2010年09月01日

●世銀とIMFは財務官僚の巣である(EJ第2375号)

 世界銀行とIMFは拠出金に応じて発言権が決まることになっ
ているのです。その点が国連とは違うわけです。日本の拠出金は
世銀もIMFについても米国に次いで第2位なのです。
 しかし、日本が世銀やIMFにおいて目立って何かをしたかと
いうと、ほとんど何も聞こえてこないし、見えていないのです。
日本はまさに顔のない巨額出資国になっているのです。
 その原因のひとつは、世銀とIMFへの日本のかかわりが年来
財務省の硬直した官僚たちの手に委ねられていることにあると思
うのです。現在、官僚の天下りの問題が問題視されていますが、
世銀やIMFの方にそれが及んでいることに多くの人は気がつい
ていないと思います。外交ジャーナリストの古森義久氏は、次の
ようにいっています。
―――――――――――――――――――――――――――――
  財務官僚たちにとってワシントンは「世界最後の桃源郷」
  である                ――古森義久氏
―――――――――――――――――――――――――――――
 世銀の日本人専門職員百数十人のうち、副総裁、理事、理事代
理、専務理事特別顧問、局長、局次長、多国間投資保証機関(M
IGA)長官――こういった枢要の地位のほとんどは財務官僚に
よって占められているのです。
 IMFでは日本人専門職員43人のうちの14人が財務官僚で
日本人全体の3分の1を占めており、しかも、副専務理事、理事
理事代理などの要職を独占しているのです。
 一般的に考えた場合、財務省や外務省の官僚でワシントン勤務
になる人といえば、英語が堪能なことは当然として、国際政治・
金融経済、外交問題などについて、欧米の大学の修士号や博士号
のレベルが要求されると普通は考えます。一般の日本人が世銀や
IMFに職を求める場合、こういうことが要求されるからです。
 しかし、財務官僚の場合は、この種の条件は満たさなくても、
日本政府の出資金の特権を背景に一定のポストに優先的に就くこ
とができるのです。なかには英語ですら十分に話せなくてもワシ
ントン勤務になる財務官僚も多くいるのです。
 既出の古森義久氏によると、ワシントン勤務になる官僚の派遣
人事には次の2つのパターンがあります。
―――――――――――――――――――――――――――――
  1.若手や中堅の官僚に経験を積ませる目的の派遣
  2.財務省内のベテランの最後のポストとして派遣
―――――――――――――――――――――――――――――
 1については教育と経験ということであるので、英語や知識面
に問題があっても仕方がないと財務省はいうのです。そのため、
1998年から「ブルームズベリー昼食会」という名の会合を作
り、そこで英会話や経済学の研究会をしているのです。
 正規のルートから世銀やIMFに入ろうとする一般の日本人に
は厳しいレベルを求めながら、財務官僚には単なるキャリアパス
のひとつとして平均3年で交代させる――その程度で国際感覚が
身に付くものでしょうか。
 そもそも世銀やIMFに務めながら、英語と経済学の能力が足
りないというのはおかしな話なのです。その英会話や経済の勉強
をワシントンにいながら日本人同士でやるという――周りは外国
人ばかりなのですから、なぜその中に飛び込んで仕事を通じて英
語でも経済でも学ぼうとはしないのでしょうか。
 それでいて3年経って日本に帰ると、世銀○○とかIMF勤務
とかいう箔が付くのです。若くても英語はもちろんのこと、国際
政治にも経済にも通じている若手はたくさんいるはずであり、そ
ういう人をなぜワシントン勤務にしないのか疑問に思います。
 上記2に関しては、形を変えた天下りそのものであり、論外で
す。古森氏は2に関して次のようにいっています。日本で問題を
起こしたので、米国に逃がすというパターンがあるのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 この第2のパターンとしては、1997年に旧大蔵省の金融検
 査をめぐる汚職事件で、戒告処分を受けた元金融検査部管理課
 長の日下部元雄氏がその後すぐ世銀の専務理事顧問に任命され
 99年には財務省のバックアップで副総裁になった。このとき
 は日本人の正規採用職員の間で怒りの声が起きた。
               ――古森義人著、『国連幻想』
                       産経新聞社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 世銀やIMFでの財務省による人事中枢独占の慣行に対し、日
本人正規職員から次のような抗議が出ているのです。こういうこ
とは新聞やテレビはほとんど伝えないのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 大蔵省(財務省)からの出向職員は日本人正規職員にくらべて
 語学力、専門性、倫理観、途上国の開発への熱意などではるか
 に劣る。そのような官僚を資金力をちらつかせて政治的圧力に
 より多数任用することは国際機関での日本人職員全体の評価を
 下げる結果となる。多くの出向官僚は出向期間を長期の休暇と
 勘違いしており、実績次第では常に解雇の危険にさらされてい
 る正規職員とはまったく対照的な存在なのだ。
               ――古森義人著、『国連幻想』
                       産経新聞社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 財務省という特定の官庁が世銀やIMFを独占的に担当し、そ
れらの国際機関の一定のポストがあたかも自省に帰属しているよ
うに定期人事で送り続ける――こんなことを許しているから、巨
額の拠出金を出しながら、日本の顔の見えない国際機関になって
しまっているのです。
 世銀とIMFの人事は速やかに財務省から切り離し、国会での
議論をして、どこに出しても恥ずかしくない優秀な人材を送り込
むべきであると考えます。来週は世銀やIMFについての高名経
済学者の反論を取り上げます。     ―― [金の戦争/34]


≪画像および関連情報≫
 ●国連中心主義の幻想/プログより
  ―――――――――――――――――――――――――――
  戦前、日本は国際連盟にどの国より先駆けて、人種差別法案
  を提出したがあっさりと拒否された経過があり、当時の白人
  優位と帝国主義中心の国連は自国優先のための組織でしかな
  かった。差別的な環境の中で日本は国連を脱退することにな
  る。このような歴史的な過程を経験してきていることは日本
  の政治家たるものにはご存知だろうと推察するが、国連が平
  和を確立する唯一の組織と認めることで果たして良いのかと
  いう疑問である。
 http://morimoto.mo-blog.jp/yutaro/2006/04/post_0bad.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

古森氏の本.jpg
古森氏の本
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2010年09月02日

●スティグリッツの世銀・IMF批判(EJ第2376号)

 「金の戦争」というタイトルで34回書いてきましたが、『日
経ビジネス』/2008.7.21号は、次のタイトルで金を特
集しています。今や「金」は旬の重要な話題なのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
            「ドル凋落/金本位再び」
   ――『日経ビジネス』/2008.7.21号
―――――――――――――――――――――――――――――
 ジョセフ・スティグリッツという米国の高名な経済学者がいま
す。彼は、1993年3月、発足後間もないクリントン政権の大
統領経済諮問委員会の委員に任命され、1995年6月には同委
員会の委員長に就任したのです。
 そして、1997年には世界銀行に移り、2000年1月まで
の3年間、世銀の上級副総裁と主任エコノミストを同時に務めた
のですが、世銀在職中から当の世銀とIMFのあり方について痛
烈な批判を繰り広げたのです。
 何しろ、スティグリッツは、2001年には情報経済学という
新分野での業績で、ジョージ・アカロフ、マイケル・スペンスと
共にノーベル賞を受賞したので、彼による世銀とIMFの批判は
国際的な注目を浴びることになったのです。
 2002年には、スティグリッツは『グローバリズムとその不
満要因』という本を米国で出版し、公式に世銀・IMF――とく
にIMF批判を展開したのです。この本の日本語版は次の題名で
出版されています。
―――――――――――――――――――――――――――――
        ジョセフ・スティグリッツ著/鈴木主税訳
 『世界を不幸にしたグローバリズムの正体』/徳間書店刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 スティグリッツは、この本のなかで、IMFの推し進めた資本
市場の自由化は、米国の金融セクターのために広範な市場の開拓
に寄与した反面、その本来の使命であるはずのグローバルな経済
の安定には何ら寄与しなかったとしています。さらにIMFは、
G7の債権国の代理者であるとし、貧しい国々が貧しいままであ
るような制度設計をした米国の金融セクターに対する不満を表明
しているのです。
 世銀やIMFは、開発途上国の経済開発に対し、貿易の自由化
資本の自由化、国内の経済の自由化、民営化などのグローバルな
市場経済至上主義を押し付けたのです。すなわち、構造改革とい
う改革の強要が行われたのです。
 しかし、開発途上国にとっては、貿易の自由化による市場開放
は、国際競争力のない産業分野に壊滅的な打撃を与え、雇用体系
を破壊し、資本の自由化は銀行システムが機能していない途上国
に大混乱をもたらしたのです。
 1997年のアジア金融危機でもIMFは被害国の救済に「構
造調整融資」と称して過激な改革と自由化の措置をとることを条
件に融資を行っています。しかし、こうした自由化の押し付けは
無理が多く、かえって被害国の経済を壊してしまう結果になって
いる――スティグリッツはこのように主張しているのです。
 日本は途上国ではないし、もちろんIMFから融資など受けて
いませんが、同じようなことを米国から押し付けられ、やらされ
ていないでしょうか。いわゆる小泉――竹中改革なるものは、ま
さにこのグローバリズムの先兵であるといえます。スティグリッ
ツはこういうやり方を批判しているのです。
 また、スティグリッツは、アジア的とされる日本の縁故主義や
不透明な企業統治についても頭から否定せず、その効用を認め、
当時日本の大蔵省が提案してすぐ米国に潰された「アジア通貨基
金」の発想にも賛意を表しており、日本についてはとても理解が
あるのです。
 スティグリッツは前掲書を書くにあたって、多くの学者や世銀
とIMFの関係者などに聞き取り調査をしているのですが、この
書の「謝辞」のところで、「それらの人たちの助けなしにはこの
本は完成しなかった」として、その氏名をリストアップしている
のです。
 最初はビル・クリントン大統領とジム・ウォルフェンソン世銀
総裁の名前があり、その他に163人の学者、官僚、政治家、言
論人、世銀・IMF職員などの名前が上がっているのです。
 しかるに、その163人中日本人はたったの1名しか上がって
いないのです。それも世銀やIMFとは直接何の関係もない、ス
タンフォード大学での同僚だった青木昌彦氏だけだったのです。
 どうしてこのようなことになるのでしょうか。どうやらスティ
グリッツは、日本人のスタッフとは聞き取り調査すらしていない
のです。これについて、日本人のベテラン正規職員は次のように
見解を述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 スティグリッツ氏が日本側の代表からはまったく話を聞いてい
 ないということは、世銀やIMFの政策討議の場では日本代表
 がまったく重視されていない、プレゼンスがない、ということ
 だといえる。日本代表はイコール財務官僚だから、やはり官僚
 主導の日本のアプローチは国際経済・金融機関の世界では、ほ
 とんど認められていないわけだ。他の主要国はみなトップには
 開発や金融に一家言を持つ学者や論客を送り込んでいる。
        ――古森義人著、『国連幻想』/産経新聞社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 確かに世銀やIMFに派遣されてから、ワシントンで仲間内で
英語や経済学を勉強しているようでは、政策会議でプレゼンスな
どできるわけはないのです。
 金の話と少し離れましたが、世銀やIMFにおける日本人代表
のお粗末な一面を古森義人氏の情報を借りてご紹介しました。か
つて財務官僚といえば、秀才の代名詞であったはずですが、どう
なっているのでしょうか。これでは日本の評価がどんどん下がっ
てしまいます。            ―― [金の戦争/35]


≪画像および関連情報≫
 ●大野和基氏のサイトより
  ―――――――――――――――――――――――――――
  「グローバリゼーションは世界の人々に幸福をもたらすはず
  だった。だが、実際にはごく少数の金持ちがますます裕福に
  なって、格差を広げただけだった。そしてこういう結果を招
  いた背景にはアメリカの横暴がある」――2001年、経済
  活動への情報の影響について扱う学問「情報の経済学」の分
  野の功績を評価されて、ノーベル経済学賞を受賞したジョセ
  フ・E・スティグリッツ氏は、グローパリゼーションの「失
  敗」と、その「理由」についてこう説明した。
   http://globe-walkers.com/ohno/interview/stiglitz.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

ジョセフ・スティグリッツ.jpg
ジョセフ・スティグリッツ
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2010年09月03日

●なぜ金は20年間下がり続けたのか(EJ第2377号)

 1980年1月の「1オンス=850ドル」の最高値をつけた
金は、その後実に20年間にわたって下がり続けるのです。
 1982年から普通株式が上昇相場に転じます。そして、ダウ
・ジョーンズ指数は800ポイントから1万1000ポイントま
で実に140%も上昇します。
 その後、1987年10月の暴落を経験したものの、FRBの
ポール・ボルカー議長の積極的な金融政策によって、株価は間も
なく復調するのです。
 このポール・ボルカーFRB議長――金が史上最高値をつけた
1979年に就任したのです。1981年には米国のインフレ率
は頂点に達したのですが、その14%のインフレ率を3〜4%に
下げることに成功しているのです。さらに債券利回りも長期国債
はピーク時の15%から6%を割り込む水準に安定させるなどの
手腕を発揮し、1987年に後任のアラン・グリーン・スパンに
FRB議長を譲っています。
 それでは、金価格はなぜ低下したのでしょうか。その原因とし
ては、一般的には次の5つが上げられています。
―――――――――――――――――――――――――――――
     1.各国の金融機関が金を売却したこと
     2.世界経済がデフレ経済になっている
     3.株式市場が好調で、金より魅力あり
     4.各国中央銀行による金売却と貸出し
     5.金保有者の人口動態が変化している
―――――――――――――――――――――――――――――
 3番目の「株式市場が好調で、金より魅力あり」――一面の真
理を衝いていますが、これは金融緩和のように株価上昇をもたら
す政策の結果でもあるのです。それなら、金融緩和によって信用
膨張が起こり、普通であれば金の価格を押し上げてもいいのに下
がっているのはどういうことなのでしょうか。
 5番目の「金保有者の人口動態が変化している」――これは、
金に投資するのは比較的年配者が多いのですが、そういう人たち
が亡くなると、相続人は金を売却してしまう現象のことをいって
いるのです。
 一番説得力があるように見えるのは、4番目の「各国中央銀行
による金売却と貸出し」です。なかでも衝撃的であったといえる
のは、1997年11月にスイス国立銀行がその膨大な金準備を
売り出したことです。それに続いて1999年にイングランド銀
行も保有する金の大部分を売却してその資金を外国債の購入に充
当すると発表しています。
 スイスの金売却のニュースが流れた時点の金価格は386ドル
――当時各国の中央銀行やIMF、BIS(国際決済銀行)など
の公的機関の保有する金準備は3万4726トンであったので、
その資産価値は4160億ドル相当となります。
 その翌日、金価格は376ドルに下落するのです。これによっ
て、110億ドル以上の評価損が発生したことになりますが、そ
の後も金価格は回復することはなく、290〜300ドルの水準
まで下落したのです。
 しかし、1999年末時点における全世界の通貨当局の金準備
を合計すると、3万3500トンであり、1997年当時と比べ
てもほんの少ししか減っていないのです。
 その理由は、スイス国立銀行やイングランド銀行が売却した金
は、そのほとんどを他の中央銀行が買い取っていたからです。し
たがって、各国の中央銀行から金が逃避したことが金の価格下落
の原因であるとはとても思えないのです。
 といっても、50年前には世界の金の70%は中央銀行にあっ
たのですが、現在ではそれが25%未満に減っているのです。そ
うであると、中央銀行が金市場の動向――たとえば価格に与える
影響もそれに比例して少なくなっているはずであって、中央銀行
主犯説には疑問が残るということになります。
 それでは、何が原因で金価格は下落を続けたのでしょうか。
 7月9日のEJ第2363号でご紹介したフェルディナント・
リップスと、司会者のジム・パプラバとのラジオでのやりとりで
このことが語られています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ジム:1990年代には金に対する需要が盛り上がりました。
  需要は新規供給を上回りましたが、それでも価格は下がり続
  けました。なぜそのようなことが可能だったのでしょうか。
 リップス:それが可能だった理由は、ウォール・ストリートの
  利口な投資銀行家たちが、金相場が弱気におちいっている時
  期に金を使って利益を稼ぐ方法を考え出したことにある。彼
  らは、いわゆる「金キャリートレード」を開発した。この取
  引では、中央銀行がブリオンバンクに金を貸し、今度はブリ
  オンバンクがその金を売却して高利回りの米国財務証券を購
  入した。新しいビジネスが始まった。金鉱山会社も金を先物
  で売るよう説得された。そのようにして金市場には常に圧力
  がかかるようになった。しかし、中央銀行にも売却に向けて
  圧力がかかっていた。
 ――鬼塚英昭著、『日経新聞を死ぬまで読んでも解らない/金
              の値段の裏のウラ』/成甲書房刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 ブリオンバンクについて説明をする必要があります。直訳する
と「金地金銀行」となります。金などの貴金属を扱う銀行のこと
をブリオンバンクというのです。
 しかし、日本の銀行は法令上貴金属の取引は禁止されていて、
商社がブリオンバンクの業務をしているのです。ブリオンバンク
の収入源は取引仲介手数料ですが、そのうちブリオンバンクは金
鉱山のヘッジや中央銀行からの金借り出しの仕事に手を出すよう
になったのです。ブリオンバンクは貸し出された金を売却し、そ
のドルで米国財務省証券などを購入したとリップスはいっている
のです。               ―― [金の戦争/36]


