムローン問題(EJ第2336号)

 2008年5月27日付の日本経済新聞によると、7月の主要
国首脳会議――洞爺湖サミットの前哨戦とされる主要8ヶ国(G
8)環境相会合は5月26日に閉幕したのですが、その会合にお
いて、バイオ燃料を巡って米国とフランスが激しく対立したこと
が報道されています。
 フランスのコシュスコモリゼエコロジー担当相は、次のように
述べて米国のバイオ燃料の生産奨励を批判したのです。
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 先進国の燃料と途上国の食料が競合するのは絶対に受け入れら
 れない。     ――コシュスコモリゼ仏エコロジー担当相
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 さらに、フランスほどはっきりはいわないものの、国連気候変
動枠組み条約のデブア事務局長は、次のように述べて食料である
トウモロコシを使う米国を暗に批判したのです。
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 バイオ燃料の原料にサトウキビを使う場合、トウモロコシより
 生産効率は高い。バイオ燃料には『良い』ものと『悪い』もの
 がある。            ――国連・デブア事務局長
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 これに対して米国務省で環境を担当するハーニッシュ大使は次
のように反論し、聞く耳を持たないという態度です。
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 バイオ燃料用のトウモロコシは世界の食料の中でわずかな割合
 でしかない。           ――ハーニッシュ米大使
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 ところで国連は、この6月の上旬にローマで「食糧サミット」
を開催しますが、その宣言案の骨子は次のようになるとみられて
います。G8の環境相会合のやりとりを反映しているのです。
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 「食糧安全保障への考慮」を強調し、稲わらなど食糧以外の材
 料を使ったバイオ燃料の開発・普及に向け、国際社会の協力を
 呼びかける。    ――2008.5.28/日本経済新聞
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 日本は当初より、穀物価格に影響を与えない食糧以外の材料を
使ったバイオ燃料を推進する方針であり、EUも食糧を原料にし
たバイオ燃料を見直す動きが出てきています。しかし、米国やブ
ラジルは見直しには慎重の構えをとっています。
 ところで、そうしている間にも原油価格は高騰を続けており、
このまま上がり続ける可能性があります。そうなると、世界中で
さまざまな問題が起きる恐れがあります。
 一番重要なことは、例のサブプライムローン問題によって、米
国の金利が下がっていることです。米国の金利が下がるというこ
とは、ドルを持つことの魅力が失われることを意味します。
 したがって、ドル離れ――ドル売りが起こり、ドル安になりま
す。ドル安になると、銀行や市中にドルが供給過剰になって、モ
ノの値段が上がり、インフレが誘発されやすくなります。現在は
まさにそういう状況にあるわけです。
 このような状況になると、今までドルを持っていた人は、他の
通貨に乗り換えたり、または株式などの金融商品、不動産、商品
市場などの他の運用先にマネーの振り替えを行おうとします。こ
の商品市場のなかに原油先物商品があるのです。
 この状況で一番怖いのはインフレですが、原油はインフレに強
い商品なのです。したがって、ドル建て資産の目減りを避けよう
として巨額のマネーが原油先物商品に向かうことは避けられない
動きなのです。
 本来であれば、株式などの金融商品にマネーが流れ込んで、株
式市場が盛り上がってもおかしくないのですが、肝心のお膝元で
ある米国でサブプライムローン問題が起こり、経営に行き詰る企
業が大量に出て、株式市場に混乱を起こしているのです。
 時系列で考えると分かりやすいと思います。まず、金利が下が
り、金融市場が低金利になります。そうすると、マネーはいった
んは株式市場に向かうのです。しかし、市場の混乱によって株安
になり、大損をする可能性が高くなったので、マネーは株式市場
から原油や穀物や資源へ行き先を変更したというわけなのです。
 一方、おりからの原油高でオイルマネーを溜め込んだ中東やロ
シアのファンドは、株価が低迷しているため、その運用先として
米国債の購入に向かっています。資金力のある中東や新興国が米
国債を大量に購入したことによって、米国の長期金利――10年
物国債利回りは自ずと下がることになります。
 ちなみに外貨準備高の世界一は長期的に日本が占めていたので
すが、2007年4月に中国に世界一を奪われて第2位となって
います。外貨準備高で1兆ドルを超えているのは、1位の中国と
2位の日本だけです。
 今までは高金利と原油高は同じ方向に動いていたのですが、最
近では金利の引き下げの一方で、原油高が進むという現象があら
われているのです。
 既に原油価格は生産と供給(需要)というシンプルな関係から
決まる時代は過ぎ去っており、原油価格の形成には明らかに投機
マネーの参入が影響を与えつつあります。すなわち、原油は投機
対象の「市況商品」化しているのです。
 原油価格は今後どうなっていくのでしょうか。
 米国の個人消費は、原油価格の高騰に加えてサブプライムロー
ン問題によって収縮しつつあります。これが影響して米国の景気
は2007年半ば頃から鈍化しているようです。このまま不況に
突入すると、景気低迷の中で物価が上昇する「スタグフレーショ
ン」が起きる恐れもあります。それは日本を含め世界経済に深刻
な影響を与える恐れがあります。
 しかし、米国の景気が減速すると、当然米国の原油の需要は減
ることになるのですが、それによって果たして原油価格が下がる
かどうかは不透明です。    ―― [石油危機を読む/47]


≪画像および関連情報≫
 ●スタグフレーションとは何か
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  通常は物価上昇(インフレーション)と景気後退とはトレー
  ドオフの関係にあると理解されており、フィリップス曲線に
  みられる実証研究によりその有意性には一定の評価がある。
  しかしスタグフレーションでは、景気が悪化するとともにイ
  ンフレーションが進行する。インフレーションは景気回復局
  面で発生すれば雇用や賃金の増加もともなう。デフレーショ
  ンは景気後退局面で発生すれば雇用・賃金は減少するが物価
  は安くなる。しかしスタグフレーションは雇用や賃金が減少
  する中で物価上昇が発生し、貨幣や預貯金の価値が低下する
  ため生活が苦しくなる。       ――ウィキペディア
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G8環境相
posted by 管理者 at 03:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 石油危機を読む | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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