≪画像および関連情報≫
 ●TOCOMナビ/金の特徴
  ―――――――――――――――――――――――――――
  過去6000年以内に人類が産出した金の総量は約15万2
  000トンと推定され、そのうち約15%が消失したとされ
  ています。現在地上に存在する金は推定約12万9000ト
  ンで、これは50メートルのオリンピック・プール3杯分し
  かありません。世界の埋蔵量は9万トンと推定されています
  が、経営面で採算が取れるのはそのうち4万2000トンで
  年間2500トン採掘すると20年もたたないうちに枯渇す
  ることとなります。海底などに未発見の鉱床があるとみられ
  ますが、新規の産出が見込めなくなれば、地上在庫を再利用
  するしかなくなり、金の希少価値はさらに高まるとみられま
  す。       http://www.tocom-navi.com/guide/gold/
  ―――――――――――――――――――――――――――

金価格の推移.jpg
金価格の推移
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2010年09月06日

●バリック・ゴールド社の疑惑の金取引(EJ第2378号)

 1980年から2000年までの20年間――この期間におい
て砲弾もミサイルも飛ばないが、すさまじい金の戦争があって、
勝者と敗者が出たのです。しかし、この20年間は金価格はなぜ
か下がり続けたのです。
 このように金価格が下がり続けるということをあらかじめ知っ
ていたかのように、金価格を操作して膨大な利益を上げた産金会
社があります。バリック・ゴールド社という会社です。
 もし、バリック・ゴールド社が何らかの事情で今後金価格は下
落を続けるということがわかっていたとします。バリック・ゴー
ルド社は産金会社ですから、一年後に生産する予定量の金、ある
いは2年後に生産する予定量の金、さらには3年後に生産する予
定量の金について、その総額を大量に金の現物を持っている機関
――各国の中央銀行など――に働きかけて、金利を払って金を
借り出すのです。
 そして、その金を先物市場で現在の価格――以後は下がり続け
るのですから高値――で売却するのです。そして、1年後、2年
後、3年後にはそれぞれ実際に生産した金で返済する。そうすれ
ば大儲けができるのです。実際にバリック・ゴールド社はそうや
って大儲けをしているのです。
 それなら、バリック・ゴールド社は、金が以後は下がり続ける
ということをどうやって知ったかということです。きな臭いこと
に、バリック・ゴールド社の国際諮問委員会委員長がブッシュ元
大統領(パパブッシュ)――現在は退任――であったことです。
 リップスは、バリック・ゴールド社のこのやり方について次の
ように書いています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 バリックが考えついたヘッジ自体は素晴らしいアイデアであっ
 た。ヘッジ取引によって金鉱山業界は経済界で唯一、自力で債
 務の沼からはい出せる産業になったのである。だが、バリック
 の年次報告書、とくにその1994年、1995年および19
 96年版に記載されているヘッジに関する方針は、厳密に言う
 とヘッジではなく、投機行為である。というのも、金価格は、
 1968年以降に何度か急騰したが、今後はそのような急騰も
 かつての価格帯に戻ることもあり得ないということに、バリッ
 クは賭けていたからである。
   フェルディナント・リップス著/大橋貞信訳/徳間書店刊
   『いまなぜ金復活なのか/やがてドルも円も紙屑になる』
―――――――――――――――――――――――――――――
 もともと金鉱山会社には単純な先物取引はあったのです。仮に
金鉱山会社が1オンスの金を生産するときのコストが300ドル
だったとします。そこで金鉱山会社は300ドルのコストに利益
分を上乗せして350ドルの先物契約を結ぶのです。そして期限
がくると、350ドルで金塊を売るという取引です。
 しかし、このバリック・ゴールド社の「先売りヘッジ」はリッ
プスもいうように、投機そのものであり、しかも投資家に対して
うその報告をしていたのです。その報告とは次の通りです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 新たに生産した金地金を市場価格よりも高い価格で評価するこ
 とで、実際より大きな利益を上げてきている。
         ――バリック・ゴールド社の投資家への報告
―――――――――――――――――――――――――――――
 実はこれは事実ではないのです。バリック・ゴールド社は、低
い利率で長期間借り入れた金を売却し、それで得られた資金を今
度は高利回りの米国財務省証券に投資したのです。そして、その
受取り利息のおかげで、増大した利益をあたかも金を高値で売却
した結果であるように報告していたのです。
 なぜ、この報告は正しくないのでしょうか。
 なぜ、これが不正行為なのかはこの取引が借り入れた金を元の
所有者に返済しない限り、未了なのです。したがって、そこから
得られた利益はあくまで「架空の利益」に過ぎないからです。も
し、取引終了前に金価格が急騰してしまうと、たちまち、大損失
が生じてしまうからです。
 実際に大損失が生じなかったのは、実際に金価格が下げ続けた
からです。それはどのようにして実現されたのでしょうか。
 ロスチャイルドをドンとする国際通貨マフィア、デル・バンコ
一族は、金価格を操作できたのです。彼らは下がった金価格に対
してたえず揺さぶりをかけて、上昇したところで売りに出す――
これを繰り返して莫大な利益を上げたのです。
 著名な投機師ジョージソロスの金の取引について、次の一文が
あります。
―――――――――――――――――――――――――――――
 1993年はソロスがもっとも活躍する年となった。まずソロ
 スは金投機に絡んだ。金は1オンス=345ドル平均のときに
 ソロスは天文学的資金を投じて仕入れていた。すぐに1オンス
 =385ドルに上昇し、彼はたちまちにして全量を売却した。
 これはゴールドスミスとも組んでいたために過大なほどの話題
 を集めたが、場違いな金取引でも数億ドルの稼ぎがあった。
              ――宮崎正弘著/オーエス出版社
               『ユダヤ商法と華僑商法』より
―――――――――――――――――――――――――――――
 ここで、ゴールドスミスとは、ロスチャイルド家のジェームス
・ゴールドスミスのことです。このように金相場をデリバティブ
で揺さぶって金価格を釣り上げ、再び価格を下げてそれを維持す
る――そういうことができたようです。
 しかし、金価格が低レベルに維持されてしまうと、その金価格
は金鉱山会社の生産価格を無視したものになっていったのです。
しかも、バリック・ゴールド社の動きにチェース・マンハッタン
やJPモルガンなどの米大銀行が同一歩調をとったため、金鉱山
会社は採算割れして倒産していったのです。何か大きな仕掛けが
そこにあったのです。         ―― [金の戦争/37]


≪画像および関連情報≫
 ●ジョージ・ソロスとは何者か
  ―――――――――――――――――――――――――――
  ジョージ・ソロスは多彩な人間である.史上最高額を稼いだ
  投機家であると同時に,東欧改革に取り組む最大の慈善家。
  また「開かれた社会」の思想を世界に啓蒙する政治家である
  と同時にすぐれた哲学的思考をもつ一流の評論家でもある。
  数々の類まれな能力に恵まれたこの男は,きわめて怪しい魅
  力に満ちている.彼は現在,20世紀最大の人物の一人とし
  て,歴史に名を刻むことを使命としているようだ。
  http://www.ntticc.or.jp/pub/ic_mag/ic031/html/160.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

ジョージ・ソロス.jpg
ジョージ・ソロス氏
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2010年09月07日

●なぜIMFは金を放出したか(EJ第2379号)

 各中央銀行は、1980年代後半から1999年にかけて――
とくに1998年から1999年の2年間に一般市場で大量に金
を放出しているのです。本当にこの2年間にはいろいろなことが
起こっているのです。
 1999年3月16日のことです。クリントン大統領(当時)
は、IMFが保有する金を売却するという提案をしています。こ
れにフランスのシラク大統領(当時)も賛意を表明しています。
開発途上国の経済を支援するというのがその目的です。
 これに対して、財務長官のロバート・ルービンは、次のように
コメントしているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 IMFが債務救済プログラムへ資金を提供するため、500万
 から1000万オンスの金を売却することになっても、市場が
 混乱することはないだろう。     ――ルービン財務長官
―――――――――――――――――――――――――――――
 実は目的の「開発途上国の経済を支援する」というのが問題な
のです。開発途上国のほとんどが産金国であるからです。つまり
IMFによって金が大量に売却されると金価格は下落し、そうす
れば南アフリカ、ガーナ、マリ、ペルーなどの経済はさらに低迷
してしまうと思われるからです。
 例えば、そのなかのガーナについていうと、ガーナは多重債務
貧困国のひとつであり、その総輸出額の40%は金が占めている
のです。債務救済計画への資金提供を目的としたIMFの金の売
却によって金価格は下落し、ガーナの経済力は低下してしまうの
です。これでは何のための資金提供か意味をなさないのです。明
らかに何か別の目的があると考えられます。
 このことは米連邦議会でも取り上げられ、クリントン政権のこ
の提案は誤っているとして、上下両院合同経済委員会のジム・サ
クストン下院議員は、次のように発言しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 IMFによる新たな金売却は市場による価格形成を歪め、官僚
 国際公務員、そしてウォール街の金持ちといった一部の特権者
 に納税者の富が移転するのを助長するだけである。
                ―ジム・サクストン下院議員
―――――――――――――――――――――――――――――
 それでは、このIMFによる金放出の目的は何でしょうか。こ
の謎を解明するには、1980年代のレーガン政権時代に戻る必
要があります。
 レーガン大統領という人は、無能で経済の知識は皆無であった
ので、ヴォルカーFRB議長は自分の思うように次々と金利を引
き上げたのです。これはインフレを退治するためのFRB議長と
して当然の処置であったのですが、これが株と金の先物市場に大
きな痛手を与えたのです。ヴォルカーの金利の引き上げによって
金相場のデリバティブが不安定になったのです。
 このレーガン政権のときから、金価格の上昇を狙うロンドンと
チューリッヒのデル・バンコ一族――国際通貨マフィアと、それ
に抵抗するウォール街のディーラーとの間で、壮絶な金の戦争が
開始されたのです。そして、その結果、ウォール街のディーラー
は敗れたのです。
 この戦争によって、米国の象徴ともいうべき、チェース・マン
ハッタンとJPモルガンは深刻な痛手を被ったのです。これによ
り、チェース・マンハッタン銀行の経営者であるデイヴィット・
ロックフェラーは、米国の象徴ともいわれた「ロックフェラー・
センター」を三菱地所に売却せざるを得なかったほど、追い詰め
られたのです。
 御代田雅敬氏は、当時のチェース・マンハッタン銀行について
次のように書いています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 86年にはムーディーズの格付けがそれまでAa3であったの
 が低下の一途をたどり、90年にはBa3まで低下したことに
 如実に表れているように、80年代中盤以降の収益が悪化して
 いた。ホールセール(法人営業)ではJPモルガンに後塵を拝
 し、リテールではシティコープほどのスケール・メリットがな
 い。いわば中途半端であるとの辛い評価が多く見られた。国際
 的な銀行としてラ米(ラテン・アメリカ)にも積極的であった
 チェースは、他のマネーセンターバンク同様、ラ米債権の焦げ
 付きで苦しみ、そして不動産融資の不良債権化を見てリストラ
 を決断したのである。          ――御代田雅敬著
           『米銀の復活』/日本経済新聞出版社刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 JPモルガンはどうだったのでしょうか。
 JPモルガンは銀行ですが、証券業務に進出するという行動を
とったのです。そして、この銀行は金利変動リスクに対処する高
度な技術をマスターしているのです。
 それまでは長期債を発行し、大企業の生産力維持に寄与してき
たのですが、やがてその大企業に対して、スワップ・オプション
などのデリバティブ商品を売り込んだのです。これによって、G
Mもフォードもクライスラーも、車を造ることよりもデリバティ
ブの世界にのめり込んでいったのです。
 銀行というものは、金利の安い資金を調達し、これを企業に高
い金利で貸してそのローンの利ざやから利益を得るのです。しか
し、JPモルガンはトレーディングやデリバティブによって利益
を得ようとしたのです。
 そして、JPモルガンは金の戦争に巻き込まれます。既に述べ
たように、JPモルガンは世界の各中央銀行から金地金を借りて
すでにこの金を安値で売っていたのです。しかし、金が高騰して
金利負担が増大し、現物の返済も迫られていたのです。
 米財務省は、チェース・マンハッタンとJPモルガンに対して
協力し、金の放出を繰り返してきたのですが、限界に近づきつつ
あったのです。            ―― [金の戦争/38]


≪画像および関連情報≫
 ●ガーナ共和国について
  ―――――――――――――――――――――――――――
  ガーナ共和国、通称ガーナは、西アフリカに位置する共和国
  国家。東にトーゴ、北にブルキナファン、西にコートジボワ
  ールと国境を接し、南は大西洋に面する。首都はアクラ。サ
  ハラ以南のアフリカ諸国で、初めて現地人が中心となってイ
  ギリスから独立を達成した。初代大統領エンクルマは、アフ
  リカ統一運動を推進したことで有名。かつてゴールドコース
  トと呼ばれた海岸を保有しており、ダイヤモンドや金を産出
  する。カカオ豆の産地としても有名。
  ―――――――――――――――――――――――――――

クリントンとルービン.jpg
クリントンとルービン
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2010年09月08日

●チェースとJPモルガンの敗北(EJ第2380号)

 1999年9月になると、JPモルガンは一段と追い込まれて
いきます。倒産は時間の問題となったのです。一方のチェース・
マンハッタン銀行の方は巨額の負債を抱えながらもなんとかやっ
ていたのです。
 JPモルガンはデル・バンコ一族のゴールドマン・サックスに
合併を申し入れたのです。ゴールドマン・サックスとしては、検
討はしたものの、結局申し入れを拒絶します。
 さらにJPモルガンは、ドイツ銀行に合併の申し入れたのです
が、ドイツ銀行も断ります。万事休すです。9月7日にJPモル
ガンの金デリバティブ戦略の責任者であるピーター・ハンコック
が辞任します。
 そのときウォール街では、9月11日月曜日にJPモルガンは
倒産を発表するであろうという風評が流れたのです。その199
9年9月11日早朝に、チェース・マンハッタンとJPモルガン
の会長が話し合い、たった5分後に2人は記者会見に臨み、両社
の合併を発表したのです。
 「JPモルガン・チェース」――合併後の新会社の名称ですが
表面上は対等合併――頭に「JPモルガン」の字がくるものの、
資産規模の大きかったチェース・マンハッタンのJPモルガンの
吸収合併と考えてよいと思います。
 問題は、デリバティブ戦略の責任者であるピーター・ハンコッ
クがなぜ辞任したかであり、その後に一体何があったかです。こ
れについては明らかにされた情報はないのですが、既出の鬼塚氏
の推定にしたがって記述します。
 ピーター・ハンコックが先に職を辞したのは、JPモルガンの
財務の現況について洗いざらい、チェース・マンハッタン銀行の
会長であるデイヴィット・ロックフェラーに話すことにあったの
ではないかと考えられるのです。
 ハンコックとデイヴィット・ロックフェラーとの会談をセット
したのは、おそらくFRB議長のアラン・グリーンスパンであろ
うと考えられます。そこでJPモルガンの金デリバティブの詳細
が明かされ、同じような戦略をとっていたチェース・マンハッタ
ンも、もし、JPモルガンが倒産すると、そのままでは済まない
――すなわち、連続倒産しかねない状況が明らかになっていった
ものと思われるのです。
 グリーンスパンとしてもこれらの2大メガバンクが倒産すると
世界恐慌の引き金になるとして、ロックフェラーを口説いたもの
と考えられます。そして、両行が合併して金デリバティブから撤
退することを条件に、FRB、財務省、IMFから相当の資金が
提供されたものと思われます。鬼塚氏は、これについて、次のよ
うに述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 1999年9月11日、両銀行が合併した日こそは、「金の戦
 争」における勝者と敗者がはっきり見えた日であった。敗者は
 チェース・マンハッタンとJPモルガンの両銀行の敗北の中に
 鮮明に姿を見せた。アメリカ最大の銀行が、「金の戦争」を仕
 掛けた国際通貨マフィアたちの金デリバティブに敗れたのであ
 る。両銀行は一つの銀行になり、21世紀の今日でも営業して
 いる。しかし、昔日の面影はない。
     ――鬼塚英昭著、『日経新聞を死ぬまで読んでも解ら
            /金の値段の裏のウラ』/成甲書房刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 ここにはっきりと、ロンドン、チューリッヒのデル・バンコ一
族――つまり、ロスチャイルド家と米国のロッフェラー家の金を
めぐる争いの構図が見えてきます。
 米国を代表する銀行であるチェース・マンハッタンとJPモル
ガン――これらのロックフェラー系統の銀行は、20世紀末に金
の戦争に敗れたのです。
 1980年代において実は日本も、それと知らないうちにこの
争いに巻き込まれているのです。この当時日本は米国が金の戦争
で次第に劣勢になりつつあるのを尻目に、大繁栄のときを迎えて
いたのです。いわゆる「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の時代
です。しかし、その繁栄はロンドンとスイスに巣食うデル・バン
コ一族が仕掛けたものであるという説があるのです。
 ブレトンウッズ体制では、ドルは一応金の裏づけがあり、その
ため大量のドルがヨーロッパに流れたのです。ド・ゴール将軍は
そのユーロダラーを強引に金に換えようとし、かなりの金塊をフ
ランスに持ち帰ったことは既に述べた通りです。
 しかし、ニクソンショックによってヨーロッパとしては、その
ドルを米国に還流させる術がなくなったのです。1980年代は
金価格の上昇と金デリバティブの登場で米国の銀行・証券会社の
多くが経営難に陥り、資金を必要としていたのです。
 そのときロンドンとチューリッヒの国際通貨マフィア――デル
・バンコ一族は、日本の銀行を利用することを考えたのです。当
時日本の公定歩合は米国のそれを超えていたからです。
 そこで、ロンドンとチューリッヒの銀行は、大量にあるユーロ
・ダラーを安い利率で日本の銀行に貸し付け、この資金を主とし
て米国に還流させようとしたのです。これを専門的にいうと「イ
ンターバンク取引」というのです。
 「インターバンク取引」とは、わかりやすくいうならば、「又
貸し商法」ということになります。日本の銀行は低利で借りたド
ルを米国の企業に低利で貸し始めたのです。金の戦争に疲弊した
米国の銀行は、自分たちの融資先が、次々と日本の銀行による低
利融資に切り替えられていくのをただ指をくわえて見ているしか
なかったのです。これによって、米国の銀行はどんどん体力を弱
体化させていったのです。
 しかし、調子に乗った日本の銀行はその資産を米国に流入させ
るだけでなく、日本の株式市場にも注ぎ込んだのです。株式上昇
の一方で、その供給増大が株価の潜在的下落の要因になる可能性
を秘めていたのです。        −― [金の戦争/39]


≪画像および関連情報≫
 ●インターバンク取引とは何か
  ―――――――――――――――――――――――――――
  インターバンク取引とは、金融機関や証券会社等の限定され
  た市場参加者が相互の資金の運用と調達を行う場。取引参加
  者は金融機関に限定され、資金の出し手、取り手の間を短資
  会社が仲介する。資金調達の場としては、短期金融市場のう
  ちのコール市場、手形市場があり、金融機関がお互いに日々
  の短期的な資金の過不足を調整するための取引が行われてい
  る。また、外国為替の交換の場として金融機関同士が取引を
  する市場のことも指す。外国為替取引ではインターバンク取
  引と対顧客取引の2つに大別されるが、通常、外国為替市場
  といった場合はこのインターバンク市場のことをいい、ここ
  でやり取りされる為替相場のことを、インターバンクレート
  (またはマーケットレート)という。
   http://allabout.co.jp/glossary/g_politics/w007596.htm
  ―――――――――――――――――――――――――――

アラン・グリーンスパン.jpg
アラン・グリーンスパン
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2010年09月09日

●金価格は意図的に操作されている(EJ第2381号)

 ここまで39回にわたって「金の戦争」と題して書いてきたの
ですが、このテーマもそろそろ締めくくりをしなければならない
ところにきております。
 ここまで書いてきて感ずることは、「金」については情報が非
常に少ないということです。「金の戦争」というタイトルにして
も、フェルディナント・リップスの本の原題「ゴールド・ウォー
ズ」からとったものであり、そういうタイトルの本は他には存在
しないのです。
 さらに不思議なことに、「金」について書いている経済学者や
経済評論家やアナリストなどの経済の専門家がほとんどいないと
いうことです。いや、金だけでなく、FRBやIMFついても正
面切って意見を述べている人は少ないのです。既出の鬼塚英昭氏
は、これについて次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 「金の戦争」どころか、金そのものについて語ったり、書いた
 りする経済学者はいない。ケインズ、フリードマン、サミュエ
 ルソン、そしてガルブレイズにいたるまで一人もいない。未来
 学者たちも語らない。グローバリズムを否定するノーベル賞学
 者のスティグリッツも金に関しては沈黙を守っている。
     ――鬼塚英昭著、『日経新聞を死ぬまで読んでも解ら
            /金の値段の裏のウラ』/成甲書房刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 もっともスティグリッツやキッシンジャー元国務長官、ジョー
ジ・シュルツ元国務長官、ウィリアム・E・サイモン元財務長官
などは、IMFや世銀についてはっきりとものをいい、その解体
を求めていますが、彼らも金についてはなぜか沈黙しています。
まるで誰かに口止めされているようです。
 さて、1980年1月の「1オンス=850ドル」という最高
値を記録した金は、その後20年間にわたって下がり続けます。
そして、1999年8月に253ドルという底値を付けたあと、
2001年4月2日に255ドルという二番底を記録するのです
が、そのあと金価格は一転して急上昇するのです。
 底値から急上昇に向かった2ヵ月間について考えると、その間
金価格を押し上げるような有事も金融的事件も起こっていないの
に30ドル以上も上昇しているのです。まるで何かの決着がつい
たので、一挙に上昇に転じたような上がり方であるといえます。
 こういう金価格の動きをみると、明らかに金価格は何かに誘導
されています。重要なことはここで米政権がクリントン政権から
現ブッシュ政権に代わっていることです。民主党のクリントン政
権は金嫌いとして知られています。
 二番底を記録した2001年4月から3ヶ月前――すなわち、
ブッシュ政権が発足すると、数千億円の資産を持つといわれる米
国の「スーパーリッチ」は、ここが金の底値とみて一斉に金を買
いに出動しはじめたのです。これを「スーパーリッチによるゴー
ルドラッシュ」といい、金価格の長期上昇トレンドへの構造転換
が起こったのです。
 そして、ブッシュ政権を通じて金価格は上昇し、遂に2008
年3月に1023ドルという史上最高値を更新したのです。10
00ドルまでの推進役としては、通説では「ドル離れマネーの買
い」とされていますが、これについて上武大学教授高橋靖夫氏は
次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 私は陰の主役(1000ドルまでの推進役)は、スーパーリッ
 チが本格的に資産のある割合を「保険としての金」へ戦略的に
 シフトさせたものと考えている。「第2次スーパーリッチのゴ
 ールドラッシュ」である。だから、金価格の上昇は底堅いので
 ある。     ――「SAPIO」/2008.4.9日号
―――――――――――――――――――――――――――――
 「ETF」というものがあります。ETF(指数連動型上場投
資信託)とはその価格が株価指数(TOPIXや日経平均など)
商品価格、商品指数などに連動するようにつくられ、上場されて
いる投資信託です。
 その金のETFが現在注目されているのです。これによって、
金製品を買う人が増えているからです。ETFとは投資信託と同
じように運用される仕組みになっていて、世界的な金の取引はこ
れがメジャーになっているのです。
 この金のETFが2008年6月30日、東京証券取引所に上
場されたのです。この上場式典でこの金のETFを開発したワー
ルド・ゴールド・トラスト・サービシスのジェームス・バートン
氏は次のように語っています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ドル安やインフレをヘッジする機会を日本の投資家に提供でき
 ると考えいいる。       ――ジェームス・バートン氏
         「日経ビジネス」/2008.7.21より
―――――――――――――――――――――――――――――
 この金のETFは、それまで商品投資に縁遠かった年金基金や
投資信託、それに個人投資家が容易に金を買えるようになったこ
との意義が大きいといえます。ETFを通じて買い付けられた金
の総量は既に1000トン近くに達する予定です。
 70年代のニクソンショックから今年はちょうど38年目にな
ります。当時と同様に「米国覇権の終焉」とか「ドル失墜」とか
いわれ出しています。
 サブプライムローン問題による世界同時不況対策として、米国
は大量のドルを世界中にバラまいています。その結果、通貨全体
の価値は下落し、物価は急上昇して強いインフレ圧力が世界経済
にかかってきています。 
 このインフレ圧力にもかかわらず、米国は利上げの選択肢を奪
われたままです。そしてただ「強いドル」を口にするだけで何も
手が打たれていないのです。ドルの下落と金の高騰――米国は何
をやろうとしているのでしょうか。 −― [金の戦争/40]


≪画像および関連情報≫
 ●ETF革命の光と影/山崎元氏
  ―――――――――――――――――――――――――――
  筆者はETF(上場型投資信託)に大いに期待している。E
  TFはなんといっても信託報酬水準が低く、長期保有を前提
  とすると、通常のリテール向けの投資信託と比べ、圧倒的に
  コストが安い。近年は海外市場に上場されている外国株式を
  組み入れたETFを扱う証券会社も増えた。外国株式にも低
  コストで投資できるようになった意義は大きい。外国株式に
  も分散投資の対象を広げることが理論上はほぼ絶対的に好ま
  しくても、これまでは外国株式を投資対象とする投資信託の
  手数料があまりに高く、個人投資家に具体的に薦められる運
  用商品がなかった。だが海外ETFに投資できるようになっ
  て、この問題が解決された。
      http://diamond.jp/series/yamazaki_econo/10043/
  ―――――――――――――――――――――――――――

金塊.jpg
金塊
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2010年09月10日

●金の高騰というよりドルの減価である(EJ第2382号)

 「日経ビジネス」の金の特集「ドル凋落/金本位制再び」にお
いて、金に関する興味ある計算が披露されているので、ご紹介し
たいと思います。
 現在、世界的に原油や小麦やトウモロコシなどの穀物価格が上
昇していますが、これらはいずれもドル建てなのです。これを金
の価値を基軸にして測り直すと、その価格上昇率は意外に小さい
はずである――これを証明するための計算です。
 そのために「日経ビジネス(NB)ゴールド」という架空の金
貨を次のように設定し、このNBゴールド建てで原油の値動きを
追ってみようというわけです。
―――――――――――――――――――――――――――――
   純金100分の1オンス=NBゴールド金貨1枚
―――――――――――――――――――――――――――――
 原油は2000年1月の時点で「1バレル=28ドル」だった
のですが、2008年7月2日時点では、「1バレル=141ド
ル」になっています。
 2000年1月時点の金価格は「1オンス=280ドル」であ
り、1NBゴールドはその100分の1であるので2.8ドル、
「1バレル=28ドル」はNBゴールド金貨10枚となります。
―――――――――――――――――――――――――――――
       28 ÷ 2.8 = 10枚
―――――――――――――――――――――――――――――
 現在の金価格は、「1オンス=940ドル」前後になっていま
す。1NBゴールドは9.4ドルであるから、NBゴールド金貨
10枚となります。
―――――――――――――――――――――――――――――
      141 ÷ 9.4 = 15枚
―――――――――――――――――――――――――――――
 原油についてまとめると、2000年から2008年までの8
年間については、原油価格は5倍になったものの、純金で測った
価格は1.5 倍にしかなっていないのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
  原油価格  28ドル → 141ドル ・・ 5.0倍
  金 価格  10 枚 →  15 枚 ・・ 1.5倍
―――――――――――――――――――――――――――――
 これをみてもわかるように、金の高騰というよりもドルの猛烈
な減価なのです。ドルの減価は米国の力がそれだけ落ちたことを
意味するのです。副島隆彦氏は、米国のドルについて次のように
述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 今から64年前に決められた時から、米ドルのお札の方は、今
 や30分の1になっている。それなのに、アメリカ合衆国(ア
 メリカ帝国)は、まだ「アメリカの(お金の)力は強い」と強
 がりを言っている。どんなにアメリカが強がりを言っても、現
 実には30分の1の国力になってしまっている。
                 ――副島隆彦著/徳間書店
       『静かに恐慌化する世界/連鎖する大暴落』より
―――――――――――――――――――――――――――――
 「米国は30分の1の国力」の根拠はこうです。1944年7
月――ブレトンウッズ体制発足時点の金の価格は、「1オンス=
35ドル」です。金1オンスは31.1035 グラムなのです。
 2008年3月時点の金価格は「1オンス=975ドル」――
これを31.1035 グラムで割ると次のようになります。
―――――――――――――――――――――――――――――
    975 ÷ 31.1035 =31.346
    金1グラム =31ドル  →   30倍
―――――――――――――――――――――――――――――
 この「金1グラム=30ドル」に105円をかけると3150
円になり、日本における金価格になります。副島氏によると、や
がて金は2倍の6000円台になると予想しています。
 ところで、現在主要国はどのくらい金を保有しているのでしょ
うか。以下は2008年6月現在の公的部門の金保有量です。
―――――――――――――――――――――――――――――
          国       保有量
    1.米国       8134トン
    2.ドイツ      3417トン
    3.IMF      3217トン
    4.フランス     2562トン
    5.イタリア     2452トン
    6.スイス      1100トン
    7.日本        765トン
    8.オランダ      621トン
    9.中国        600トン
   10.ECB       564トン
   11.ロシア       458トン
   12.台湾        423トン
   13.ポルトガル     383トン
   14.インド       358トン
      2008年6月現在/WGC調べ
―――――――――――――――――――――――――――――
 これによると、米国の金の保有量は圧倒的です。実質上IMF
も米国に入れると、11351トンになるのです。ドルの減価が
止まらない米国――本当にこれだけの金が米国にあれば、米国は
これを使って何かを仕掛けてきても不思議はないのです。
 強力なインフレ圧力が世界経済にかかっている現在、もしこの
タイミングで米国が金本位制復活宣言をしたら、世界経済はどう
なるでしょうか。不換紙幣のインフレの中で、金本位制に復帰し
たドルだけが、インフレにヘッジできる唯一の通貨になる――そ
うなるとドルは、再び基軸通貨として世界を支配することになり
ます。可能性としては考えられます。  ―[金の戦争/41]


≪画像および関連情報≫
 ●金本位制に関するプログより
  ―――――――――――――――――――――――――――
  ドルが崩壊するので、今度は金本位制になるのではないかと
  か、金地金が注目されているようなんだが、アメリカがいっ
  ぱい持ってるらしいね。第二次大戦が終わった時に、アメリ
  カは何百年分だかのニッケルを保有していたとかいう噂もあ
  って、浪費も好きだが、溜め込むのも好きらしい。こういう
  ヤツは便秘になる。で、日本銀行も金地金を4412億円分
  持っているそうだが、いや、ないんだよ、という話もある。
  むかしは日本も金本位制で、兌換紙幣というヤツだった。紙
  幣を日銀に持っていくと金そのものに交換してくれる。
  http://shadow-city.blogzine.jp/net/2007/11/post_0719.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

副島氏の本.jpg
副島氏の本


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2010年09月13日

●金本位制の信奉者グリーンスパン(EJ第2383号)

 米国が金本位制に復帰する――この噂がかなり前から根強く出
ているのです。いかにも荒唐無稽な考え方ですが、火のないとこ
ろに煙は立たずで、調べてみる価値はあると思ったのです。私が
今回のテーマを取り上げたのは、それが果たして実現可能である
かどうかリサーチしてみたいと思ったからです。
 既出の上武大学教授高橋靖夫氏は、米国の金本位制復帰につい
て、次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 私は金価格は1500ドルまで高騰し、そのタイミングで米国
 が金本位制復活を宣言すると見ている。ブッシュ政権中に実行
 される確率は高いが、仮に次期大統領がマケインでも、あるい
 は民主党政権になっても、いずれ実行されるはずだ。なぜなら
 巨額の赤字とドルの権威失墜を防ぐ解決策はほかにないからで
 ある。そして、強いドルが復活すれば、日本や欧州の優良企業
 のM&Aも容易になる。         ――高橋靖夫教授
         ――「SAPIO」/2008.4.9日号
―――――――――――――――――――――――――――――
 考えてみると、金を通貨とした歴史は2000年以上に及ぶの
に対して、変動相場制などはわずか40年でしかないのです。そ
れにニクソン・ショックがそうであったように、制度変更による
外交戦略は米国の得意わざであり、日本は何度も痛い目にあわさ
れているのです。何の相談もなく、いきなりやってくるのです。
 米国には金本位制信奉者が少なくないのです。その一人に、前
FRB議長のアラン・グリーンスパンがいます。あのフェルディ
ナント・リップスは、グリーンスパンがFRB議長だったときに
次のようにいっています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 今日、中央銀行のトップで、金本位制ならびに金の役割につい
 て完璧に理解しているという点では、FRB議長のアラン・グ
 リーンスパンの右に出る者はいないであろう。
   フェルディナント・リップス著/大橋貞信訳/徳間書店刊
   『いまなぜ金復活なのか/やがてドルも円も紙屑になる』
―――――――――――――――――――――――――――――
 グリーンスパンはつねに「システミックリスク」について警告
をしています。そして、システミックリスクは金本位制の規律の
下では起こらないといっていたのです。
 1999年5月のイングランド銀行が金の売却を発表したとき
グリーンスパンは次のようなコメントを発表しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 アメリカは金準備を維持すべきである。金は依然として世界の
 究極の支払い手段なのである。ナチス・ドイツは1944年に
 なっても物資を調達できたが、それも金で支払っていたからで
 ある。非常時には誰も不換紙幣を受け入れないが、金は常に受
 け入れられるのだ。
   フェルディナント・リップス著/大橋貞信訳/徳間書店刊
   『いまなぜ金復活なのか/やがてドルも円も紙屑になる』
―――――――――――――――――――――――――――――
 米国が金本位制に復活するという噂が現実味を帯びるのは、米
国の圧倒的な金の保有量なのです。通貨制度を金本位制に戻すに
は、大量の金が不可欠であるからです。
 しかし、一方において米国の金は既にないと主張する人もいま
す。それは、米国がデル・バンコ一族が仕掛けた金の戦争に米国
――FRB、IMF、財務省が敗れたからだというのです。
 1999年11月19日に、パリで開催されたワールド・ゴー
ルド・カウンシル(WGC)の会議で、ユーロに理論的な根拠を
与えてノーベル賞を受賞したロバート・マンデル教授は次のよう
に述べているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ここに出席された皆さん、ついに中央銀行は、私たちの軍門に
 くだり、持っていた金のほとんどを放出しました。私たちは、
 中央銀行が高い時に売却しない方針を徹底的に貫かせた、デル
 ・バンコの一族に敬意を示そうではないですか。あとほんの一
 年で、20世紀も終わります。今日、この日こそは世界の金の
 これからの未来を語る日なのです。デル・バンコ一族は、私も
 その末裔の一人ですが、ここに金の独占に成功しました。そろ
 そろ私たちは、中央政府に「金を安く買って、高く売るよう政
 策を改めよ」と進言します。しかし、皆さん、中央政府は安く
 買おうにも、その金がないことにやがて気がつきます。どうし
 てか。デル・バンコ一族が、金の独占化をほぼ達成したからで
 す。今日はその祝福すべき日です。祝杯を上げましょう。
 ――鬼塚英昭著、『日経新聞を死ぬまで読んでも解らない/金
              の値段の裏のウラ』/成甲書房刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 ロバート・マンデルといえば、「マンデル・フレミング・モデ
ル」で知られるカナダ出身の通貨の専門家ですが、そのマンデル
の話す内容にはわからないことが多いです。そもそもWGC――
ワールド・ゴールド・カウンシルとはどういう会合なのか、その
正体は不明です。まるで何か秘密結社の会合での話のようです。
なお、昨日のEJで、金の保有量のデータについて書きましたが
そのデータの出所も「WGC」となっています。
 しかし、マンデルは自らデル・バンコ一族の末裔と語り、「デ
ル・バンコ一族は金の独占に成功した」と語っているのです。つ
まり、デル・バンコ一族が金の戦争に勝利し、各国の中央銀行の
金庫には、既に金などないという意味なのでしょうか。
 もしかすると、マンデルがここでいう中央銀行とは、カナダの
中央銀行である可能性があります。なぜなら、カナダの中央銀行
は15年間にわたり金を売却し続けたからです。
 はっきりしていることは、ここまで述べてきた通り、デル・バ
ンコ一族が長い年月をかけて、各国の中央銀行に働きかけて、金
を集めていたことです。        ― [金の戦争/42]


≪画像および関連情報≫
 ●ロバート・マンデルとは何者か
  ―――――――――――――――――――――――――――
  ロバート・マンデル教授は、1932年に年カナダに生まれ
  マサチューセッツ工科大学およびロンドン・スクール・オブ
  ・エコノミックスを卒業し、1956年にマサチューセッツ
  工科大学から博士号を取得しました。教授は、各国の著名な
  大学で教壇に立たれているだけでなく、国連、IMF、世界
  銀行、連邦準備制度理事会、アメリカ財務省、欧州委員会等
  多くの機関やカナダ、南米そしてヨーロッパ諸国において政
  府のアドバイザーをつとめており、現在は人民元に関して中
  国政府のアドバイザーをつとめております。
  http://www2.chuo-u.ac.jp/econ/anniversary100/special_lecture/history.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

ロバート・マンデル教授.jpg
ロバート・マンデル教授
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2010年09月14日

●金の戦争を終わらせる鐘の音(EJ第2384号)

 1999年9月26日のことです。ワシントンにおいて、ヨー
ロッパの14の中央銀行が「金に関するワシントン合意」を宣言
したのです。これは何のための合意なのでしょうか。
 14の中央銀行とは次の国の中央銀行です。これにECB――
ヨーロッパ中央銀行が加わって15の銀行になります。
―――――――――――――――――――――――――――――
    1.オーストリア     8.ドイツ
    2.イタリア       9.スペイン
    3.フランス      10.イギリス
    4.ポルトガル     11.フィンランド
    5.スイス       12.オランダ
    6.ベルギー      13.アイルランド
    7.ルクセンブルグ   14.スウェーデン
―――――――――――――――――――――――――――――
 「ワシントン合意」の内容は次のようなものなのです。一見す
ると、金の売却を規制する合意のようです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 1.参加15の中央銀行は参加国の金売却について今後の売
   却量を合計で年間400トンまでとし、参加中央銀行は
   5年間で2000トンを上限とする。
 2.参加15の中央銀行は、参加中央銀行が今まで行ってき
   たリース市場――金の貸出市場への貸出量を、今後は増
   加させずに現状の水準を上限とする。
―――――――――――――――――――――――――――――
 1999年末時点で、この15銀行の所有する金は1万594
1トンとされています。注目すべきは、スイスがこの合意に入っ
ていることです。スイスはこの時点で金をまったく売っていない
のに参加しているのです。実はスイスは2000年に入るや、憲
法を改正してまで金を放出するのです。
 もうひとつの注目点は、米国が入っていないことです。「ワシ
ントン合意」と銘打ちながらなぜ米国が参加していないのでしょ
うか。文書には一応次の前提は入っているのですが、いまひとつ
釈然としないものがあります。
―――――――――――――――――――――――――――――
  アメリカ、日本、IMF、BISの同意のもとに・・・
―――――――――――――――――――――――――――――
 既出の鬼塚英昭氏は、米国が加わらなかったことについて、次
のようにいっています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 どうしてアメリカが加わらなかったのか。私は幾度も書いた。
 この1999年9月の時点でアメリカは金を持っていなかった
 からである。「金の戦争」で敗北に次ぐ敗北を強いられていた
 金デリバティブの戦士たちは、この「金の戦争」を終わらせる
 鐘の音がワシントンから鳴り響くのを、ウォール街で聞いたの
 である。各国の中央銀行は底をつきかけた金の保有を金デリバ
 ティブの戦士たちに伝えたのである。
     ――鬼塚英昭著、『日経新聞を死ぬまで読んでも解ら
            /金の値段の裏のウラ』/成甲書房刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 鬼塚氏はここで大変なことをいっています。米国は金を持って
いないというのです。「金の戦争」で敗北に次ぐ敗北を強いられ
て、金を失ったというのです。それどころか、米国は各国から預
かっている金まで手をつけた疑いもあるのです。
 もうひとつ、この「ワシントン合意」は、それまで中央銀行が
行ってきた「金のリース」を認めたということです。それまで各
国とも正式に中央銀行の金の貸し出しを発表していなかったので
す。したがって、この合意は中央銀行の金の貸し出しの問題を広
く世界に知らしめたことにもなるのです。
 金には「リアルの金」と「バーチャルの金」があります。前者
は、中央銀行の金であり、後者はCOMEXに溢れる金のことで
す。COMEXでは、1日に800トンから1000トンの金が
売買されていたのです。そのバーチャルの金がヘッジされ、ヘッ
ジファンドの中に組み入れられて、巨大金デリバティブが形成さ
れていたのです。
 ここで「金の戦争」の構図をもっと明確にしてみる必要がある
と思います。戦争で対峙する一方は、もちろん米国の銀行、証券
会社です。彼らはウォール街で金ヘッジファンドにより各種のデ
リバティブをやっていたのです。
 彼らのバックには、財務省、IMF、FRBなど、米国そのも
のがついているのです。これら国際通貨体制を支えるバックグラ
ウンドとして、ロックフェラー財閥があるのです。
 さて、もう一方は、ロンドン、チューリッヒの国際通貨マフィ
ア――デル・バンコ一族とここまで書いてきています。具体的に
はヨーロッパをベースとするロス・チャイルド財閥ということに
なると考えられます。つまり、ロックフェラー財閥対ロス・チャ
イルド財閥の対決の構図――2大勢力の激突の構図です。
 米国は、1944年に発足したブレトンウッズ体制――ドル・
金本位制が崩壊したあと、1971年のニクソン・ショックを契
機にドル・石油本位制に移行し、ドルを基軸通貨とする通貨体制
を長年維持してきたのです。
 そういう米国のドル・石油本位制に対して、ヨーロッパのデル
・バンコ一族が金で米国に戦争を仕掛けたのです。これが「金の
戦争」なのです。
 これまで見てきたように、金の戦争によって金デリバティブの
戦士たち――米国の銀行や金融機関およびヘッジファンドは、敗
北に敗北を重ね、20世紀の終わりには限界に達しつつあったの
です。そして、この「金の戦争」を終わらせる鐘の音が「ワシン
トン合意」であると、鬼塚英昭氏はいうのです。
 そういう意味で「ワシントン合意」をもう一度慎重に見直す必
要があります。            ― [金の戦争/43]


≪画像および関連情報≫
 ●ゴールド・セッション/アンディ・スミス氏
  ―――――――――――――――――――――――――――
  「ワシントン合意」の内容は「本来なら不可能なはず」のも
  ものだった。それは金市場にとっては「強気な内容」であり
  (金価格が上昇に向かい始めていた)タイミングの良さもあ
  って、非常に大きな効果をあげた。「公的売却の不透明さ」
  への怖れが消えたことによって、金の「現在価値」が大幅に
  上昇した。しかし、まだ不明な点は残されている。「今後5
  年間で2000トン以内」の売却枠には、英国とスイス以外
  からの売却の余地が残されている。
  http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Kaede/2764/gohkon.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

鬼塚英昭の本.jpg
鬼塚 英昭氏の本
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2010年09月15日

●ドイツの金はどこに消えたか(EJ第2385号)

 2008年6月現在の米国の金の保有量は8134トン――世
界最大の保有量ですが、それが実はないというのです。そんな馬
鹿なという人は多いでしょう。しかし、中央銀行は外貨準備につ
いてはきわめて秘密主義であり、ほとんど情報を公開しないのが
つねなのです。そのとくにひどいのが米国なのです。絶対に何も
明かさない――完全にだんまりなのです。
 今まで多くの米国人が財務省が保有する金を監査するよう繰り
返し、要求したのです。かつてジョンソン政権がベトナム戦争の
ときにどのくらい金を売却したのかについては結局誰もわからな
いのです。要求に対する当局の答えはいつも同じ次のメッセージ
なのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
         監査は費用がかかり過ぎる
―――――――――――――――――――――――――――――
 フェルディナント・リップスの本に気になることが書いている
のです。米国の金の専門家にジェイムス・タルクという人がいて
ニューヨーク州ウェストポイントにある合衆国造幣局に預けられ
ていると思われる1700トンの金の表記が何回も変わっている
といっているのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
    2000年9月以前 ・・・・・ 金地金準備
    2000年9月以降 ・・・・・   保管金
    2001年     ・・・・・  重備蓄金
―――――――――――――――――――――――――――――
 ジェイムス・タルクによると、この「保管金」というのはドイ
ツの金であるといっているのです。ドイツの保有金は約3400
トンですが、ドイツ連銀は金準備のほとんどを他国に保管しても
らっているのです。
 実際にドイツにあるのは約80トン――これは、ドイツの保有
金の2.3% に当たりますが、それがフランクフルトの金庫にあ
るだけで、残りの金のうち1700トンは米ウェストポイントに
ある合衆国造幣局に預けられているのです。米財務省はこのドイ
ツの金1700トンの保証をしています。
 この金の表記がそれまでの「金地金準備」から「保管金」に変
わり、さらに「重備蓄金」に変わっているのです。これは何を意
味するのでしょうか。
 それでは残りの1700トンはどうなったのでしょうか。
 この1700トンの金は米国の為替安定化基金と交換されたか
たちをとり、為替安定化基金はこの金をブリオンバンクに貸し出
しているのです。既に述べたように、ブリオンバンクは、金を含
めた貴金属取引を行う銀行のことです。そして、ブリオンバンク
はその金を売却しています。
 これは何を意味しているかです。それは2000年9月という
時期に注目すべきです。ちょうどその一年前の1999年には金
の戦争をめぐってさまざまなことがあり、金の戦争について一応
の決着がついた年なのです。
 既出の鬼塚氏は、あくまで推理であると断って、ドイツの金の
経緯について、次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 ついに1999年、ウォール街の金デリバティブ体制が崩壊す
 るときがきた。このウォール街の金デリバティブでイギリスの
 シュローダー銀行もロバート・フレミング銀行が倒産の危機が
 訪れた。イングランド銀行は金を放出し、金価格を下げようと
 した。そして、このハードランディングによって両銀行の倒産
 は回避された。2000年9月に「金地金準備」のドイツ連銀
 の金が「保管金」になっていることは、すでにアメリカ財務省
 が、このドイツ連銀の金にさえ手をつけて、金デリバティブで
 倒産しかけたウォール街を救出するために使ったに違いない。
 そして表記変更の2000年9月に注目したい。この金の使用
 で「金の戦争」の結末がつけられたのであろうと思っている。
 ヤクザの手打ちである。金デリバティブのもたらす危機の最終
 的回避である。残りの1700トンの金が最終的にブリオンバ
 ンクに渡り、ブリオンバンクはこれを金デリバティブ市場で売
 却し、空売りをつづけた尻ぬぐいをした、と私は見る。
     ――鬼塚英昭著、『日経新聞を死ぬまで読んでも解ら
            /金の値段の裏のウラ』/成甲書房刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 考えてみると、1999年9月11日にはやはり「金の戦争」
に敗れたJPモルガンとチェース・マンハッタン銀行が合併して
います。そのときにも大量の金が動いているはずです。
 そして、1999年9月26日に「金の戦争」の終結を告げる
「ワシントン合意」が行われているのです。金にかかわるすべて
のことが1999年に秘密裏に処理され、終結しているのです。
 しかし、それにしてもどうしてドイツ連銀は、貴重な金を米国
の金庫に預けたままにしたのかです。これについては、リップス
の本で、「フィナンシャル・タイムズ」紙のデビット・マーシュ
ボン特派員の次のことばが紹介されています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 1960年代半ばの以降、金地金がドイツに移されることは一
 切なかった。冷戦期のドイツ連銀は、要塞化した東西ドイツ国
 境からソビエト製の戦車なら数時間で到着するフランクフルト
 よりも、海外に保管する方がよほど安全であると考えていたの
 だ。しかし、ドイツ統一が成されると、ドイツ連銀は、準備金
 の少なくとも一部をフランクフルトに戻すのに良い機会である
 と判断したに違いない。ところが外交上の利害から、金地金の
 ほとんどは、結局手を触れずにおかれることになったようであ
 る。フェルディナント・リップス著/大橋貞信訳/徳間書店刊
   『いまなぜ金復活なのか/やがてドルも円も紙屑になる』
―――――――――――――――――――――――――――――
                   ―[金の戦争/44]


≪画像および関連情報≫
 ●外貨準備とは何か/東奥日報より
  ―――――――――――――――――――――――――――
  対外債務の返済への備えや、外国為替市場で自国通貨の下落
  を止めるため介入を行う資金として、国が保有する外貨建て
  の資産。国内で政府短期証券を発行して円資金を調達し、そ
  れを元手に外貨資産を買うため、資産と債務を両建てで持つ
  形になる。外国為替資金特別会計を通じ、大部分を米国債で
  運用。毎年度、運用益の一部を一般会計に繰り入れている。
  http://www.toonippo.co.jp/news_hyakka/hyakka2008/0307_3.html
  ―――――――――――――――――――――――――――

合衆国造幣局紋章.jpg
合衆国造幣局紋章
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2010年09月16日

●ワシントン合意の前の手打ち(EJ第2386号)

 ある勢力が金を独占するとどうなるかについて考えてみましょ
う。金鉱山会社全体の時価総額は約600憶ドル、金の市場価格
――民間保有と公的保有の合計は約1兆6000憶ドル、これに
対して民間が保有している現金と金融資産の合計は、世界全体で
150兆ドルを上回るのです。
 このように考えると、この世の中で金が占める価値は案外低い
といえます。しかし、ドルやユーロや円で計算されている現金と
金融資産は、いつかこの世から消える運命にあるといっても過言
ではないのです。
 株式市場の崩壊やドルの大暴落が起きれば、現金と金融資産は
いつ消えても不思議はないのです。そのときは、今は100分の
1の金融価値しかない金が100倍の価値となって、金が市場の
支配権を握る可能性もあるのです。
 もし、本当に世界中の金がある勢力――仮にデル・バンコ一族
に独占されたとすると、デル・バンコ一族は市場を独占し、今ま
で米国が受けていた「法外の特権」を米国に代わって掌中にする
ことになるのです。
 現在、米国は膨大な貿易赤字を抱えています。この貿易赤字が
ひどくなったのは、クリントン政権のときです。クリントンが大
統領に就任した1993年から、貿易赤字は毎年著しく増えてい
るのです。1992年には390憶ドルの赤字でしかなかったも
のが、2000年には3600憶ドルになっているのです。なん
と10倍に膨らんでいるのです。
 この米国の貿易赤字をどう見るかについてはいろいろな意見が
あります。しかし、金の戦争に米国は敗れたという観点に立つと
その先行きには大きな不安が伴うのです。
 「プランチャード・エコノミック・リサーチ」誌は、次のよう
にコメントしています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 アメリカがこれほど長いこと巨額の貿易赤字を垂れ流し続けら
 るのは、アメリカに輸出することで潤っている国々が、輸出の
 受け取り代金の多くをアメリカの株式や財務省証券に投資して
 いるからである。しかし、弱気な株式市場と迫りつつある『ハ
 ード・ランディング』は、このすべてを変えかねない。現に外
 国人は、アメリカの低迷する株式市場に、魅力を感じなくなっ
 ている。さらに悪いことに、外国人が財務省証券を大量に保有
 しているということは、アメリカの金融システム全体が外国発
 のリスクにさらされるということである。財務省証券の外国人
 保有者の中には、中国共産党を含む海外の政府や中央銀行があ
 る。中国はアメリカを敵国とみなしていながら、アメリカ財務
 省証券を1000億ドル以上と、世界で3番目に多く保有して
 いる。これは、中国と紛争が起きた際には、アメリカの金融シ
 ステムがまっ先に攻撃されるということを意味するものだ。
   フェルディナント・リップス著/大橋貞信訳/徳間書店刊
   『いまなぜ金復活なのか/やがてドルも円も紙屑になる』
―――――――――――――――――――――――――――――
 今や米国の国債を大量に有している国は日本だけでなく、中国
が際立っているのです。米国からすれば、日本は大丈夫だが、中
国が大量に米国債を有していることには大きな不安を持つ人が多
いのです。
 2000年12月5日の米国下院におけるトラフィカント議員
の発言もその不安を訴えています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 議長、アメリカの9月の貿易赤字は、350億ドルに達しまし
 た。たった1カ月だけで、350億ドルです。このままいけば
 アメリカの一年間の貿易赤字は4200億ドルになります。も
 しこの状況が続けば、1929年の大恐慌が、自動車の接触事
 故くらいにしか思えないほどひどい恐慌が発生するでしょう。
 さらにひどいことに、現在中国は1000億ドルの現金をアメ
 リカから持ち去り、ミサイルを購入して、われわれにその照準
 を合わせているのです。われわれは何と愚かなことでしょう。
 レーガン大統領が共産主義をほぼ壊滅させたのに、クリントン
 政権は共産主義に再投資し、今や援助すらしているのです。
        ――フェルディナント・リップスの前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 海外から一年間で4000億ドル以上を借り入れることなどで
きないのです。そういう意味で米国の貿易赤字は既に限界に達し
ているということができます。
 既出の鬼塚氏によると、1999年9月26日のワシントン合
意において金の戦争には決着が着いたといっています。勝者と敗
者が明らかになったのです。勝者はCOMEXを閉じなければな
らないでしょう。しかし、いくらリアルの金を独占しても、バー
チャルな金が動いているのです。COMEXでは、1日に800
トンから1000トンを超えるバーチャルの金が取引されている
のです。これを一度につぶすのは困難であり、徐々にそれを行う
必要があります。
 具体的にいうと、相当巨額の資金を投入して金の価格を下げて
金デリバティブを弱体化させる――これを行う必要があります。
鬼塚氏によると、「ある種の法を無視したマネーロンダリング後
の大金が勝者暗黙の了承のもとに流れている」とまでいっている
のです。
 鬼塚氏はさらに大胆な推理を展開します。そこで使われたとみ
られる大金とは、ドイツ連銀の金ではないかと見られています。
金の戦争の敗者である金デリバティブのディーラーたちは、ドイ
ツ連銀の金を秘密裡に米財務省から受け取り、金デリバティブの
規模を縮小させるため、使われたと考えられます。
 それは、ワシントン合意の前であり、チェース・マンハッタン
とJPモルガンの合併の直前であるというのです。
 これに加えてさらに巨額のドルが、2000年から2004年
にかけて使われているのです。     ― [金の戦争/45]


≪画像および関連情報≫
 ●離れたくても離れられない中国とドルの関係
  ―――――――――――――――――――――――――――
  中国の政府高官であるファン・ガン氏が、巨額のドル保有を
  リスクと発言した背景には、人民元が今後も元高となるだろ
  う、との市場関係者の見通しがあります。10月10日の人
  民元レート(基準値)は、1ドル=7.9128元となり、
  1年前のレートと比べると2%程度上昇しています。中国の
  貿易黒字が高水準を維持していることや、中国政府が中国内
  での人民元の流通量を抑制する方針を強めていることなどか
  ら、今後も人民元レートは、緩やかなペースで上昇を続ける
  との見方が市場関係者の間で強まっています。
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2006&d=1012&f=column_1012_005.shtml
  ―――――――――――――――――――――――――――

ビル・クリントン.jpg
ビル・クリントン氏
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2010年09月17日

●ブレディ債と9.11の関係(EJ第2387)

 前回、2000年から2004年にかけて巨額のドルが使われ
ていると書きましたが、その巨大なドルとは何なのでしょうか。
これは「ブレディ債」ではないかといわれているのです。
 「ブレディ債」とは何なのでしょうか。
 1989年のブラジル危機のときの話です。レーガン政権下の
ブレディ財務長官がとった民間銀行に対する債務削減構想に関連
して、後に「ブレディ債」と呼ばれるようになったのです。
 米国の銀行と証券会社がブラジルに投資したのですが、ブラジ
ルが支払い不能になったのです。そこで、IMFに対してSOS
を出してきたのです。つまり、支払い不能になった赤字分を補填
して欲しいといってきたのです。
 しかし、IMFは民間企業の救済はできないのです。そこで、
IMFと民間企業は米財務省と相談したのです。時の財務長官の
フレディは次の指示を出したのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
  その赤字国の債務を一つの証券にして一般投資家に売れ!
―――――――――――――――――――――――――――――
 債務はある程度カットされ、財務省はこの証券の保証をしたの
です。これがブレディ債なのです。このかたちをとると、IMF
は結果として民間企業を支援できるのです。ちなみにこのアイデ
アは、真偽のほどはわかりませんが、当時日本の大蔵大臣であっ
た宮沢喜一氏の考案によるものという説もあります。
 既出の鬼塚氏は、2000年から2004年にかけてこのフレ
ディ債と同じ手法で巨額のドルが生み出され、金デリバティブの
ために使われたのではないかといわれているのです。
 この件について、鬼塚氏はリチャード・コシミズなる人物の著
書を引用して次のように興味ある事実を述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 WTC(ワールド・トレード・センター)の101階から10
 5階に入居していたのが、カンター・フィツツジエラルド証券
 という債券ブローカーである。1000人いた従業員のうち、
 700名近くが911攻撃で落命したという。さて、このカン
 ター証券には、9月12日に償還期限の来る、1200億ドル
 分のプレデイ債券が保管されていたという。そして、その債券
 は、ビルごと「蒸発」した。また、WTCの地下には1200
 億ドル相当分のプレデイ債の担保にあたる金塊が保管されてい
 たという。それらは、殆どが9.11 当日朝までに運び出され
 いまだに行方がわからないという。
     ――鬼塚英昭著、『日経新聞を死ぬまで読んでも解ら
            /金の値段の裏のウラ』/成甲書房刊
―――――――――――――――――――――――――――――
 このことに関連して、9.11 でWTタワーが崩壊した直後に
起きたことについて、鬼塚氏は次のようにも書いています。FE
MAとは何なのでしょうか。実に不気味な話です。
―――――――――――――――――――――――――――――
 9.11 テロの数日前からテロ対策の訓練をし、テロが発生し
 ててWTタワーが崩壊すると、人命救助を一切せず、鉄骨の屑
 をトラックに積み、港に直行して船に載せ中国へと運んだ軍隊
 のような組織があった。この実行部隊がFEMA(連邦緊急事
 態管理庁)である。私はプレデイ債券が消えたことを書いた。
 あの時、ビルの地下に金が貯蔵されていることになっていた。
 FEMAは鉄骨とともに人間の死体だけを残して、金塊を運び
 去った。           ――鬼塚英昭氏の前掲書より
―――――――――――――――――――――――――――――
 実は、9.11 のとき同時に攻撃を受けたペンタゴンでは、O
NI(米国海軍諜報部)という組織があって、ブレディ債につい
て調査を進めていたというのです。ペンタゴンが攻撃されたのは
そのためではないかといわれているのです。
 金の戦争という表面にはけっして出ない戦争で米国は敗北した
のです。しかし、真相は表には出せない――そこで勝者と敗者の
間に手打ちが行われ、ワシントン合意が成立して、金の戦争は終
わったのです。巨額のドルが使われたことによって金デリバティ
ブのディーラーたちは大きな赤字を出すことなく、金の先物市場
から静かに撤退したのです。
 そして、このワシントン合意頃から次の情報が流されるように
なっています。
―――――――――――――――――――――――――――――
     アメリカはやがて金本位制を採用する
―――――――――――――――――――――――――――――
 鬼塚氏によると、米国に既に金はなく、この情報はわざと流さ
れているディス・インフォメーション(偽情報)であるといって
います。もともと「米国は金本位制に復活か」の可能性を検証す
るための今回のテーマだったのですが、確証はないものの、どう
やらその可能性は低いと考えられます。そうであるとしたら、今
後米国はどうなっていくのでしょうか。
 9.11 については、ここにきて意外なことに金の問題と結び
ついてきています。なお、9.11 の真相に関しては、次の講演
が大変興味深いので、時間があるときにご覧ください。すべて見
ると、3時間24分かかります。この事件の闇は深いです。
―――――――――――――――――――――――――――――
http://video.google.com/videoplay?docid=-3859363222910740882&hl=en
―――――――――――――――――――――――――――――
 ところで、今後通貨はどうなるのでしょうか。もし、デル・バ
ンコ一族が金の独占に成功したのが本当であれば、新しい通貨シ
ステムを打ち出してくることが考えられます。
 新しい通貨の内容はわかりませんが、なぜか名前だけは出てき
ています。それは「フェニックス」という名前なのです。これは
世界通貨の名前なのでしょうか。そのさいに、金はどのように使
われるのでしょうか。今回のテーマ「金の戦争」は次回で終了し
ます。                ― [金の戦争/46]


≪画像および関連情報≫
 ●世界通貨「フェニックス」について
  ―――――――――――――――――――――――――――
  アメリカ人、日本人、ヨーロッパ人、そしてその他の多くの
  金持ち国の人々、そしてさらに若干の比較的貧しい国の人々
  は、同一の通貨で買い物をするであろう。その価値はドル、
  円、ドイツ・マルクなどでは表現されないであろう。それは
  「フェニックス」で計算される。フェニックスは、今日の通
  貨よりも便利なので、企業や消費者に好まれるであろう。そ
  の通貨は三〇年以内に登場するであろう。
     ――鬼塚英昭著、『日経新聞を死ぬまで読んでも解ら
            /金の値段の裏のウラ』/成甲書房刊
  ―――――――――――――――――――――――――――

9.11/世界同時多発テロ.jpg
世界同時多発テロ
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2010年09月21日

●米国が日本に仕掛けた3つの罠(EJ第2388号)

 日本は世界第2位の経済大国といわれています。しかし、国民
の暮らしは経済大国の割にはけっして良いとはいえないのです。
それは、同じように第2次世界大戦の敗戦国であるドイツと対照
的であるといえます。なぜなら、ドイツの国民の方が日本よりも
はるかに良い暮らしをしているからです。
 ドイツと日本の間には通貨に対する認識の相違があります。ド
イツを含むヨーロッパ諸国では、金本位制の時代には金を外貨準
備として保有することが原則だったのです。第2次世界大戦前の
ヨーロッパでは、英国のポンドが準備通貨として圧倒的な地位を
確立していたのです。
 第2次世界大戦後しばらくしてからドイツは自国通貨のマルク
を準備通貨として大事に育てていたのです。自国通貨が準備通貨
である意味をドイツはよく知っていたのです。
 これに対して日本は、純債権大国になりながら、準備通貨とし
ては円ではなく、ドルを保有したのです。日本では歴史的に「在
外正貨」という方針をとっており、金を国内に持ち帰えらなかっ
たし、外貨を円に交換して持ち帰ることもしなかったのです。
 もうひとつ、ドイツを含むヨーロッパと日本をはじめとするア
ジアでは通貨の考え方は次のように異なるのです。
―――――――――――――――――――――――――――――
  ヨーロッパ ・・・ 製品やサービス等の購入手段
    アジア ・・・ 通貨こそは蓄財の手段である
―――――――――――――――――――――――――――――
 日本はあくまで輸出立国の経済モデルにこだわっており、日本
経済は外需依存体質から抜け出せないのです。しかし、こういう
考え方に立脚している限り、日本は米国の植民地的ポジションか
ら脱却できず、国民の暮らしは豊かにならないのです。
 これについて、経済同友会元副代表の三国陽夫氏は次のように
述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 一方、(ニクソン・ショック以後も)日本はアメリカに対し円
 での支払いを求めない。円で支払いを求めると、アメリカの輸
 入業者が外国為替市場でドルを売って円を買い求める。そうな
 ると、日本はすでに輸出超過のためドルが大量に供給されてお
 り、円相場が切り上がり、輸出・採算が悪化する。しかも、日
 本が保有するドルは、アメリカ以外の国への支払いにも使える
 し、運用も有利になるため、日本は多額のドルを持つことに問
 題があるとは考えなかった。実際はアメリカの買い物の支払い
 代金を立て替えることになり、その資金繰りに追われることに
 なるが、日本はそれに気がつかない。決済上はアメリカがドル
 を支払い、日本はそのドルを受け取る。しかし、このドルは、
 ドルのままでは日本国内の経済活動には使えない。したがって
 日本はアメリカにドルを貸し置くしかなく、巨大赤字国アメリ
 カは巨大黒字国日本からいくらでも輸入することが可能になる
 のである。     ――三国陽夫著/文春新書/481
        『黒字亡国/対米黒字が日本経済を殺す』より
―――――――――――――――――――――――――――――
 既出の副島隆彦氏によると、米国は日本に対し、次の3つの罠
にはめて、抜け出せないようにしていると指摘しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
           1.超低金利
           2.円高攻撃
           3.財政赤字
―――――――――――――――――――――――――――――
 まず、米国は日本との金利差をつねに3%以上開かせるように
しています。こうしておけば、自動的に日本から米国に資金が流
れるからです。
 しかし、現在米国は深刻なサブプライム・ローンによる不況に
襲われつつあり、金利を下げざるを得ないのです。しかし、あま
り下げてしまうと、インフレの心配があるし、日米の金利差も小
さくなってしまうのです。
 輸出代金をドルで受け取り、それを円に替えて日本に持ち帰ろ
うとすると、上記の三国氏の指摘の通り円高になるし、米国も何
かことがあると円高攻撃を仕掛けてくる――副島氏によると、日
米で次の暗黙の了解があるそうです。
―――――――――――――――――――――――――――――
   1ドルは110円を中心に上下10円の幅で動く
―――――――――――――――――――――――――――――
 もうひとつ、副島氏は「日本の財政赤字によってドル暴落が回
避されている」と指摘しています。これについて、副島氏は次の
ように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 日本の財政破綻状態を考える上でしっかり押さえるべきは「日
 本の公的債務残高(財政赤字)が積み上がっているために、ド
 ル暴落が回避されている」という事実である。日本の公的債務
 残高は対GDP比で200%を超えている。現在のGDPは実
 質で420兆円ぐらいだから、880兆円の中央政府(日本財
 務省)の分の赤字国債発行高のちょうど2倍になっているだか
 ら200%である。そのために、資金の国際的な移動の面だけ
 から見た場合は、日米間の国際収支不均衡(ワールド・トレイ
 ド・インバランス)の拡大が、かえって抑制されているのであ
 る。だからドル暴落が回避されているのである、という厳然た
 る事実である。         ――副島隆彦著/徳間書店
       『ドル覇権の崩壊/静かに恐慌化する世界』より
―――――――――――――――――――――――――――――
 しかし、「金の戦争」で敗れた米国は今後どうなっていくので
しょうか。それは日本にも大きな影響があります。
 47回にわたって連載した「金の戦争」は今回で終了すること
にします。           [金の戦争/47/最終回]


≪画像および関連情報≫
 ●準備通貨とは何か
  ―――――――――――――――――――――――――――
  準備通貨(じゅんびつうか)は、各国政府もしくは金融当局
  の外貨準備において相当量を占める通貨を指す。準備通貨高
  は石油や金のような国際間で取引される商品の価格に大きな
  影響を与える。近年では特にアジア諸国が自国通貨のレート
  を下げて輸出競争力を高めるため、およびアジア通貨危機の
  ような事態に備えるために外貨準備高を引き上げる傾向にあ
  る。準備通貨は発券国の国力を考慮して選択されるが、その
  変遷には長い時間がかかる。     ――ウィキペディア
  ―――――――――――――――――――――――――――

「ドル覇権の崩壊/副島隆彦著」.jpg
ドル覇権の崩壊/副島 隆彦著
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2010年09月22日

●財務省が国家を動かしている(EJ第2290号)

今日からテーマが「石油危機を読む」に変わります。この記事
は、2008年3月24日から2008年6月6日までの52回
にわたって掲載したものであることをお断りしておきます。
 株安、円高、原油高――日本の経済状況が大きく変調をきたし
ています。今までも株安、円高はありましたが、そのときの原油
価格は「1バレル=17ドル」程度、現在の原油価格は「1ドル
=100ドル」をはるかに超えています。
 3月22日付の日本経済新聞は、「2つの『100』企業に重
荷」と題して次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 (2つの『100』の一つは)1ドル100円を突破した円相
 場。このまま推移すると円高による営業利益の減少額は来期、
 トヨタだけで5000億円。ホンダ、日産自動車も含めた大手
 3社では計1兆円強に達する。もう一つの「100」は1バレ
 ル100ドルを突破した原油先物市場。こうした資源価格の上
 昇は鋼材や部品のコスト上昇要因になる。
            ――3月22日付の日本経済新聞より
―――――――――――――――――――――――――――――
 ところで、原油はなぜこのように高騰しているのでしょうか。
そもそもどのようにして原油価格は決まるのでしょうか。そして
この原油高はいつまで続くのでしょうか。
 石油の問題は分からないことが多いものです。そこで、EJで
は、『石油危機を読む』と題して、石油の問題にメスを入れ、そ
れを中心に日本経済の問題を考えていきたいと思います。しばら
くはその周辺問題について書きます。
 3月16日のテレビ朝日の『サンデープロジェクト』で、民主
党の鳩山幹事長が非常に印象的な発言をしたのです。それはキャ
スターの田原総一郎氏が、鳩山幹事長に対して次のように聞いた
ときのことです。
―――――――――――――――――――――――――――――
 民主党党首の小沢一郎氏は、自民党が日銀の総裁候補として提
 示しようとしていた武藤敏郎氏をなんとなく容認するような姿
 勢を見せていたのになぜ一転して拒否する姿勢に転じたのか。
                     ――田原総一郎氏
―――――――――――――――――――――――――――――
 この問いに対して鳩山幹事長は、次のような趣旨のことを答え
たのです。これはまさしく民主党の本音であったと思います。
―――――――――――――――――――――――――――――
 民主党は今度衆院選があると、政権が取れる可能性がある。そ
 の場合、もし今回武藤氏を拒否すると民主党は財務省を完全に
 敵に回すことになる。それでスムースな政権運営ができるのか
 ということまで考えたからである。  ――鳩山民主党幹事長
―――――――――――――――――――――――――――――
 これは、実に驚くべき発言であると思います。なぜなら、それ
は財務省という存在が、いかに強力で抗し難い組織であるかを如
実に表しているからです。そういうことになると、日本という国
を動かしているのは、政府でも自民党でもなく、財務省というこ
とになります。
 それに、「武藤日銀総裁案」に民主党をはじめとする野党が参
議院で不同意にしたことに対して、与党にどちらかというと批判
的な朝日新聞まで含めて、日本のほとんどの新聞が一斉に非難を
したことです。これも極めて異常な現象です。ここにも財務省の
力が働いていると考えられます。
 野党の武藤氏不同意には、いくつかの情報が飛び交っているの
です。そのひとつに武藤氏の英語力に問題があるという説があり
ます。これは複数の情報源から情報で、民主党も把握しているは
ずですが、個人の能力に関することなので、正面きっていえない
ので、「財政と金融の分離」の原則に反する人物として反対を打
ち出したと考えられます。
 それならば、民主党は自民党が最後に提案してきた田波耕治氏
をなぜ拒否したのでしょうか。
 田波氏を強く推したのは、元大蔵次官の保田博・資本市場振興
財団理事長と財務省の意向を受けた額賀福志郎財務相であるとい
われています。ちなみに保田博氏は、福田首相の父、赳夫元首相
の秘書官を務めた人物です。実は、財務省が田波耕治氏を推した
のには深い読みがあるのです。これに関しては、須田慎一郎氏が
自らのコラムで財務省有力0Bの言葉として、次のように述べて
います。
―――――――――――――――――――――――――――――
 田波氏はその入省年次において武藤前副総裁よりも2つ上、と
 いうのが今回の“提案”の最大のポイントだ。霞ヶ関的発想で
 言うならば、年次が上の田波氏が日銀総裁に就任するというこ
 とは、武藤氏が日銀総裁に就任する目が残ることを意味する。
 つまり、田波氏の役割は、晴れて武藤氏が日銀総裁に就任する
 までの“つなぎ役”というところにあったのだろう。
  ――3月19日『夕刊「フジ」/金融コンフィデンシャル』
―――――――――――――――――――――――――――――
 驚くべき深謀遠慮です。何が何でも武藤日銀総裁実現のための
あの手この手です。成功すれば、かつて慣例となっていた日銀総
裁の財務省と日銀とのたすきがけ人事の復元になるのです。どう
しても日銀総裁を財務省の天下りポストにしたいわけです。
 国益よりも省益優先――これは実に困った問題です。米国のサ
ブプライムローン問題で米国経済に赤ランプが点り、日本経済に
影響が出てきているこの大事なときに、すべての省庁に隠然たる
勢力を持つ財務省が省益優先ですから、せっかく回復しかけてい
る日本経済を失速させかねないからです。
 株安、円高、原油高の現在の状況において、政府は何一つ有効
な手が打てていないのです。それどころか、財務省はこの経済状
況において、本来行うべきは減税政策なのに、逆に増税すら画策
しているのです。いや、事実上の増税路線を敷いているのです。
それは恒久減税と称した定率減税を廃止し、暫定税率を維持させ
ようとしているからです。これは、増税以外の何ものでもないと
いえます。           ―― [石油危機を読む/01]


≪画像および関連情報≫
 ●日銀総裁「迷走」は官僚の利権への執念が原因
  ―――――――――――――――――――――――――――
  福田政権の動きがおかしい。おかしいとは、滑稽という意味
  ではなく、「変」ということだ。3月18日、日銀総裁人事
  で、参議院で蹴られた武藤氏を再度提出したかと思えば、今
  度はすぐに、やはりたすきがけ人事のセオリーで元大蔵政務
  次官の田波耕治氏(68)を総裁候補にするとの意向を示し
  た。またもう一人の副総裁には日銀審議委員の西村清彦氏と
  のことだ。これについて、民主党は、西村氏については同意
  したが、田波氏の総裁就任は「不同意」とした。またもや福
  田政権の意向は、肩すかしを食らった格好だ。
http://www.news.janjan.jp/government/0803/0803183068/1.php
  ―――――――――――――――――――――――――――

鳩山民主党幹事長.jpg
鳩山民主党幹事長
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2010年09月24日

●円高が加速する要因を探る(EJ第2291号)

 円が1ドル=100円を割ったのは、2008年3月13日の
ことです。円が100円割れを起こしたのは、1995年10月
以来、12年5ヶ月ぶりのことなのです。
 しかし、今回の円高は12年前の円高と比べるとかなり違って
います。これに関して、財務省幹部は「円高ではない」といい、
日本経団連の御手洗富士夫会長は、次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 円高というよりドル安。日本の産業も過去10年の不況で鍛え
 られ、筋肉体質になり、抵抗力が強くなっている。
             ――日本経団連の御手洗富士夫会長
―――――――――――――――――――――――――――――
 しかし、今回の円高は2週間で8円も上がるなど、急速な円高
となっています。どうして、円高は加速したのでしょうか。これ
を理解するには、背景的な事実を知る必要があります。
 「円キャリートレード」というものがあります。これが、20
05年から2007年前半まで主として海外の投資家を中心に盛
んに行われ、円安を加速してきたといわれています。
 「円キャリートレード」とは、低利の円を調達して高金利通貨
で運用して金利差を稼ぐ運用方法のことです。いま多くの個人投
資家が行っている外国為替証拠金取引(FX)も円キャリートレ
ードの一種といえます。
 なぜ、これが流行したかというと、2002年〜2005年に
かけて各国中央銀行による超金利緩和政策によってお金が豊富に
出回り、市場が大きく上下動しなくなったからです。市場のこう
いう状態を「ボラティリティが低い」というのです。
 こういう時期は、トレーダーや投資家は、為替や債券、株式を
売って値ざやを稼ぐことが難しいので、持っているだけで利益が
出せるキャリー取引を活発化させようとするのです。その結果、
本来は経常収支の黒字によって円高が進行するはずの日本で、円
売りが多いために、逆に円安が進行していたのです。
 ところが、2007年の夏以降のサブプライムローン問題を契
機にして、市場が「ボラティリティが高い」という状態になって
しまったのです。この状態になると、円キャリートレードを新た
に行うメリットは消滅します。
 この円安を後押ししていた円キャリートレードの魅力がなくな
ることによって、円高になりやすい状態になったのですが、金利
が低く、先行きの経済成長も望めない日本の通貨をどういう人が
果たして買うのでしょうか。
 今回の円高加速要因について、JPモルガン・チェース銀行の
佐々木融氏は、こういう状況において市場が円を買う理由として
次の3つを上げています。
―――――――――――――――――――――――――――――
   1.日本は多額の貿易黒字を抱えていること
   2.日本は世界最大対外純資産国であること
   3.円キャリトレードの巻き戻しがあること
―――――――――――――――――――――――――――――
 第1の要因から考えることにします。
 日本は多額の貿易黒字を抱えている国です。貿易黒字は輸出か
ら輸入を引いた数がプラスになることをいうのです。日本で作っ
たものを日本人が買わないと貿易黒字は増えます。
―――――――――――――――――――――――――――――
     貿易黒字額 = 輸出額 − 輸入額
―――――――――――――――――――――――――――――
 それでは、なぜこれまで日本は円安だったのかというと、日本
の投資家と企業による対外投資額が貿易黒字額よりも多かったか
らであるといえます。
 具体的にいうと、2005年と2006年の対外投資額は、年
間14兆〜15兆円であるのに対し、貿易黒字額は年間10兆円
前後だったのです。そうすると、対外投資には円売りを伴うので
差額の4〜5兆円分が円安になります。
 しかし、2007年の対外投資額は12兆円程度に減る一方、
貿易黒字の方は12兆円程度と増えて、円売りと円買いの額が拮
抗したのです。日本は貿易黒字から生ずる円買いが常に存在する
ので、対外投資が貿易黒字以下になると円高になるのです。
 続いて第2の要因について考えます。
 日本は世界最大の対外純資産国であり、その額は、2006年
末現在で、215兆円もあるのです。その多くは対外証券投資で
すが、それらを国内に持ってくるとき円買いを行うので、結局は
円高になります。
 これだけドル・円相場が下がっているので、為替リスクを嫌う
日本の投資家が、外貨建て証券を手仕舞いして、円を買い戻すこ
とも十分起こりうるのです。このように、円を買う理由はいくら
でも出てくることになります。
 最後に第3の要因について考えます。
 実は円キャリトレードはさまざまな形で広範に行われているの
です。例えば、専門的になりますが、海外における円建て住宅ロ
ーン、輸出企業におけるヘッジの遅れ、輸入企業による長期の為
替予約、外国人投資家の保有する日本株の為替ヘッジなどです。
 これらのキャリートレードが積み上がっている状態は、いずれ
急激な円高を引き起こす要因となるのです。いずれにせよ、これ
らは今後、円買い戻しの中心になり、円高を加速するのです。
 ここまで輸出立国をはかってきた日本では「円安は景気にプラ
ス」というのが常識でしたが、この常識に対して異論が出ている
のです。それは、「円高が進むと、GDPを0.4 %〜0.5 %
押し上げる効果がある」という説がそうです。
 実際に2005年頃から、輸出物価が上昇基調なのに、輸出数
量が増えているのです。これは高機能の薄型テレビや工作機械と
いった海外メーカーが真似ができない輸出品の割合が増えている
ためなのです。また、円高になると、高騰している原油の輸入価
格が下がるメリットもあります。 ――[石油危機を読む/02]


≪画像および関連情報≫
 ●円キャリートレードの巻き戻しについて
  ―――――――――――――――――――――――――――
  [東京 2007年6月8日 ロイター] 渡辺博史財務官
  は8日、都内での講演で、円キャリートレードについて、巻
  き戻しがあっても大きなものにはならないとの認識を示した
  うえで、現時点で大きなリスクはないと述べた。渡辺財務官
  は、世界経済について安定しているとの認識を示すとともに
  日本経済に関しても「企業部門の利益が上がっており、個人
  消費も高まっている。ますます労働市場は引き締まると考え
  ている」とし、良好な状態にあるとした。
  http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-26345120070608
  ―――――――――――――――――――――――――――

佐々木融氏.jpg
佐々木 融氏



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2010年09月27日

●漂流を続ける日本経済(EJ第2292号)

 止まらない円高――前回のレポートでも述べたように、この円
高トレンドは簡単には収まらないと考えられます。それでは、今
後日本経済はどうなっていくのでしょうか。
 多くの経済の専門家が今後の日本経済の展望について述べてい
ますが、「週刊エコノミスト」3月25日特大号に掲載された安
達誠司氏――ドイツ証券シニアエコノミストの次の論文は大変参
考になります。
―――――――――――――――――――――――――――――
   小さくなる自立余地
   『頼りは「米国回復」だけ日本経済の漂流は続く』
    ――ドイツ証券シニアエコノミスト/安達誠司氏
―――――――――――――――――――――――――――――
 以下、安達氏の論文をベースにして、今後の日本経済の展望に
ついて述べていくことにします。
 今や米国の景気は、リセッション(景気後退)入り直前のとこ
ろにきています。この米国の景気後退は世界経済にどのような影
響を与えるのかについては、次の2つの考え方があります。
―――――――――――――――――――――――――――――
 1.米国のリセッションは世界経済に相応のマイナスショッ
   クを与える ・・・ リカップリング(再連動)論
 2.米国のリセッションがあっても、新興国などが世界経済
   を牽引する ・・・ デカップリング(非連動)論
―――――――――――――――――――――――――――――
 2008年に入ってから世界的な株価調整が行われており、現
時点では、上記リカップリング(再連動)論が優勢となっている
と安達氏は指摘しています。
 日本では、3月13日の日経平均株価終値は、1万2433円
44銭となっており、約2年7ヶ月ぶりの安値水準に落ち込んで
います。2007年2月26日から今年の3月11日までの株価
騰落率を主要株価指数で示すと次のようになります。
―――――――――――――――――――――――――――――
   米国ダウ平均 ・・・・・・・・・・  3.8%減
   英国FTSEIOO ・・・・・・・ 11.6%減
   日経平均 ・・・・・・・・・・・・ 30.5%減
―――――――――――――――――――――――――――――
 サブプライムローンではほとんど傷を負っていない日本の株式
の下落幅は突出しています。もともと日本の経済の体質が外需依
存経済であることと、株式市場においても外国人投資家への依存
度が高いので、こういう結果になったものと思われます。
 今後起こりうることとして輸出の減速が考えられますが、安達
氏によると、これはリカップリング(再連動)論による影響では
ないというのです。
 つまり、米国経済の後退による欧州や新興経済圏への外的ショ
ックが日本の輸出の減速をもたらすのではなく、それらの国々の
行き過ぎた不動産ブームがもたらしたインフレ懸念と、それを封
ずるための金融引き締めによって景気が減速し、それによって起
こるといっているのです。すなわち、リカップリングではなく、
デカップリングによるものであると安達氏はいうのです。
 欧州及び新興経済圏では、2003年以降の約4年間、金融緩
和政策を取っており、それがグローバルな不動産ブームを巻き起
こしたのです。この不動産ブームは、日本が比較的優位を有する
建設機材や発電機などの資本財や自動車の輸出を拡大させたので
すが、その不動産ブームが行き過ぎたことにより、インフレが懸
念されるまでなったのです。
 このようにして、この不動産ブームは欧州では既に終焉を迎え
ていますが、新興経済圏では今も金融引き締めが強化されている
のです。その結果、当然のことながら景気は減速することになる
のです。これにより、日本の輸出は減速することになります。こ
れについて、安達誠司氏は次のように述べています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 この(不動産ブーム)の終焉とそれに伴う当該地域の内需減退
 は、これらの日本の輸出、いや、日本経済全体を牽引してきた
 比較的優位産業の業績悪化につながりかねない。輸出産業の企
 業業績予想では、米国経済の減速は大方織り込まれているもの
 の、現時点では、欧州や新興経済圏の減速は織り込まれていな
 いと思われる。 ――「週刊エコノミスト」3月25日特大号
―――――――――――――――――――――――――――――
 さて、サブプライムローン問題に端を発した米国における金融
混乱はFRB(連邦準備制度理事会)のバーナンキ議長によって
積極的な金融緩和策が実施されています。
 米プリンストン大学のクルーグマン教授は、金融緩和に加えて
ゼロ金利の必要性を説いています。これに関してFRBは、20
02年に次の論文を発表しており、1990年代に日本が実施し
た金融政策をFRBが取る可能性があります。これは、当時日銀
(速水総裁)の取った量的緩和とゼロ金利政策が、適切な政策で
あったということを示しています。
―――――――――――――――――――――――――――――
   『デフレを回避するために――90年代日本の教訓』
                      ――FRB
―――――――――――――――――――――――――――――
 もし、米国がゼロ金利と量的緩和を取った場合、それは日本経
済にとってかなりの円高インパクトをもたらすことになる可能性
があります。
 そうすると日本経済は、新興経済圏の景気減速と長期化する円
高のダブルショックを浴びることは確実であり、外需依存を強め
た日本経済の成長率をかなり押し下げる可能性があると安達氏は
予測しています。
 こういう状況において、日本はどのように舵取りをしたら良い
のでしょうか。この問題については、明日のEJで考えることに
します。            ――[石油危機を読む/03]


≪画像および関連情報≫
 ●デカップリングとリカップリング
  ―――――――――――――――――――――――――――
  デカップリングとは、元々、何かと何かを離す、あるいは分
  離することを意味する。昨年、米国でサブプライム問題が表
  面化した後、経済専門家による、この言葉の使用頻度が眼に
  見えて上昇した。彼らが言うデカップリングの意味は、サブ
  プライム問題によって減速傾向が顕在化しつつある米国経済
  と、その他の諸国、特に高い成長率を続ける新興国の経済が
  離れる=違った方向に進む、つまり、米国の経済が減速する
  一方、新興国の景気は堅調な展開を続けるという見方だ。新
  興国の経済が堅調であれば、世界経済も、それほど米国の影
  響を受けないで済むというのがデカップリング論の概要だ。
  デカップリングの反対が、リカップリング=動きが一緒にな
  る、つまり、米国経済の減速で、世界経済全体の景気が悪化
  するとの考え方だ。
       ――http://diamond.jp/series/keywords/10020/
  ―――――――――――――――――――――――――――

安達誠司氏.jpg
安達 誠司氏
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2010年09月28日

●なぜ、日本株が下がっているのか(EJ第2293号)

 行き過ぎた不動産投資のバブルの崩壊による海外の景気減速と
米国の金融混乱がもたらす円高――これらは日本経済に深刻な影
響を与える要因になります。
 外需がダメなら内需に頼るしかないが、景気の減速による雇用
調整圧力が高まるため、個人消費の基礎となる所得環境は厳しい
ままの状態です。生活に関連する物価が上がっているのに対し、
収入は増えていないのですから、消費が大きく伸びる可能性は薄
いと考えられます。しかし、もし、消費が落ち込んでしまうと、
景気の下支えは弱くなります。
 これについて安達氏は、そうかといって消費は大きく落ち込む
ことはなく、安定的に推移すると見ています。GDP統計ベース
の家計消費と所得の関係を分析すると、消費は必ずしも所得の動
きに制約を受けていないことがわかっているからであるとしてい
ます。これを「消費平準仮説」というのです。
 この点において安達氏は楽観論に立っていますが、日本の個人
消費については悲観論も多いのです。
 BNPパリバ証券東京支店経済調査本部長の河野龍太郎氏は個
人消費については次のようにいっています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 中堅・中小企業を中心とした賃金回復が遅れ、原材料高による
 値上げが、家計の実質購買力を低下させ、消費を抑制する。コ
 スト増の悪影響がついに家計に波及しつつある。
  ――河野龍太郎氏/「週刊ダイヤモンド」3/1/2008
―――――――――――――――――――――――――――――
 しかし、安達氏のいう「消費平準仮説」に立っても、1996
年〜97年の金融危機のようなことが起きると、消費は確実に大
きく落ち込むことになります。なぜなら、消費は将来の所得見通
しに基づいて決定されるからです。したがって、大手金融機関が
経営破綻するような状況になると、消費者は将来に不安を感じ、
消費を抑えることになるのです。
 幸いにもサブプライム問題が日本の金融機関の経営を揺るがし
金融不安を再燃させることは今のところ考えられないので、最悪
の事態は避けられる見通しです。
 問題は、現在の日本の景気減速の大きな原因となっている住宅
投資の落ち込みです。2005年に発覚した構造計算書偽装問題
を受けて、2006年に成立した改正建築基準法が2007年6
月から実施されたのですが、これによって、法改正以降の建築確
認申請は滞ったままの異常な状態が続いたのです。
 これは、現場知らずの国交省による法改正のミスなのですが、
そのために住宅着工は大幅に遅れ、日本の景気の足を引っ張った
のです。国交省といえば、目下道路特定財源の問題で火の車です
が、こんなひどいミスも冒しているのです。
 といっても、2008年1月の住宅投資は、年率換算で120
万戸まで回復しており、マイナス効果は一巡したと見られるので
す。しかし、これは景気の下支えにはなるものの、景気を上へ引
き上げる力はないと安達氏はいっているのです。
 つまり、日本経済は海外の景気減速や円高によって、沈むこと
はないものの、そうかといって、自力で上に上がることはできな
い状態なのです。これが「日本経済は浮遊する」理由のひとつで
ある――このように安達氏はいっています。
 それでは、日本経済を「浮遊」ではなく、「上昇」させるには
どうすればいいのでしょうか。
 重要なことは、欧州を中心とする不動産バブルは明らかに崩壊
しつつあるが、日本はそのブームの完全に蚊帳の外にいるという
事実です。一般的にいって、バブルの崩壊局面において、バブル
の拡大場面で対象外であった金融資産の評価は相対的に改善する
ものです。日本株こそまさにその金融資産であるといえます。ま
して、日本はサブプライムローン問題でも蚊帳の外なのです。
 しかし、ここで大きく値を上げていいはずの日本株が前にも増
して相対的下落――アンダーパフォームしているのです。アンダ
ーパフォームとは、その株の株価上昇率が日経平均などの株価指
数を下回ることをいうのです。反対語としてアウトパフォームと
いう言葉がありますが、これはその株の株価上昇率が日経平均な
どの株価指数を上回ることをいいます。
 ここで添付ファイルを見ていただきたいのです。これは、20
03年1月以降の日米相対株価の推移をあらわしています。日本
株は2005年8月の郵政解散以降、米国株にアウトパフォーム
して上昇してきたのですが、それを止めてしまったのは2006
年3月9日の日銀による量的緩和解除であり、アンダーパフォー
ムを決定づけたのは、2007年2月21日の日銀の第2次利上
げと7月29日の参院選での自民党の大敗、さらに9月13日の
安倍晋三内閣の突然の退陣だったのです。グラフはそれをはっき
りとあらわしています。
 日本の悪いくせは、少し景況感が回復すると、すぐ金融を引き
締め、改革路線を後退させてしまうことです。とくに2007年
5月1日の三角合併解禁以降の「外資締め出し・金融鎖国」路線
は大きな問題です。三角合併解禁とは、消滅会社の株主に存続会
社の親会社の株式を交付して企業合併ができるようになったこと
をいいます。
 問題だというのは、この法律によって、比較的簡単に企業を買
収できるようになるということで、主要企業による相つぐ買収防
衛策の発表や外資に対する空港設備規制の動きが顕在化している
ことです。なかでもまずかったのは、空港設備規制の動きが、福
田首相がダボス会議において、今後も改革路線を推進すると発言
して日本に帰国した直後に顕在化したことです。
 これでは、そうでなくても外国人投資家への依存度が大きい株
式市場から外国人投資家が逃げ出すのは当然のことです。外国人
投資家から見ると、日本が何を考えているかわからなくなってし
まっているのです。日銀総裁の空席もその一環として大きなマイ
ナスになっているのです。    ――[石油危機を読む/04]


≪画像および関連情報≫
 ●アンダーパフォームとアウトパフォーム
  ―――――――――――――――――――――――――――
  一定の期間にその株がどれだけの収益を投資家にもたらした
  か(もたらしそうか)を測る場合には、「その期間に何%上
  昇したか(上昇しそうか)」という絶対評価と、「平均的な
  収益を何%上回ったか(上回りそうか)」という相対的な評
  価がある。アンダーパフォームは相対的な評価に使う。アナ
  リストが投資判断する時に使う。比較対照となるのは、日経
  平均やTOPIXなどの株価指数で、それらをベンチマーク
  と呼ぶ。反対語はアウトパフォームである。
    http://allabout.co.jp/glossary/g_money/w001663.htm
  ―――――――――――――――――――――――――――

日米相対株価の推移.jpg
日米相対株価の推移
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2010年09月29日

●福田政権バスの行き先はどこか(EJ第2294号)

 「石油危機を読む」というタイトルを掲げているのに、なぜか
円高や株安のことを書いていて、石油の話がなかなか出てこない
――このように考えている方も多いと思います。
 株安、円高、原油高を「三重苦」と書いている新聞や雑誌もあ
りますが、円高は原油高のマイナスを少し和らげてくれる効果が
あるので、本当は歓迎なのです。なぜなら、石油はドル建てであ
るからです。
 しかし、今回の円高――実は米国に対してだけなのです。ユー
ロを含む15種類の外貨に対しては円安なのです。それもプラザ
合意以後の1985年10月と同程度であるという歴史的円安な
のです。ちなみにユーロに対しては現在は150円台後半程度で
あり、2000年に「1ユーロ=90円」を突破するまで上昇し
た円相場がまるでウソのようです。
 この2000年以降の円安傾向は、急成長するアジアの新興国
や、原油高で潤う資源国通貨が円に対して強くなったことに加え
て、日本で景気が低迷して物価下落が続いたからなのです。
 これを見ると、もはや円ドル相場だけを見ていたのでは、市場
全体が読めなくなってきており、輸出立国をはかってきた日本も
そろそろ円安政策を見直すときであるといえます。これはまさに
経済失政そのものであり、日本の経済の現在の実力を如実に示し
ているといえます。そういう日本経済が置かれている状況を展望
した上で、原油問題を考えてみようとしているのです。
 愛読している「日経BPネット」の「田中秀征の一言啓上」の
第71回に実に面白いレポートが出ています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 小泉純一郎政権をバスに例えれば、行き先はもちろん「郵政の
 民営化」。バスの前に「郵政民営化行き」と大きく標示してあ
 る。それどころかバスの腹にも後ろにもそう書いてある。その
 上、街宣車のように、運転手の小泉さんが大声で叫びながら走
 る。小泉バスは郵政の民営化が終着点。運転手は降りてしまう
 し、バスもほかには行かない。乗客である国民は、特に郵政民
 営化に行きたかったわけではない。しかし、運転手があまりに
 確信をもって走るものだから、次第に乗客もそれに同調した。
  ――「日経BPネット」/「田中秀征の一言啓上」第71回
―――――――――――――――――――――――――――――
 田中秀征氏は自民党の政治家だったのですが、1993年6月
に自民党を離党し、新党さきがけを結成、代表代行を務めた人で
す。私の印象では、政治家というより学者タイプの人です。現在
は、福山大学教授として教鞭をとっています。
 ここで田中氏が強調しているのは、小泉元首相は「行き先」を
明らかにして走ったということです。政治において、これほど重
要なことはないのですが、それをやった総理大臣は非常に少ない
といえます。
 続く安倍バスはどうだったでしょうか。田中氏は次のように書
いています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 安倍晋三政権は、バスの行き先が多すぎた。どこから先に行く
 のかもはっきりしなかった。それに運転手の技能にも乗客は危
 うさを感じた。「小泉さんが熱心に乗車を薦めたから乗った」
 という乗客も多かった。その人たちも、次第に途中で降りてし
 まった。        ――田中秀征氏の上掲レポートより
―――――――――――――――――――――――――――――
 確かに安倍政権はあれもこれもだったのです。目指すべき行き
先が多いのに優先順位がはっきりしなかったのです。それに運転
――政権運営も稚拙であったといえます。
 それでは、現在の福田バスはどうでしょうか。田中氏は次のよ
うに書いています。
―――――――――――――――――――――――――――――
 福田康夫首相が運転する現政権の行き先はどこだろうか。それ
 が必ずしもはっきりしていない。運転手は実直な人柄。運転も
 慎重で安全。しかし、行き先が分からなければ、不安は消えな
 い。「何を目指しているのか」、それがもっと明確であれば期
 待や支持が大きく広がるはずだ。
             ――田中秀征氏の上掲レポートより
―――――――――――――――――――――――――――――
 正直いって、福田政権の行き先は安倍政権のそれよりももっと
わからないのです。田中氏はさきの日銀総裁人事における首相の
リーダーシップはとても褒められたものではなく、新しい政権像
や首相像を打ち出す絶好の機会をこれによって逸してしまったの
ではないかと述べています。全くその通りであると思います。
 このところ目に見えて、日本の国力が落ちていることを感じま
す。それは政治のリーダーシップ――すなわち、首相のリーダー
シップが弱くなっているからであると思います。
 田中秀征氏は、福田首相が描いている政権像や首相像は、おそ
らく父・福田赳夫首相のそれではないかといっています。もし、
そうであれば、内外の環境が一変している今の日本の政治状況に
は、対応できないと指摘しています。首相は経済の現況に対して
あまりにも無関心であるように見えます。
 今回の円高は、対処のしかたが今までとは違うと思うのです。
なぜなら、今回は、その背景にドルの信認が揺らいでいるという
構造的な問題があるからです。
 ここ数年の世界経済は、経常赤字を膨大させながら消費を続け
る米国に世界中がモノを売るという危ない均衡の上になんとか成
り立っていたのですが、それがサブプライム問題を契機に限界が
来てしまったのです。
 したがって、同じ円高、株安、原油高でも従来とは異なる手を
打っていかないと、経済の展望が開けないのです。このあたりの
ことをよくチェックしながら、そのなかで、原油の問題を考えて
いきたい――そう考えています。ドルに対する円高はかなり長く
続きそうです。   ――[石油危機を読む/05]


≪画像および関連情報≫
 ●2008年3月21日/円対ユーロ
  ―――――――――――――――――――――――――――
  円は対ユーロでは3営業日ぶりに大幅に反発して始まり、そ
  の後はやや上げ幅を縮小している。12時時点では1ユーロ
  =153円35―39銭銭前後と19日の17時時点と比べ
  2円28銭の円高・ユーロ安水準で推移している。金や原油
  が大幅に続落し、商品先物相場と反対の動きを示しやすいド
  ルが対ユーロで大幅高となったことにつれて、円も対ユーロ
  で上昇した前日の海外市場の流れを引き継いだ。その後は利
  益確定目的の円売り・ユーロ買いも出て、円はやや伸び悩ん
  でいる。              ――日経ネットより
  ―――――――――――――――――――――――――――
●「田中秀征の一言啓上」/第71回

http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/column/shusei/080321_71st/

田中秀征氏.jpg
田中 秀征氏

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2010年09月30日

●既に円高に強くなっている日本企業(EJ第2295号)

 円高の影響についての考察をもう少し続けましょう。円高が伝
えられると、すぐ企業業績――とくに輸出企業の業績が悪化する
ということで、株が売られて株安になる――これが今までの常識
だったのです。
 実際に3月17日、東京外国為替市場ではドルが売られ、一時
「1ドル=95円台」になったのです。この円急騰を受けて、株
が売られ、その日の終値では前週末比で454円安の「1万17
87円」と、1万2000円台を割り込んでいます。
 この株の暴落はアジアに波及し、インド・ムンパイ、フランク
フルト、ロンドンというようにヨーロッパにも波及して、そして
ニューヨーク市場のダウ平均を一時3%押し下げて、やっと底を
打ったのです。
 日本には過度の円高恐怖症があります。1995年に円が「1
ドル=79円75銭」になったときのトラウマが再現してしまう
のです。それは次の図式です。
―――――――――――――――――――――――――――――
   円高→輸出企業が競争力失墜→株価暴落→円高不況
―――――――――――――――――――――――――――――
 しかし、今回の円高は、1995年のときとは明らかに違って
いるのです。日本の経営者は1995年の円高のときの苦い経験
を生かしているのです。日本企業は、過去2回にわたる石油危機
でも同様の対応策をとって危機を乗り越えているのです。
 『日経ビジネス』/2008年3月24日号では、円高でも為
替差益を出したスズキの例を紹介しています。
 次の数字は、スズキが2007年10〜12月期に得た為替差
益です。
―――――――――――――――――――――――――――――
     ドル ・・・・・・・・・・・・ −16億円
     ユーロ ・・・・・・・・・・・ +24億円
     ルピー ・・・・・・・・・・・ +20億円
     オーストラリアドル ・・・・・ +12億円
     ポンド ・・・・・・・・・・・  +1億円
     ―――――――――――――――――――――
     合計              +47億円
    『日経ビジネス』/2008年3月24日号より
―――――――――――――――――――――――――――――
 2007年10〜12月期といえば、円高が本格化しはじめた
時期です。トヨタはこの時期に200億円規模の為替差損を出し
ているのです。
 これに対してスズキは、競争の激しい北米市場に重点を置かず
に他社が進出していないインド、ハンガリーなどに進出していま
す。そして現在、スズキはとくにインドには力を入れているので
す。先週のEJでも述べたように、円はドルに対しては円高です
が、ユーロをはじめとする他の通貨に対しては円安なのです。こ
の点をしっかりと押さえておく必要があります。
 皮肉な話ですが、ニューヨーク在住のエコノミストは、ドルが
円に対しても下げたことに衝撃を受けたといわれます。日本経済
も落ちたものといわれても仕方がないでしょう。
―――――――――――――――――――――――――――――
 (ドルがユーロに対して下げたことは)自力のあるユーロなら
 説明ができた。しかし、弱いはずの円に対してまでドルが大き
 く下げたということは、明らかにフェーズが変わったことを意
 味している。     ――ニューヨーク在住のエコノミスト
       『日経ビジネス』/2008年3月24日号より
―――――――――――――――――――――――――――――
 円高に対する備えを早くから考えて実施している企業も多いの
です。そのひとつに松下電器産業があります。松下では、中村邦
夫会長による指示もあり、為替に左右されない事業構造作りに取
り組んでいるのです。
 その取り組みのひとつが「為替マリー」といわれるものです。
これは輸出で得た債権と、輸入で発生した債務を円に転換しない
で、そのまま同一通貨内で相殺することをいうのです。そうすれ
ば、為替リスクをヘッジできるのです。
 この制度によって、松下電器産業は、徐々に輸出額に占める為
替マリー率を上昇させてきているのです。その結果、2000年
には17%に過ぎなかった為替マリー率を2007年には70%
近くに上昇させています。金額にすると、輸出額2兆5OOO億
円中1兆6000億円を為替マリーに適用してきているのです。
そして、松下電器としては、近い将来は為替マリー率を100%
にしたいといっているのです。そうすれば、為替変動に業績は左
右されなくなるからです。
 このような為替リスクを最小限に抑える対策は、究極は「現地
生産現地販売」という事業構造に行きつくのです。しかし、日本
でしか作れない競争力のある製品は円建てでも売れるのです。半
導体の製造装置メーカーなどにそういう企業は多いのです。しか
し、そういう企業でも今回のような急激な円高になると、ライバ
ル企業との競合が厳しくなるといいます。
 いずれにせよ、それぞれの企業努力により、かつての円高恐怖
症は乗り越えられつつあります。『日経ビジネス』では、その理
由を次の3つにまとめています。
―――――――――――――――――――――――――――――
   1.輸出企業は収益源を米国以外に移している
   2.大企業は「為替リスクゼロ」経営に転換中
   3.長期円高は輸入企業にとって追い風になる
―――――――――――――――――――――――――――――
 急速なドル安を受けてポールソン米財務長官は「強いドルは国
益」とかつての主張を変えていないが、日本全体では、ドル建て
の取引は、輸入額の70%、輸出額の50%に及んでいます。こ
の構造から見ると、明らかに円高の方が国内経済に良い影響があ
ることになります。       ―― [石油危機を読む/06]


≪画像および関連情報≫
 ●為替マリーとは何か
  ―――――――――――――――――――――――――――
  為替マリーとは、例えば、輸出で回収したドルを円に転換せ
  ずにドルのまま保有し、輸入の決済にドルが必要になったと
  きにそのドルをそのまま決済に充当するという方法である。
  つまり、外貨建ての債権と債務を個別に円決済せずに、双方
  を相殺させる形でヘッジするものである。
  ―――――――――――――――――――――――――――

中村邦夫会長.jpg
中村 邦夫会長
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